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第2章 剣聖の魂
第13話 1つの決着。
戦力は拮抗していた。
いくら魔水晶の武具があるとしても、配下全員に配る余裕は無い。
末端の兵士は普通の武具しか手渡されていない。
そして、敵の三割りほどを前衛の三人が倒してくれたのだ。
たった三人に負けるわけにはいかない!
まさに鬼神の如き活躍をした前衛に続けといわんばかりに、後衛の部隊も士気も高く、応戦に出る。
末端戦士の武器に関しては、『メリクリウス』に勝ち目がある。
ツクヨミの街についてから、一心不乱に剣をつくり続けていた、たたらがこの戦までに、武器を揃えてくれたのだ。
スピードもさることながら、一切手の抜かれていないその業物は、鉄の鎧、鋼の鎧をまるでバターのように切り裂くことができる。
折れず曲がらず、こぼれず。血脂の影響があったとしても、問題なく連続使用が可能な名剣。
これは敵である『クロス・クルセイド』脅威だった。
武器の調達は各自で行っていた『クロス・クルセイド』メンバーは、武器も瑣末なものが多い。
そのため、戦場では自分の剣がだめになったら、敵の剣を奪って戦っていた。
だから、倒せばこの名剣が手に入る!
それは一つの大きな戦利品である。
敵も味方も入り混じっての乱戦。
『クロス・クルセイド』の飛び道具はすでに無効化されているが、こちらの飛び道具はまだ有効だ。
弓に投擲矢、投石器がその威力を発揮している。
今の段階で戦力は、五分五分になっていた。
三人の主戦力が四天王の相手をしてくれているだけ、マシだろう。
「弓矢隊、すべての弓を使い終えました!」
「よし、剣を取れ!直接攻撃に移るぞ!」
「「「はいっ!」」」
弓手はその役目を終え、弓を捨て剣を取る。
しかし、敵はよく訓練された兵士だ。
数を物を言わせ、『メリクリウス』を前後左右から包囲する。
「敵将を狙え!指揮系統を狂わせるんだ!」
怒号が飛び交う。
悲鳴が響き渡る。
血が流れる。
人が、死ぬ。
昨日ともに酒酌み交わした友が。
昨日まで一緒に訓練していた仲間が。
しかし、それは敵も味方も同じだ。
それを覚悟でこの戦いに参加している。
一兵卒の少年は思った。
(あ、死んだな)
と。悲観的になったわけではない。
ただ単純に、目の前に敵兵が現れ、剣を振るったのである。
それはお手本のような洗練された動きで、その武器を少年の頭に叩き込もうとしている。
少年は目を閉じる。
後悔はしていない。
自分から志願して、ソウマ様は自分を信頼して、戦場に立たせてくれたのだ。
感謝すらしているが、自分はその期待にこたえられなかっただけ。
しかし、いつまで立っても、少年に死は訪れなかった。
恐る恐る目を開けると、そこにはスライムの少女が立っていた。
「早く体勢を立て直して!」
スライムの少女は剣をその身体で受け止めていた。
軟体は切られることなく、剣をはじき返した。
粘液とはいえ、その密度が異常なまでに濃いのだ。
マウンテンスライムや、人間をスライムに変える呪いをすべて吸収したのだ。
その密度は鋼にも勝るものとなっていた。
「私だって、戦力になるんだから!」
少女。ユーノは、戦場に出るのは初めてだが、スライムとして吸収した敵の戦力や戦略をその身に宿していた。
鎧や盾は装備していない。よほど自身のスライムボディのほうが強固で柔軟性があるからだ。その代わり、武器はたたら作の一級品だ。身の丈ほどもあるブーメランを装備していた。
剣のように切り付け、または投擲して敵を撃破している。
その武器は、大地をも切り裂き、敵の鎧や盾など意図も容易く貫通している。
それは十二分に訓練された兵士に匹敵する戦いぶりだった。
ソウマは言った。生き残れ、と。
しかしそれがどれだけ無謀な理想論かは誰もが理解していた。
それでも生きて欲しい、と。
新しい国に生きて欲しいと叫んだリーダーを、『メリクリウス』のメンバーは忘れなかった。
