人外娘と真面目にファンタジーしちゃう本

葛葉幸一

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第3章 古の創造竜

第14話攻め入る造魔

 そして、造魔の敵影が見えてくる。
 人狼、ドラゴン、オーガ、オーク、アンデッド。
 様々な種族が隊列を成して進軍してくる。


 統率の取れたその動きは、まさに造魔のものだろう。
 そして。
 一番奥に一際大きな敵影が見える。


 『エンシェントドラゴン』
 あるか古に、この世界と秩序を作りだしたまさに神代の時代の、モンスターと呼ぶのもおこがましい相手である。
 しかも、造魔よりも恐ろしい、『神魔』だろう。


 造魔というのは、魂が抜かれ、自分の意志を失った、ミハエル作のキメラである。


 意志がないその肉体は、普段生き物が無意識に使っている、力のリミッターを完全に解除した状態にある。 
 自分の身を省みずに全力を超えた全力で攻撃してくる様は、脅威以外の何物でもない。 


 そして、さらにその上に君臨する『神魔』。
 強力な造魔と強大な魔法力を持つ女性の間に生まれた『子供』だ。
 このおぞましい魔物は、造魔よりも強力で、しかも、ミハエルのと意志の疎通が出来る。


 いや、魂レベルでの融合というべきか。
 天才軍師といわれたミハエルの戦略を、タイムラグなしで、戦場の最前線にまで届けることが出来るのだ。


『おや、エグゼ君がいないようですが、大丈夫ですか?』
 ぐっとビスタが詰まる。
 戦闘に参加できるのは、ビスタ、ジェイク、ココロ。


 そして、山から戻って来た、ダイモス、ハピナとソウマ。
 後はハーピーの集落の戦士たち30名と、ドラゴン10匹だ。
 対する敵勢は1000騎


 アーニャが一度ツクヨミに戻り、軍勢を率いてこちらに向かってくれてはいるが、まだ到着には時間がかかるだろう。
「とりあえず、俺は単騎で敵を蹴散らながら、エンシェントドラゴンのとこまで駆け抜ける」
「分かった、無理するなよ。こちらは、雑魚を街に入れないように戦おう」
 守る戦い。


 篭城なら時間稼ぎも出来ようが、残念ながらこれは背水の陣に近いものがある。
 後ろには街があるのだ。


 そこに攻め込まれたらゲームオーバーだ。
「ドラゴンたちなら、『武器不能地帯』でも、十分に戦えるだろう。それも考慮にいいれて、指揮を執ってくれ」


「まかせろ。エグゼやミハエルほどではないが、私も勉強はしている」
「頼もしい限りだな!」
 そういって、ソウマは駆け出す。
「おそい!『深淵流・鶴翼双爪』!!」


 両腕から放たれた、激しい衝撃波は、敵のを引き裂いてなお威力を落とさず、地面すらえぐり地形を変える。
 それが、戦闘の合図となった。
「あいかわらず派手な奴だ!いいか、敵は多数で、強力だ!決して一対一で戦おうとするな!」


 そして、ドラゴンたちは『武器不能地帯』まで。進軍する。




『さて、ソウマ君、君はこのエンシェントドラゴン相手に、どこまで戦うことが出来ますかね?』


 さすがの『武器不能地帯』でも、生物であるユーノが武具と化すのは平気なようだ。
「それが試したくて、ここまで単騎駆けしてきたんだ。今度はこっちが胸を借りるつもりでいくさ!」


 巨大なドラゴンが人型を取る。
 壮年の一番脂の乗った年代だろう。
『いきますよ、ソウマ君』
「あぁっ!!」
 拳と拳が交差する。
「ああああぁぁぁぁっ!!」
『ふんっ!』


 膂力では、エンシェントドラゴンが上か。
 ソウマの体が仰け反る。
 その出来た隙を見逃すミハエルではない。


 1秒間に数千発。目にも留まらぬスピードで、攻撃が迫り来る。
 態勢を崩したとて、そこはソウマ。
 避け、捌き、いなして、反撃する。
「『深淵流・梅花連撃』!」


 それは攻守をともに行う秘技である。
 敵の攻撃をいなし、その勢いそのまま倍返しをするカウンター。
 人間では感知できない攻撃にすら反応し、隙とも呼べぬ隙を突く。


『素晴らしい!本当に貴方は人間ですか!?』
 ミハエルも楽しそうにその神魔の身体を操る。
 その攻防はすでに人智を超えたものだった。


 高速で移動し、拳を交わす二人に巻き込まれ、死んでいく造魔も少なくは無かった。
 もうそれは、一種の天災といっても過言ではない。


 しかし、その一撃の重さが。
 その一撃のスピードが。
 その体を守る防御力が。
 全てがソウマを上回っている。
 次第に防戦一方になっていくソウマ。


「くぅっ!!」
 何とか致命傷は免れている。
 小さい傷は。ユーノが取り込んだ、ティアラの妖精の粉が治してくれる。
 それが無ければ、とぞっとする。


(まさか、この俺が素手のタイマンで勝てない相手がいるとは…)
 すでに死力を尽くしているソウマは限界が近かった。
「いいか、散らばらずに戦え!」
 しかし、相手も狡猾である。


 機敏な動きで翻弄し、こちらを分断してくる。
 個人の技量も、数も、圧倒的に分が悪い。


 その中で、ビスタは遊撃として、全体の戦況を把握し、敵が優勢の場に駆け現れては、敵を殲滅し、また別の劣勢の場に向かう。
 すでにビスタはその能力を限界まで使っている。



 戦いは拮抗していた。
 数で勝る造魔相手に、見事に太刀打ちできているのだ。
「いいか、数は対等にまで持ち込んだ!後は戦線を維持しろ!突っ込みすぎると『武器不能地帯』につっこむぞ!」


 素手で戦えるものは『武器不能地帯』に。
 それだけで、戦いは優位になる。
 ハピナが縦横無尽意駆け回り、戦況を逐一報告する。
 報告を受けたビスタが、的確な指示を出し、時には自身が手薄な戦場に赴き加勢する。


 ケンタウロスの機動力を存分に発揮した戦略だった。
 ありがたいことに、ミハエルはソウマの相手で手一杯らしく、全体の戦況を把握できていない。


「いいか、ソウマたちには近づくな!巻き添えを食うぞ!」 
 それは竜巻の如き戦闘だった。


「あいつはどこまで化け物なんだ…」
 ビスタですら、二人の攻防を目で追うことが出来ないでいる。

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