人外娘と真面目にファンタジーしちゃう本

葛葉幸一

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第4章 トール・ド・ルート

第5話 伝説の真実

「ここがエンシェントドラゴンの書斎か」
 ミクと供に霊峰エクレアのドラゴンの住処に来たエグゼ。


 しかし、かなりの量の蔵書があり、なかなか骨が折れる作業になりそうだ。
 しかも、3割以上は人間の言葉で書かれていない。


「古代文字(エンシェントスペル)でかかれたものは我が読もう。エグゼは、それ以外を」
「うん、分かった。闇の軍勢と光の軍勢について書かれてる本が目当てだね」


 それから、しばらくは目ぼしい本を見つけては読み、外れればまた別の本をよむ、ということを繰り返していた。


「エグゼ、ちょっとよいか?」
「ん?なにかあった?」
 エグゼがミクの方へ近づくと、半分に破かれた本がその手にあった。


「これがかなり臭そうなのじゃが、もう半分が見当たらん」
「それを探せばいいのか?分かった」
「表紙のタイトルからして、この本のもう半分は、人間の言語で書かれてるみたいじゃ」


「それってそういう……」
 半分は古代文字、半分は人間の言語で。
「おそらくは、エンシェントドラゴンと人間が力をあわせないと解読できないようになっているのだろう」


 半分をエンシェントドラゴンが読み、もう半分を人間が解読する。
 そうしないと読めない本。
そしてぱっと見、闇と光についてかかれた本であるということ。


「かなり当たりっぽいね」
「であろう?こっちの半分は我が読んでいるから、エグゼはもう半分を探すのじゃ!」


「よし、思ったよりも早く目的が達成できそうだね」
「僕らも急がないと」
 はやる気持ちを押さえながら、残りの半分を探しはじめた。


 そして、書斎机の中に木箱を見つけた。
「もしかして、この中に…」
 鍵はもう朽ちかけて、すこし力を入れたら壊れそうだ。
「緊急事態なんです、ごめんなさい」


 エグゼはそういうと、鍵を壊して中を改める。
「ビンゴ」
 エグゼは早速ミクの元へと向かった。
「たしかに、後ろ半分じゃな」


「前半部分にはなんて書いてあったんだい?」
「それなんじゃが、我らが今まで聞いたことのある内容ばかりじゃった」


「こっちもパラパラとしか読んでなけど、同じような感じだったな」
「これはもしかしたら、魔法巻物(スクロール)の類かもしれん」
 ミクは、エグゼから残りの半分を受け取ると、重ね合わせて一つの本にする。


 すると、本から淡い光が放たれた。
「正解じゃ! この本が一つに合わさったとき、本当の内容が分かるようになったのじゃ!」


 本からもれでる光は、だんだんと強くなり、エグゼとミクを包み込む。
「これは……!」
 激しい光に、思わず目を閉じた二人が目を開くと、そこは空中だった。
「これは!?」


「落ち着くのじゃ、これは……。直接脳に、情報が行っている感じじゃな。その証拠に、ホレ」
 ミクがエグゼに触れようとするが、触ることなく通過する。


「今の我たちに実態はないのじゃ」
「本の内容を追体験するような感じなのかな?」
「おそらく、な。」


 そして、空中から、舞台は星を抜け、宇宙へと移る。
 何もない世界。そこは黒なのか白なのか。
 説明もできない今まで視覚したことのない色をしていた。
「まさか、これが」


 混沌。
 そして、その混沌から、光ーーと呼べるのかーーが湧き出てくる。
 それと同時に、闇ーーと呼ぶのかーーがくっきりと浮かび上がる。
 混沌は二つに分かれて行き、やがて消滅する。


「これが光闇の別れ……」
 エグゼたちは、今まさに、宇宙が生まれるところを目にしているのだ。
 光と闇。
 その二つは分裂し、時に混じりあい、加速度的にその質量を増していく。


 それは光の速さなど目でもないほどのスピードで、無に広がっていく。
 そして、光と闇はまじりあうと、途轍もないエネルギーを発し、爆発する。
 そのときに様々な粒子が飛び交う。