誰もが必死に戦っていた。
新しい朝を生きて勝ち取るために。
拳と拳がぶつかり合う。
同時にのけぞる二人。
ためのある大きな技はお互いに使えない。
ソウマは左の拳を繰り出しながら、思案する。
技量はそこまででもないが、魔水晶の武器防具が強力だ。
攻撃をすべて吸収してしまう。
そして、その攻撃には魔法力が備えられ、攻撃力を格段に上げているのだ。
そして、その攻撃は直撃すれば命も危ぶまれる。
「ちっ。面倒くさいな!」
「さすが、『メリクリウス』のNO・1.技量じゃ負けますな」
そういいながら、手甲でソウマの攻撃をガードする。
魔水晶に蓄えられた魔法力は無限ではい。
湛えられた魔法力がそこを尽きればただの水晶でしかない。
しかし、どれだけ時間がかかるか。
ソウマは隙を伺っていた。一撃必倒を狙って。
相手は『武人・タイガ』である。隙はなかなか見せない。
それでも、タイガは防戦をせざるを得なかった。
拳を避け、蹴りをかわし、受け流す。
もしタイガから仕掛けたなら、その隙に間違いなく致命傷を負っていただろう。
自分よりも相手の方が格上。
悔しくもあるが、勝利のためなら、そんな小さいプライドなどいらない。
そう割り切って、タイガは専守防衛に努めていた。
ソウマの小さな隙を狙って…。
しかし、なかなか尻尾を出さない。
小さく、鋭く、大振りしないよう。
対人戦のお手本だ。
タイガは心の中でため息を着く。
まさにこれは自分たちが武道家目指す頂点の一つだ。
一撃一撃が重く魔水晶越しでも腕が、身体の芯がしびれる。
もしこの装備がなければ、すでに勝負は着いていただろう。
一度だけでもいい。
この男のように一切の武器も持たずに戦場を駆け抜けてみたい。
敵とはいえ、タイガはこの男に心酔していた。
『メリクリウス』の結束が固いのもうなずけた。
しかし、今は敵同士。
ならば、勝てぬ戦であったとしても、せめて一つ。
この男に報いたかった。
片や洗練された体術で。
片や予知の如き先読みで。
一撃必殺の剣がかすりもしない。
その姿は美しく、まるで舞踏でも見ているかのようだった。
「さすが団長。それとも、さすが『日の大精霊』といったほうがいいですか?」
「そうだね、僕の力じゃない。精霊のおかげさ」
このやり取りは、訓練の時に幾度かわした事だろう。
7大精霊の力を借りていた当時のエグゼ相手には、それこそ足元にも及ばなかった。
しかし、今のエグゼはまだ、大精霊1柱としか契約してないのだ。
それならいけるかも知れないとおもったのは、思い上がりだったと、ダムドは思い知った。
尊敬していた。
敬愛していた。
憧れていた。
越えたいと思っていた。
いわば、ダムドは騎士の到達点として、エグゼを見ていた。
今ここで、その思いを断ち切り、自分こそが最高の騎士となるのだ。
精霊石で作られた『大いなる精霊王の剣』
魔水晶で作られた『至高の魔水晶の剣』
武器の優劣はない。
どちらも稀代の名剣である。
紙一重。皮一枚。
しかしあたらない。
(ならば…)
この停滞を打破する一撃を、ダムドは狙っていた。
「『秘儀・影太刀』」
何の変哲も無い大上段からの剣撃。
エグゼはそれを剣で受け流し、体勢が崩れた隙を狙ってたい。
しかし、違和感がある。これは…?
危険察知したエグゼは、すぐさま大きく飛び退く。
「まさか、気付かれるとは」
わざと隙だらけの大上段の攻撃にしたのだが。
それでも見切られた。
「なんかいやな予感がしたもんでね」
あれを受けていたら、今頃エグゼの頭はかち割られていたことだろう。
実剣のすぐ後ろ。そこに影のように魔法力で作られた剣戟が潜んでいたのだ。
もし受けていたら、実剣は受けられても、実体のない魔法力で作り上げられた刃はエグゼのの剣をすり抜け、その脳天に突き刺さっていただろう。
「騎士時代には無かった、私のオリジナルの剣技です」
そういい、追撃を仕掛けてくる。
実剣と虚剣。
二つを折り交えた攻撃に、苦闘する。
(ツクヨミと契約できてれば…!)
