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第4章 トール・ド・ルート
第10話トールの力の源
「すごい……」
アラクネ族の少女、アーニャが呟く。
眼前、見渡す限りに倒れ付す死体の山。
天変地異があったのかと思うほどの死体、死体、死体。
地面は抉れ、丘は砕かれ、川はその姿を変えていた。
これを行ったのが一人の人間だと言って、誰が信じるであろうか。
トール・ド・ルートが攻めてくる、という一報から3日。
ナターシャとアーニャはラーズの街に残存する兵を用いて進軍を開始。
ようやく戦さ場にたどり着いたのだ。
さらに、エグゼ率いる本隊が到着するのに、3日要する。
彼はどうしているのか。
トール・ド・ルートがどうなったのか。
「メリクリウスの面々よ、そこまでだ」
1人の獣人が、アーニャたちを引き止めた。
「いま、ソウマ殿と我らが大将、トール・ドライゼンの一騎打ちの最中だ。その名誉にかけて、他の兵は交戦しない」
他のトール・ド・ルートの面々も、手を出してくることはしないようだ。
ならば。
アーニャたちも、見守るしかない。
傷だらけの、見るからに瀕死のソウマ。
片や無傷でソウマを見下ろす歴戦の混合魔獣(キメラ)。
獣王兵騎士団。
その団長だった男だ。
しかし、彼は獅子面の獣人だったはずだ、
それが今は体全身、づぎはぎで見る影もない。
そして、騎士魂をもっていた彼なら、こんな状態での一騎打ちなど、絶対にしなかったであろう。
こんな、傷ついたものをいたぶる様な一騎打ちなど…。
しかし、それほどのハンデがあってもなお、ソウマはこの決闘を受けたのだ。
「こんな一騎打ちなど、武人の致すものですか……っ!!」
ナターシャは歯を食いしばり、拳を握る。
あまりにも不利な戦い。いや、これは戦いですらない。
このように弱者を虐げるような振る舞いを許すことができなかったのだろう。
これはトールの戦略でもあるのだ。
手負いのソウマ一人に壊滅的な程のダメージを負わされ、さらには控えるは、彼の英雄エグゼ・トライアドもこちらにむかっている。
このままメリクリウスの軍隊と戦っても、負けは必須である。
それならば、敵の頭を早々に叩いたほうがいい。
メリクリウスと戦えるだけの戦力を残しつつ、さらにTOPを倒し、敵の意気を削ぐ。
戦争としてはこの上なく効果的だろう。
現にこのままの戦力で交戦し、駆けつけたエグゼがもし、トールに釘付けになった場合、メリクリウスに勝ち目はない。
それだけの力を、トール・ド・ルートはまだ残しているのである。
ソウマとしても、あの傷ではトール・ド・ルートの全軍を打ち倒すことはできなかったであろう。
ならば、少しでも余力のある内に、一騎打ちで敵の大将を討ち取ったほうがいい。
特にこのモンスターの軍団は、より強い者に惹かれて集まった烏合の衆である。
その頭が死ねば、これほど脆い者はない。
しかし、アーニャとナターシャのその
目にはありありと怒りの炎が燃えていた。
しかし、これは戦争である。
負ければ蹂躙されるのが世の常だ。
「それにしたって…」
トール・ドライゼン。
その姿を見たアラクネ族のアーニャは、吐き気を抑えていた。
混合魔獣(キメラ)である、醜悪なトールの姿を見てしまったからだ。
元の獣人の面影がないほどの強引な混合施術。
その本質を、アーニャは見てしまったのだ。
『物事の本質を見抜く魔眼』
これこそが、対『黒のカーテン』の切り札であり、メリクリウスが彼女をNO.2に置いている理由でもある。
アーニャがトールに見た物。
それは。
『光と闇』だった。
「な、どういうことですか、アーニャさん!?」
戦場に来るまで、まさに『光と闇』に付いて蔵書をあさっていたナターシャだ。。
聞き逃すはずがない。
