人外娘と真面目にファンタジーしちゃう本

葛葉幸一

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第4章 トール・ド・ルート

第2話 地獄へ落ちる階段

 遥か昔。
 まだこの世界が誕生する前のこと。
 この世界には混沌があった。


 混沌とは、それ以上でもなく、それ以下でもない。
 そして、ある日混沌は二つに分かれることになる。
 『聖』と『魔』に。


 それ自体はただの現象に過ぎない。
 光あるところに影が出来るように、それはただの現象でり、エネルギーの塊である。
 そこに、善悪などあろうはずもない。


 しかし、善も悪もないとは言え、そこに属するもの同士が戦いを始めてしまえば、その前提は崩れ去る。
 『聖』から生まれた光の軍勢と。
 『魔』から生まれた闇の軍勢と。
 お互い一つだったにもかかわらず、相容れることが出来なかった。


 もう一つに戻ることは出来ない。
 なぜなら、この二つが合わさるということは、元の『混沌』に戻る他ならないからだ。


 悠久の時間をかけ、宇宙を作り、星星を生み出し、生命が育まれた今。
 もし『聖』と『闇』が今一度元の『混沌』に戻ってしまえば、またこの世界は宇宙開闢以前の状態に戻ってしまうのである。


 だらからこそ、意見が食い違う。
 些細なけんかから始まったそれは、この世界を巻き込む大きな戦乱へと発展していくのである。


 そして、歴史とは『勝者がこそが正義』の積み重ねなのだ。
 正義が勝つとは限らないが、勝った者は正義となる。


 それが、『聖』と『魔』の。
 ひいては光の軍勢と闇の軍勢の明暗を分けた。
 このあたりは詳しい文献はないのだが、聖が勝ち、魔が負けた。
 結果はそれだけ。


 しかし、だからこそ、『魔』に属する闇の軍勢は『悪』とされてしまったのだ。
「もし、闇の軍勢が勝っていたら、概念は逆だったかもしれないね」
 そういって、エグゼは話を締めくくった。





『問題は、闇の軍勢を解き放たないように光の軍勢の見張りがいることなんです』
 生物というよりはエネルギーの塊に近いこれらの軍勢は、普通の武器や魔法では倒すことが出来ない。


 先にソウマが倒したレイスなどと同じように、特別な方法でしか倒せないのだ。
 そして、いかに悪魔公爵であろうと、この世界に肉体を持って召喚された以上、エネルギーの塊でる、光の軍勢、闇の軍勢を魔法無しで傷つけることは出来ないのである。


「そこで僕のとソウマの出番、ということか…」
 エネルギー体に近い精霊と契約し、魂ごと融合しているエグゼは、大精霊達と契約してるときは、人間よりよほどエネルギー体に近しい存在である。


 また、気をためれば、肉体を持たないものを滅ぼすことも出来るソウマも、このクエストにはもってこいである。
「しかし、『水の大精霊』と契約するためには、やるしかないんだろう?それに、仲間が増えてくれるなら、こちらとしてもありがたい」


 そう、『メリクリウス』の人材不足は深刻なのだ。
 人数、質ともに人員は欲しいところでる。
「そうだね、やるしかないか…」
『では、道案内には、私の娘を連れて行ってください』


 そういった悪魔公爵の後ろには、いつの間にか、インプの女の子が控えていた。
「よろしくお願いしますわ」
 優雅に一礼した少女は名前を「ナターシャ・ロード」と言った。
「よろしく、ナターシャ」


 こうして、新しい仲間と供に、闇の軍勢を助けるべく、さらに迷宮へともぐっていくのだった。





「これが光の軍勢かっ!」
 ミクがナターシャを守りながら後ろに下がる。
 成熟したエンシェント・ドラゴンなら、光の軍勢相手でも戦えるだろうが、未だ幼いミクでは、攻撃する手段はブレスしかない。


    しかし、あたりを照らすライトブレスを使っているため、今はブレスを吐く事ができない。
「ここは俺に任せてくれ」
 ソウマが前に出る。


 エグゼも大精霊と融合すれば戦えるが、その融合には多大な代償を支払わなければならない。
 これまでに、左腕と、目の色覚を失ったのだ。
 余り頻繁に融合も出来ないのだ。


「こおおぉぉぉぉぉっ!」
 呼気を繰り返し、丹田に気を集める。
 光の軍勢。それをなんと表現したらいいのだろう。
 純白に発行したの人型。
 顔もなく、服も着ておらず、人語すら介さない。


 それは単なる『聖』エネルギーが人の形を取っただけだった。
 そして、それは与えられた仕事を淡々とこなすだけの存在だ。
「ふんっ!」
 気を込めたただの掌。


 それだけで、光の戦士の頭が吹き飛ぶ。
「なんだ、よわいではないか!」
 ミクが嬉しそうに大はしゃぎする。
「いや、まだだ!」
 エグゼが叫ぶ。


「ソウマ、気をつけろ!奴らは完全に消え去るまで、何度でも復活するぞ!!」
 しかし、エネルギー源の絶対数は確実に減らせている。
 攻撃前のエネルギー残量を100だとするならば、頭を吹き飛ばした後は80といったところか。


 しかし、普通の敵が頭を吹き飛ばした時点で死んでいるだろう事を考えると、手間がかかる。
 この光の戦士達には、急所が存在しないのだ。


「めんどうだな!『深淵流・四聖咆哮波』!!」
 4聖獣の力をを纏った両手足が、次々と光の戦士達を消し去っていく。
 敵の動きも悪いわけではない。
 狭い通路で、飛び道具を使い、または自身のエネルギーを放出し、足止めをしてから、前衛が仕掛ける。


 また、前衛の切れ目を狙って、後方支援がまた攻撃を仕掛ける。
 しかし、エグゼの前ではまったく役に立っていない。
 それらを悉くつぶしていく。


 1陣を退け、2陣3陣も楽に倒していく。
「しかし、ソウマ様はお強いのですね」


 インプのナターシャが感嘆の声を上げる。
「これくらいならな。しかし、まだ気は抜けないけどな」
 敵は少しずつ強くなってきている。
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