『月の大精霊・ツクヨミ』は。契約者に大いなる回復力と、月の剣技を授けてくれる。
その剣技が使えていれば、と悔やまれる。
しかし、そうは言っても、後の祭りだ。
今は手持ちの駒で戦うしか無いのだ。
懸命に交わし、打ち込み、受け流し、切り付ける。
拮抗した戦いは、まだ続きそうだった。
「どうした、動きが硬いぞい」
円を描き、時には鋭く突き。
それはまさに『神槍』だった。
自由自在、千変万化。
人間の攻撃など、型に嵌められたパターン化した攻撃だろうと思っていた。
実際パターンはあるのだろう。
しかし、引き出しの数が以上なのだ。
時には驚くような体勢から槍が飛んでくる。
しかも、小回りの利く老体は、身体の大きなビスタの死角、死角へと移動しながら攻撃してくる。
(思い出せ。ユニコーンはとても小回りの利いた体捌きをみせていたではないか!)
思い出す。試す、失敗する。
また試す。
ビスタは楽しんでいた。
これほどまでの槍の使い手が居ようとは!
自分が学び、練習した足捌きは、今まさに開花しようとしている。
流馬足。
上位の神馬系の魔物がよく操る歩法である。
四足を生かしたこの歩法は、二足歩行で小回りの利く人間にも負けずに相手の側面にまわりこむことができる。
今までの敵はそんな技など使うまでも無く倒せてしまっていた。
(戦力の拮抗した相手と戦うのは、これほどまで経験値がたまるものなのか!)
どんどん強くなっていくのがわかる。
そして、それは相対しているカムイにも伝わっていた
(まだ力を秘めていたとは……)
若い力は素晴らしい。そろそろ『神槍』の名を返上するときが来たかもしれない。
好々爺は、愛おしい弟子を見るような目で、ビスタの成長を見守っていた。
ーーそのとき、世界が揺れたーー
激を繰り広げていたヤマト平原に、突如として一人の女性が現れたのだ。
全員が全員、その女性に目を奪われていた。
一瞬の静寂。
ほんの刹那。
その刹那にで、三人の首がとんだ。
ソウマはなんとかかわし。
エグゼはかろうじて剣で受け。
ビスタは槍を真っ二つに切り裂かれながらも避けた。
その三人と相対していた『武神』『剣神』『神槍』。
この三人が一瞬のうちに殺されたのだ。
そして。
大きく振り上げた剣から放たれた衝撃が、敵味方入り乱れた戦闘集団を吹き飛ばしたのだ。
『メリクリウス』の兵士も『クロス・クルセイド』の戦士も。
たった一発の衝撃波で半数が無力化された。
いくら魔水晶の武具があるとしても、配下全員に配る余裕は無い。
末端の兵士は普通の武具しか手渡されていない。
そして、敵の三割りほどを前衛の三人が倒してくれたのだ。
たった三人に負けるわけにはいかない!
まさに鬼神の如き活躍をした前衛に続けといわんばかりに、後衛の部隊も士気も高く、応戦に出る。
末端戦士の武器に関しては、『メリクリウス』に勝ち目がある。
ツクヨミの街についてから、一心不乱に剣をつくり続けていた、たたらがこの戦までに、武器を揃えてくれたのだ。
スピードもさることながら、一切手の抜かれていないその業物は、鉄の鎧、鋼の鎧をまるでバターのように切り裂くことができる。
折れず曲がらず、こぼれず。血脂の影響があったとしても、問題なく連続使用が可能な名剣。
これは敵である『クロス・クルセイド』脅威だった。
武器の調達は各自で行っていた『クロス・クルセイド』メンバーは、武器も瑣末なものが多い。
そのため、戦場では自分の剣がだめになったら、敵の剣を奪って戦っていた。
だから、倒せばこの名剣が手に入る!