アーニャはおぼろげな表情で、語る。
「彼はまず。闇の軍勢を手なずけた。それは、地獄だったの…」
己の力量不足を感じたトールは、七大精霊、精霊王の他に、自らの力になりそうな物を探していた。
そして、一人の男がトールに近づく。
「今以上の力がほしいか?」
それは悪魔のささやきだった。
「貴方の身体をいじらせてもらえれば、更なる力を、その身に宿そう」
トールは、怪しいと思いながらも、二つ返事で承諾した。
この男はマッドサイエンティストだ。
トールを裏切ることがあっても、自分の研究は裏切らない。そういう人種だ。
そして、トールを裏切るとしても、自分の研究の結果がでてからだ。
それをトールは理解していた。
そして、その研究結果がでるとき、トールは今までにない力を手にしていることであろう。
実験は始まった。
その実験で、彼が最初に手に入れたのは闇の力だった。
どこからか手に入れた、闇の軍勢の欠片。
それが、トールの身体に埋め込まれた。
その瞬間、体内に爆発的な力が芽生えるのが分かった。
しかし、それは己が体を根本から覆すような、強大な力だった。
三日三晩、激痛に苦しみ、血反吐を吐きつくし、ようやく闇の欠片はトールに根付いたのだ。
その時点で、彼の体は異形と化していた。
さらに、マッドサイエンティストが持ち出したのは、『光の欠片』
それを、埋め込む。
なにもないところで光と闇が融合すると、莫大なエネルギーを放出し、混沌に変わる。
というのは、先程エグゼたちが読んだ本の中に書いてあった事実だが、それを体内で行おうというのだ。
だからこそ、米粒ほどの欠片が使われるのだ。
それでも、闇の欠片を投与しただけで、あれほどの拒否反応がおきたのだ。
それと反発する光の欠片を投与したら、その肉体は果たして持つのか。
しかし、そのときにもたらされる力は、七大精霊にも匹敵するはずだ、とマッドサイエンティストはいう。
ならば、トールに断るという選択肢はない。
アラクネ族の少女、アーニャが呟く。
眼前、見渡す限りに倒れ付す死体の山。
天変地異があったのかと思うほどの死体、死体、死体。
地面は抉れ、丘は砕かれ、川はその姿を変えていた。
これを行ったのが一人の人間だと言って、誰が信じるであろうか。
トール・ド・ルートが攻めてくる、という一報から3日。
ナターシャとアーニャはラーズの街に残存する兵を用いて進軍を開始。
ようやく戦さ場にたどり着いたのだ。
さらに、エグゼ率いる本隊が到着するのに、3日要する。
彼はどうしているのか。
トール・ド・ルートがどうなったのか。
「メリクリウスの面々よ、そこまでだ」
1人の獣人が、アーニャたちを引き止めた。
「いま、ソウマ殿と我らが大将、トール・ドライゼンの一騎打ちの最中だ。その名誉にかけて、他の兵は交戦しない」
他のトール・ド・ルートの面々も、手を出してくることはしないようだ。
ならば。
アーニャたちも、見守るしかない。
傷だらけの、見るからに瀕死のソウマ。
片や無傷でソウマを見下ろす歴戦の混合魔獣(キメラ)。
獣王兵騎士団。
その団長だった男だ。
しかし、彼は獅子面の獣人だったはずだ、
それが今は体全身、づぎはぎで見る影もない。
そして、騎士魂をもっていた彼なら、こんな状態での一騎打ちなど、絶対にしなかったであろう。
こんな、傷ついたものをいたぶる様な一騎打ちなど…。
しかし、それほどのハンデがあってもなお、ソウマはこの決闘を受けたのだ。
「こんな一騎打ちなど、武人の致すものですか……っ!!」
ナターシャは歯を食いしばり、拳を握る。
あまりにも不利な戦い。いや、これは戦いですらない。
このように弱者を虐げるような振る舞いを許すことができなかったのだろう。
これはトールの戦略でもあるのだ。
