人外娘と真面目にファンタジーしちゃう本

葛葉幸一

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第2章 剣聖の魂

第15話 決着

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剣は数打ちのものなら、そこここにたくさん転がっている。
 つまりはこちらが傷を負っただけだ。
 そして、エグゼたちの攻撃はいくらかすっても、すぐに回復されてしまう。


「くそ、ジリ貧だ……っ!」
 エグゼたちは少しずつ消耗していく。
(どうするっ!?)
 エグゼは考える。しかし答えは出ない。
 その時。上空から声が聞こえた。
 ハーピーのハピナだ。


「エグゼさん、アーニャ様から伝言です! あの鎧は、魂でダークエルフとつながっています! 
 そして、その繋がりを断ち切れれば、ただの雑魚に過ぎません!」
『ち、余計なことを!』
「きゃあっ!?」


 ハピナが打ち落とされる。
 しかし、墜落寸前で。ふわりと中に浮き、そのまま飛び去っていくく。
 致命傷ではなかったみたいだ。
「魂の結合!?」
 魂の結合を解く方法なんて。  


(エグゼ、私たちも魂の結合を果たしているわよぉ)
 精霊玉から、サニーが話しかけてくる。
(私たちが結合をはずすときははどんなときぃ?)


 エグゼとサニーが魂の結合をはずす時。
 それは、剣を通じて結合をしているため、剣を手放すか、あるいはお互いの合意の下で、結合を解除するか、だ。
(なら、あの鎧をなんとかはずせば!? しかし、どうやって!)


 両肩には、鎧と鎧をつなぐ留め具がある。
 そこを狙えば鎧を強制的に脱がすことも出来るだろうが。 
(三人でも無理。あと一手あれば……)
「エグゼさん!」
 戦場に一人の少女が駆けてくる。


 あれは、ソウマと一緒に来ていた。
「ユーノ!?」
 ソウマが叫ぶ。 
 確かに彼女はそれなりに強力な人外娘だ。
 しかし、この場においては足手まといでしかない。
「ソウマさん、助太刀します!」


 そういうと、ユーノはエグゼを包み込む。 
 それは、スライムの鎧とでも言えばいいのだろうか。
 柔軟かつ強靭。
「ティアラさんから、妖精の粉ももらいました。怪我もある程度なら回復できます!」


 ティアラ身体から分泌される粉には、怪我を癒す効果がある。シスカの町でソウマが大怪我をしたときは、命を助けられたこともあった。
 そして、今現在も。
 量の拳の怪我も、見事快癒した。


「すごいな、ユーノ!」
 ソウマの攻撃力に耐えることの出来た武器はない。
 手甲や、爪系の装備も試してみたが、全て壊れてしまったが、スライムの柔軟性と、圧縮された粘液の硬度は、オリハルコンにも劣らない。


 三人のコンビーネーションは鋭さをましていく。
 超超近距離ではソウマが。
 近から中距離でエグゼが。
 遠間からビスタが。
 それぞれが武器の特性を生かし、攻撃し、避け、防ぎ、はじく。


 しかし、足りない。
 『神剣聖』は強かった。
『遅い!』
 ミハエルが吼える。
 『万魔の太刀』と呼ばれる『剣聖』に伝わるその剣術は、本来なら魔法有っての魔法剣だ。


 魔法が使えない今となっては、その本領の半分も発揮できていないが、それでも強い。
 三人がかりでもかすり傷を負わせるのが精一杯だ。


 しかし、その中にあって唯一、ソウマだけが対等に渡り合っていた。
『これで分かりましたよ!この戦い、ソウマ君さえ抑えれば、私の勝ちだと!』
 万にも勝る剣の五月雨。