それは一つの大きな戦利品である。
敵も味方も入り混じっての乱戦。
『クロス・クルセイド』の飛び道具はすでに無効化されているが、こちらの飛び道具はまだ有効だ。
弓に投擲矢、投石器がその威力を発揮している。
今の段階で戦力は、五分五分になっていた。
三人の主戦力が四天王の相手をしてくれているだけ、マシだろう。
「弓矢隊、すべての弓を使い終えました!」
「よし、剣を取れ!直接攻撃に移るぞ!」
「「「はいっ!」」」
弓手はその役目を終え、弓を捨て剣を取る。
しかし、敵はよく訓練された兵士だ。
数を物を言わせ、『メリクリウス』を前後左右から包囲する。
「敵将を狙え!指揮系統を狂わせるんだ!」
怒号が飛び交う。
悲鳴が響き渡る。
血が流れる。
人が、死ぬ。
昨日ともに酒酌み交わした友が。
昨日まで一緒に訓練していた仲間が。
しかし、それは敵も味方も同じだ。
それを覚悟でこの戦いに参加している。
一兵卒の少年は思った。
(あ、死んだな)
と。悲観的になったわけではない。
ただ単純に、目の前に敵兵が現れ、剣を振るったのである。
それはお手本のような洗練された動きで、その武器を少年の頭に叩き込もうとしている。
少年は目を閉じる。
後悔はしていない。
自分から志願して、ソウマ様は自分を信頼して、戦場に立たせてくれたのだ。
感謝すらしているが、自分はその期待にこたえられなかっただけ。
しかし、いつまで立っても、少年に死は訪れなかった。
恐る恐る目を開けると、そこにはスライムの少女が立っていた。
「早く体勢を立て直して!」
スライムの少女は剣をその身体で受け止めていた。
軟体は切られることなく、剣をはじき返した。
粘液とはいえ、その密度が異常なまでに濃いのだ。
マウンテンスライムや、人間をスライムに変える呪いをすべて吸収したのだ。
その密度は鋼にも勝るものとなっていた。
「私だって、戦力になるんだから!」
少女。ユーノは、戦場に出るのは初めてだが、スライムとして吸収した敵の戦力や戦略をその身に宿していた。
鎧や盾は装備していない。よほど自身のスライムボディのほうが強固で柔軟性があるからだ。その代わり、武器はたたら作の一級品だ。身の丈ほどもあるブーメランを装備していた。
剣のように切り付け、または投擲して敵を撃破している。
その武器は、大地をも切り裂き、敵の鎧や盾など意図も容易く貫通している。
それは十二分に訓練された兵士に匹敵する戦いぶりだった。
ソウマは言った。生き残れ、と。
しかしそれがどれだけ無謀な理想論かは誰もが理解していた。
それでも生きて欲しい、と。
新しい国に生きて欲しいと叫んだリーダーを、『メリクリウス』のメンバーは忘れなかった。
誰もが必死に戦っていた。
新しい朝を生きて勝ち取るために。
拳と拳がぶつかり合う。
同時にのけぞる二人。
ためのある大きな技はお互いに使えない。
ソウマは左の拳を繰り出しながら、思案する。
技量はそこまででもないが、魔水晶の武器防具が強力だ。
攻撃をすべて吸収してしまう。
そして、その攻撃には魔法力が備えられ、攻撃力を格段に上げているのだ。
そして、その攻撃は直撃すれば命も危ぶまれる。
「ちっ。面倒くさいな!」
「さすが、『メリクリウス』のNO・1.技量じゃ負けますな」
そういいながら、手甲でソウマの攻撃をガードする。
魔水晶に蓄えられた魔法力は無限ではい。
湛えられた魔法力がそこを尽きればただの水晶でしかない。
しかし、どれだけ時間がかかるか。
ソウマは隙を伺っていた。一撃必倒を狙って。
相手は『武人・タイガ』である。隙はなかなか見せない。
それでも、タイガは防戦をせざるを得なかった。
拳を避け、蹴りをかわし、受け流す。
もしタイガから仕掛けたなら、その隙に間違いなく致命傷を負っていただろう。
自分よりも相手の方が格上。
悔しくもあるが、勝利のためなら、そんな小さいプライドなどいらない。
そう割り切って、タイガは専守防衛に努めていた。
ソウマの小さな隙を狙って…。
しかし、なかなか尻尾を出さない。
小さく、鋭く、大振りしないよう。
対人戦のお手本だ。
タイガは心の中でため息を着く。
まさにこれは自分たちが武道家目指す頂点の一つだ。
一撃一撃が重く魔水晶越しでも腕が、身体の芯がしびれる。
もしこの装備がなければ、すでに勝負は着いていただろう。
一度だけでもいい。
この男のように一切の武器も持たずに戦場を駆け抜けてみたい。
敵とはいえ、タイガはこの男に心酔していた。
『メリクリウス』の結束が固いのもうなずけた。
しかし、今は敵同士。
ならば、勝てぬ戦であったとしても、せめて一つ。
この男に報いたかった。
片や洗練された体術で。
片や予知の如き先読みで。
一撃必殺の剣がかすりもしない。
その姿は美しく、まるで舞踏でも見ているかのようだった。
「さすが団長。それとも、さすが『日の大精霊』といったほうがいいですか?」
「そうだね、僕の力じゃない。精霊のおかげさ」
このやり取りは、訓練の時に幾度かわした事だろう。
7大精霊の力を借りていた当時のエグゼ相手には、それこそ足元にも及ばなかった。
しかし、今のエグゼはまだ、大精霊1柱としか契約してないのだ。
それならいけるかも知れないとおもったのは、思い上がりだったと、ダムドは思い知った。
尊敬していた。
敬愛していた。
憧れていた。
越えたいと思っていた。
いわば、ダムドは騎士の到達点として、エグゼを見ていた。
今ここで、その思いを断ち切り、自分こそが最高の騎士となるのだ。
精霊石で作られた『大いなる精霊王の剣』
魔水晶で作られた『至高の魔水晶の剣』
武器の優劣はない。
どちらも稀代の名剣である。
紙一重。皮一枚。
しかしあたらない。
(ならば…)
この停滞を打破する一撃を、ダムドは狙っていた。
「『秘儀・影太刀』」
何の変哲も無い大上段からの剣撃。
エグゼはそれを剣で受け流し、体勢が崩れた隙を狙ってたい。
しかし、違和感がある。これは…?