「日、月、火、水、木、金、土」
「風に熱」 
 ありとあらゆるものが生まれては、弾け、交じり合い、また爆発する。


 それはできたばかりの宇宙の中で、幾星霜の時をかけ、幾度も行われた。
 まるで試行錯誤をするように。


「これが宇宙の始まり……」
 場面は一気に変化する。
「宇宙開闢から、どれほどの時間がたったのじゃろうな」
 ミクがつぶやく。


 そこには、泡状に星星が煌く漆黒の世界となっていた。
 そして、二人の体が、一つの星へと落ちていく。
 住み慣れた空気、とでも言おうか。
 なぜなのか、二人はここが自分達の育った星だと、認識していた。


 目の前では、光と闇が対峙している。
 一触即発とはまさにこのことだろう。
「光と闇は相容れぬ者じゃ。もし、この星に両方が長くいたら、また一つに混じり合い、混沌に戻ってしまうであろう」


「そして、そのときには、途轍もないエネルギーを放出し、星すらも破壊する爆発を引き起こす、か」
 だからこそ、光と闇はお互いを遠ざけようとするのか。


 しかし、光と闇はどこまで行ってもコインの表裏なのだ。
 だからこそ。
 だからこそ、どちらかが引かなければならない。


 幸いにもこの星はでは、闇の軍勢が折れたようだ。
 闇の軍勢は、もっとも闇の深い場所。
 大地の下や、海の奥深くで暮らすことを決意し、地上は光の軍勢が支配することとなった。


「こんな円満に解決した問題だったのか!?」
 今まで見てきた歴史の中では、異例。
 どころではなく、初めてのことだった。


「なら、闇の軍勢はなぜあんな地獄に捕らえられることになったんだ?」
 エグゼがもっともな疑問を口にする。
「それは……」
 ミクも答えあぐねる。
 この星はまさに奇跡の中に成り立っているのだ。


 宇宙では、今この瞬間にも、光と闇が対峙し、激突し、聖魔融合のエネルギーで滅んでいるのだ。
 この星のように光闇(こうあん)が折り合いをつけた星が一体いくつあろうか。


 しばらくは、この星は平和だった。
 それは生物が進化し、知恵をつけるには十分な時間だった。
 光の軍勢は、長い永い時を経てようやく、自分達と対等に会話ができる存在に出会ったのだ。


 一人は精霊王。
 この世界の森羅万象を司る、精霊達を束ねる存在。


 もう一人はエンシェントドラゴン
 この地上の知恵を束ねる最高にして孤高の存在。


 この3人は777年7月7日話し合い、新たに二つの種族を生み出して、この星を管理させることを思いつく。
 それが、人間と魔物。


 しかし、それも試行錯誤の連続だった。
 奪い、妬み、殺し合い、滅びていく。
 そういった試みを繰り返しながら、ようやく、この星の全土に人間が行き渡り、モンスターたちとも折り合いをつけて、未来に向けて生きていくことができるようになった。

 しかし。

 そこで画面が乱れる。
 それは、なんと表現したものか。
 地獄絵図。
 というのが正しいか。
 宇宙より突如飛来した巨悪の根源。
 それは。


『混沌』
 なぜ宇宙開闢と供になくなったはずの混沌が、今この星に飛来したのか。
 混沌は滅んでなどいなかったのだ。
 未だ膨張を続ける宇宙の外。
 そこにこそ、混沌は存在していたのだ。


 そして、待っていたのだ。
 混沌(自分)と光と闇以外のものが現れるのを。
 そして、それらを取り込むことができる日を。
 待ちわびていたのだ。



 そして、戦争が始まる。
 混沌と、この星の生命すべてが命を賭して戦ったのだ。


 光も闇も、精霊もドラゴンも人も魔物も全てが戦った。
 結果。
 混沌を宇宙に追い出すことに成功したものの、人間も魔物も大きく数を減らし、精霊王は長年の休息を余儀なくされ、エンシェントドラゴンもまた、霊峰でしか住めなくなった。


 そして、光と闇は。
 地獄に幽閉された。
「そんな、ばかな!? あの地獄には、光の軍勢は確かにいけど、少数だったはず……」


「同じ地獄に幽閉されたとは限らん。しかし……」
 思考が絡まる。
 何が正しくて、何が誤っているのか、理解が追いつかない。

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