手負いのソウマ一人に壊滅的な程のダメージを負わされ、さらには控えるは、彼の英雄エグゼ・トライアドもこちらにむかっている。
このままメリクリウスの軍隊と戦っても、負けは必須である。
それならば、敵の頭を早々に叩いたほうがいい。
メリクリウスと戦えるだけの戦力を残しつつ、さらにTOPを倒し、敵の意気を削ぐ。
戦争としてはこの上なく効果的だろう。
現にこのままの戦力で交戦し、駆けつけたエグゼがもし、トールに釘付けになった場合、メリクリウスに勝ち目はない。
それだけの力を、トール・ド・ルートはまだ残しているのである。
ソウマとしても、あの傷ではトール・ド・ルートの全軍を打ち倒すことはできなかったであろう。
ならば、少しでも余力のある内に、一騎打ちで敵の大将を討ち取ったほうがいい。
特にこのモンスターの軍団は、より強い者に惹かれて集まった烏合の衆である。
その頭が死ねば、これほど脆い者はない。
しかし、アーニャとナターシャのその
目にはありありと怒りの炎が燃えていた。
しかし、これは戦争である。
負ければ蹂躙されるのが世の常だ。
「それにしたって…」
トール・ドライゼン。
その姿を見たアラクネ族のアーニャは、吐き気を抑えていた。
混合魔獣(キメラ)である、醜悪なトールの姿を見てしまったからだ。
元の獣人の面影がないほどの強引な混合施術。
その本質を、アーニャは見てしまったのだ。
『物事の本質を見抜く魔眼』
これこそが、対『黒のカーテン』の切り札であり、メリクリウスが彼女をNO.2に置いている理由でもある。
アーニャがトールに見た物。
それは。
『光と闇』だった。
「な、どういうことですか、アーニャさん!?」
戦場に来るまで、まさに『光と闇』に付いて蔵書をあさっていたナターシャだ。。
聞き逃すはずがない。
アーニャはおぼろげな表情で、語る。
「彼はまず。闇の軍勢を手なずけた。それは、地獄だったの…」
己の力量不足を感じたトールは、七大精霊、精霊王の他に、自らの力になりそうな物を探していた。
そして、一人の男がトールに近づく。
「今以上の力がほしいか?」
それは悪魔のささやきだった。
「貴方の身体をいじらせてもらえれば、更なる力を、その身に宿そう」
トールは、怪しいと思いながらも、二つ返事で承諾した。
この男はマッドサイエンティストだ。
トールを裏切ることがあっても、自分の研究は裏切らない。そういう人種だ。
そして、トールを裏切るとしても、自分の研究の結果がでてからだ。
それをトールは理解していた。
そして、その研究結果がでるとき、トールは今までにない力を手にしていることであろう。
実験は始まった。
その実験で、彼が最初に手に入れたのは闇の力だった。
どこからか手に入れた、闇の軍勢の欠片。
それが、トールの身体に埋め込まれた。
その瞬間、体内に爆発的な力が芽生えるのが分かった。
しかし、それは己が体を根本から覆すような、強大な力だった。
三日三晩、激痛に苦しみ、血反吐を吐きつくし、ようやく闇の欠片はトールに根付いたのだ。
その時点で、彼の体は異形と化していた。
さらに、マッドサイエンティストが持ち出したのは、『光の欠片』
それを、埋め込む。
なにもないところで光と闇が融合すると、莫大なエネルギーを放出し、混沌に変わる。
というのは、先程エグゼたちが読んだ本の中に書いてあった事実だが、それを体内で行おうというのだ。
だからこそ、米粒ほどの欠片が使われるのだ。
それでも、闇の欠片を投与しただけで、あれほどの拒否反応がおきたのだ。
それと反発する光の欠片を投与したら、その肉体は果たして持つのか。
しかし、そのときにもたらされる力は、七大精霊にも匹敵するはずだ、とマッドサイエンティストはいう。
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