危険察知したエグゼは、すぐさま大きく飛び退く。
「まさか、気付かれるとは」
わざと隙だらけの大上段の攻撃にしたのだが。
それでも見切られた。
「なんかいやな予感がしたもんでね」
あれを受けていたら、今頃エグゼの頭はかち割られていたことだろう。
実剣のすぐ後ろ。そこに影のように魔法力で作られた剣戟が潜んでいたのだ。
もし受けていたら、実剣は受けられても、実体のない魔法力で作り上げられた刃はエグゼのの剣をすり抜け、その脳天に突き刺さっていただろう。
「騎士時代には無かった、私のオリジナルの剣技です」
そういい、追撃を仕掛けてくる。
実剣と虚剣。
二つを折り交えた攻撃に、苦闘する。
(ツクヨミと契約できてれば…!)
『月の大精霊・ツクヨミ』は。契約者に大いなる回復力と、月の剣技を授けてくれる。
その剣技が使えていれば、と悔やまれる。
しかし、そうは言っても、後の祭りだ。
今は手持ちの駒で戦うしか無いのだ。
懸命に交わし、打ち込み、受け流し、切り付ける。
拮抗した戦いは、まだ続きそうだった。
「どうした、動きが硬いぞい」
円を描き、時には鋭く突き。
それはまさに『神槍』だった。
自由自在、千変万化。
人間の攻撃など、型に嵌められたパターン化した攻撃だろうと思っていた。
実際パターンはあるのだろう。
しかし、引き出しの数が以上なのだ。
時には驚くような体勢から槍が飛んでくる。
しかも、小回りの利く老体は、身体の大きなビスタの死角、死角へと移動しながら攻撃してくる。
(思い出せ。ユニコーンはとても小回りの利いた体捌きをみせていたではないか!)
思い出す。試す、失敗する。
また試す。
ビスタは楽しんでいた。
これほどまでの槍の使い手が居ようとは!
自分が学び、練習した足捌きは、今まさに開花しようとしている。
流馬足。
上位の神馬系の魔物がよく操る歩法である。
四足を生かしたこの歩法は、二足歩行で小回りの利く人間にも負けずに相手の側面にまわりこむことができる。
今までの敵はそんな技など使うまでも無く倒せてしまっていた。
(戦力の拮抗した相手と戦うのは、これほどまで経験値がたまるものなのか!)
どんどん強くなっていくのがわかる。
そして、それは相対しているカムイにも伝わっていた
(まだ力を秘めていたとは……)
若い力は素晴らしい。そろそろ『神槍』の名を返上するときが来たかもしれない。
好々爺は、愛おしい弟子を見るような目で、ビスタの成長を見守っていた。
ーーそのとき、世界が揺れたーー
激を繰り広げていたヤマト平原に、突如として一人の女性が現れたのだ。
全員が全員、その女性に目を奪われていた。
一瞬の静寂。
ほんの刹那。
その刹那にで、三人の首がとんだ。
ソウマはなんとかかわし。
エグゼはかろうじて剣で受け。
ビスタは槍を真っ二つに切り裂かれながらも避けた。
その三人と相対していた『武神』『剣神』『神槍』。
この三人が一瞬のうちに殺されたのだ。
そして。
大きく振り上げた剣から放たれた衝撃が、敵味方入り乱れた戦闘集団を吹き飛ばしたのだ。
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