 エグゼの横腹をその一撃が掠める。
「ぐっ!」
 それは致命的だった。 
 かろうじて臓物が出ていないことだけが救いなくらい。


 酷使していた鎧は、今まさに限界を迎えたのだ。
 しかし、ソウマもビスタも助けには入れない。
 そんなことをしていたら、自分たちもやられてしまう。


 圧倒的な戦力差。それが分かっているから、自分たちの出来ることするので手一杯になっていた。
「エグゼ、下がれ!」


 ソウマがかろうじて叫ぶ。 
 敵の圧力が増し、ソウマも先程の『激震』のような大技が使えないでいる。
 コンビネーションが一つ欠け、さらにビスタも負担も限界に達していた。  


 エグゼは傷口を押さえながら、何とか立ち上がる。
 そして、あまりの激痛に、もんどりうって再び倒れこむ。


 その先には。
 一人の半人半獣が倒れていた。正確に言えば死体だ。
 戦場では珍しくもない。
 しかし、その半人半獣には見覚えがあった。
 「あ、あぁ…。」


 それは、ブローチを売ってくれた商人の姿だった。
 『メリクリウス』の本拠地でしか生きていけない少年商人は、『メリクリウス』に入ることに決めたのだろう。


 そして今回の初陣で、命を落とした。
 それだけではない。
 敵も味方も、数多くの人が、魔物が、半人半獣が死んだ。
 これは戦争だ。


 一人も死ぬことなく、勝利を得ようというのが無理な話だ。  
 それは分かっている。
 分かってはいるが。


 ……。
 少年商人の姿が思い出される。
 彼は、ふがいない自分を魔法騎士を尊敬しているといってくれた。


 彼は、『メリクリウス』NO・2のアーニャのファンだと言っていた。
 その尊敬のまなざしが。
 その照れたようなはにかみ顔が。
 エグゼの脳裏には浮かんでは消えていった。


 自分はまた護れなかったのか……っ! 
(力をっ)
 エグゼが願う。
(もっと力をっ!!)
 傍らに、ビスタが吹き飛ばされてきた。

 
「ぐっ、まさか剣聖がここまで強いとは……!」
 満身創痍で、立ち上がることすら出来ない。  
 ソウマだけが『神剣聖』と互角に割りあっている。


(誰にも負けないくらいの力を!)
(エグゼ…)
 それはサニーだった。
 サニーは、エグゼの魂の負担を軽減しようと、ブレーキをかけていたのだ。
「サニーっ!! 力をよこせっ! 僕はこれ以上大切なものを失いたくないんだっ!」


 エグゼの魂の叫びがサニーを呼び起こす。  
 一瞬の思考の後、サニーは決断する。
 リミッターをは外すように、サニーが力をエグゼに注ぎ込む。
 そのとたん、太陽の『日』の力が、エグゼに流れ込んだ。


『な、何ですかっ?この凄まじい力はっ!』
 ミハエルが力の源へと目を向ける。   
 ソウマはかろうじて致命傷を避けている。


 お互いに回復するすべがなければ、どちらが倒れてもおかしくない展開だった。 
 その二人が、戦いを止め、エグゼに見入っていた。


「そうだ、力だっ! 太陽の力を、もっと僕によこせ!」
 太陽は表面だけでも6000℃。中心部は1500万℃にも達する、超超高熱だ。


 その際限のない熱量が、エグゼの剣に集まっていく。 
「ミハエルっ!!」
『ひぃっ?』
 ソウマはすばやく飛び退くと戦線を離脱した。


 太陽の一撃が、ラファエラを包み込む。
 それは、剣技などなんの意味もなさない、大自然の猛威。
『か、身体がっ!?』


『神魔』の強靭な肉体が、蒸発する。
「はぁ、はぁ」
 後に残ったのは、鎧のみ。
 耳が痛いほどの静寂の中、エグゼだけが立ち尽くしていた。 


 その左腕は無く『大いなる精霊王の剣』が地に落ちている。
『ま、まさか『神剣聖』の力をもってしても、勝てない、とは…』
 最後、ミハエルの声が空にこだまして、消えていった。
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