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第三十五夜 座敷牢─ザシキロウ─
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小さい頃。どこだったかは忘れたけど、妹と一緒に探検した広い日本屋敷。
見たこともない部屋。仏間。物置。そして地下室。
妹は無邪気にあちこちに行こうとするが、この頃から視えてた僕は、地下室だけには入りたくなかった。
幼い頃の僕から見たら地下室は、地獄の入り口のように見えた。
─祖父曰く。
座敷牢てのは、人間じゃ手に負えない人間や人様の前に出せない人間崩れなんかを閉じ込めておくのさ。
小さい村じゃ近親婚は当たり前の時代があった。
そうすると、精神に異常をきたしたり、奇形児がうまれる。中には双子は不吉な象徴として、片方を間引くこともあったんだとよ。
この先はきっと、そういう場所だ。
行きたがる妹を宥めすかして居間に戻った時には、妹を泣かせるなと怒られたが、お爺ちゃんだけが僕の頭をなで「よくやった」と褒めてくれた。
その晩。
僕は気がついたら地下室の入り口に立っていた。
どうやってここに来たかはわからない。
そして体の自由は効かず、僕の意思に反して階段を降りる。
電気なんか当然ない。
なのに何故か壁に取り付けられたロウソク立てには火がついていた。
牢屋。
切り抜いた岩に鉄格子が嵌められ、粗末な壺と布団が置かれていた。
今現在は使われてる様子はない。
それでも。
僕の耳には怨嗟が聞こえる。
意識が薄れると共に、牢屋の中に沢山の子供が見えた。
─楽しいよ。
─君もこっちおいでよ。
─お友達になろう?
みんな寂しいんだ。
僕の脳裏に流れる、彼らの孤独な長い歴史。
僕は彼らの手を掴もうと、牢に近づく。
この、手を、取れば、みんな、楽しく、スゴセル
見たこともない部屋。仏間。物置。そして地下室。
妹は無邪気にあちこちに行こうとするが、この頃から視えてた僕は、地下室だけには入りたくなかった。
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そして体の自由は効かず、僕の意思に反して階段を降りる。
電気なんか当然ない。
なのに何故か壁に取り付けられたロウソク立てには火がついていた。
牢屋。
切り抜いた岩に鉄格子が嵌められ、粗末な壺と布団が置かれていた。
今現在は使われてる様子はない。
それでも。
僕の耳には怨嗟が聞こえる。
意識が薄れると共に、牢屋の中に沢山の子供が見えた。
─楽しいよ。
─君もこっちおいでよ。
─お友達になろう?
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