人外娘と真面目にファンタジーしちゃう本

葛葉幸一

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第4章 トール・ド・ルート

第7話 単騎決戦トール・ド・ルート

   一人荒野を駆ける事3日。
   ソウマの行くその先に、大軍が見えた。
「あれが本隊か」
   先頭の前に回り込み、その進路を塞ぐ。


「我は『トール・ド・ルート』が総指揮官、トール・ドライゼンである!我が1万からなる軍の侵攻を妨げるそこもとは何奴なるぞ!」
 ずいぶんの時代掛かった物言いをする魔物もいたものだ。


 トール・ドライゼンと名乗ったのは、様々な種族を掛け合わせた『混合魔種(キメラ)』だった。
「俺は『メリクリウス』が筆頭、ソウマ・ブラッドレイだ!ここを通りたかったら、俺を倒してから行くんだな!」


「ぬぅ……。高々一騎で我が軍勢を相手取ろうは……。しかし、実力は確かなものと見た! 手加減はせぬぞ!」
 トールは巨大な戦槌を振りまわし、合図をする。


「相手は強大な力を有している! 全軍全力で打ち倒せ!」
「敵の大将が馬鹿なら助かったんだが……」
 ここを突破すべく、敵兵を分断してくれたら楽だったのだが、そうは行かなかった。


 全軍、全力で、ただ一人に兵力をぶつける。
 その選択はまさしく正しかった。
 正面後ろ、左右上。
 すべての方面から攻撃が間断なく繰り出される。
 これでは大技を繰り出す暇はない。
 しかし。


「おおおおおおおぉぉぉぉぉっっっ!!!」
 拳が煌き、突きが繰り出される。
 その一撃。
 たった一撃が強靭な肉体を持つ魔物の軍勢を5匹なぎ倒す。


 左拳、右拳。
 拳が繰り出されるたびに魔物の死骸が吹き飛ぶ。
 流麗な動きで攻撃をかわし、一瞬で数十発の攻撃を繰り出す。


 しかも全てが一撃必殺。
 恐れを知らぬ魔物どもも、さすがにひるんだ。
 相手はたった一人である。
 そもそも全軍が全力で当たることもないと、高をくくっていた。


 しかし、その命令が正しかったのだと知る頃には、すでに50匹近い同胞が屠られていた。
 魔物たちの顔から、余裕が消えうせた。
 なんならば弄んで殺してやろうと楽しい気分ですらいたのに。


 この敵は、強い!
 そう相手の認識を改めて、魔物どもは休む暇を与えないよう、次々と襲い掛かるのだった。


ーーずくんっーー 


 傷が痛む。
 一撃攻撃を仕掛けるごとに、気が飛びそうになるほどの激痛が全身に走る。
 ソウマの怪我は、それほど深刻だった。


 エンシェントドラゴンから受けた傷は、通常の傷と違って治りが遅かった。
 一種の呪いのようなもの。
 常人なら、自分の足で立っているのも奇跡だ。


「奴は手負いだ!一気に押し切れ!!」
 弓が飛び交い、石つぶてが舞う。
 弓や石程度で怪我をする貧弱な魔物はこの中にはいない。


「ちっ!嫌なことに気付いてやがる!」
 ソウマにとっても致命傷にはならないものの、うざったい事この上ない。
 それでも。
 迫り来る竜人をその蹴りが吹き飛ばし。


 四方八方から飛び来る、爪、牙、尾。
 それら全てを交わして見せ、反撃をし、次々と屠る。
 第一陣が終わると、誰もソウマに飛び掛る者はいなくなった。
「どうした、もう終わりか?」


「ここまでの強者とは…」
 トールはそれでも、さらに命令を下す。
「敵の本隊が到着する前に、なんとしてもそ奴を戦闘不能にするのだ!!」


 第二陣、第三陣が続けざまにおそいかかる。
「少しくらいやすませてくれ、よっと!!」
 その時、何かが飛んでくるのが見えた。
「っ!?」


 それは不可視な程細く編みこまれた強靭な糸の両端に、鉄球がくくり付けられた凶器だ。
 ボーラの様にも思えるが、その糸は、強靭で細かった。


 ソウマを捕らえたその凶器は、肉を切り裂き、骨にまで達するほど鋭かった。
 アラクネ族の糸。
 鋼にも勝る硬度を誇る糸が、重さを持って飛来した結果だ。


「しまったっ!」
 しかし、ソウマは一瞬でその糸を引きちぎって見せた。
 それでも、怪我が癒えるわけではない。


 強力な意志の力で、出血は止めたものの、その傷は深い。
 ソウマが倒れるのも時間の問題だった。
感想 3

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