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第4章 トール・ド・ルート
全ての決着
……。
…。
立ち尽くすトール。
着地の態勢のままのソウマ。
トールの肉体は、見た目破壊しつくされていた。
問題は、混沌の力を消し去れたかどうか、である。
ぐらり、と体が揺れ、ソウマが倒れる。
「ソウマ!」
心配した皆が立ち上がる。
「ぐ、ぬ…」
ゆらゆらと立ち上る異形のエネルギー。
「まさか、こんな…っ!!」
トールに移植された光と闇の欠片は、本当に小さいものだった。
たしかに混沌のエネルギーは莫大だが、その大元である欠片のエネルギーが切れてしまえば、混沌になりえない。
ソウマは、確かに勝ったのだ。
「ばかなぁ!!おれは、究極の力を手に入れたのだぞ!なぜ、なぜたかが人間に敗れるっ!?」
トールの最後。
神にも匹敵する力を得たと過信した、最後であった。
地面に落ちる、二つの石片。
それは、力を失った光と闇の欠片だった。
「さぁ、これであたしたちの勝ちよ!!」
そういって、アーニャは欠片を拾うと声高らかに叫んだ。
「投降するものには温情を与えましょう!しかし、歯向かうなら容赦はいたしません!!」
剣を高々と掲げ、ナターシャは勝鬨を上げる。
そこには、抵抗するものなどいないかに見えた。
しかし。
『まさか、混沌の手勢までやられようとは…』
空に突如として現れたのは、他でもない。
ミハエル・ド・カザドその人だった。
「ミハエル…っ!」
そのビジョンを見上げるソウマ。
『強靭な肉体を誇る獣人に、最強の混沌の力。これなソウマ君を打ち負かすことができるかと思いましたが、まさか負けるとは……』
ミハエルの顔が醜く歪む。
想定外。それがありありと表情に浮かんでいた。
『しかし、いいデータがとれましたよ』
そういって、パチン、と指を鳴らす。
その瞬間。
「ぐおおおおおっ!?」
「ぎゃああああっ!!」
トール・ド・ルートの面々に異変が起きた。
残った獣人兵およそ3000人。
その圧倒的な数の全員から、今混沌の力を体から噴出させているのだ。
「そ、そんなっ!!??」
さすがのナターシャもあせりを隠せない。
今現在のメリクリウスの戦力で、この数の混沌の魔物を倒しきることはできない。
それが、ナターシャの判断だった。
「ナターシャ様、援軍が!!」
底に現れたのは、エグゼ率いる本体だった。
「待たせたな、ソウマ、アーニャ!!」
混沌の力に飲み込まれ、異形と成り果てたトール・ド・ルートの面々が次々と襲い掛かってくる。
戦争が始まった。
「ソウマ!」
エグゼは一足早く、ソウマに駆け寄った。
「なんだ……。今頃来たのか?……美味しいところは、俺がみんな……、持って行っちまった……ぜ」
「アーニャ、ティアラ、ソウマの手当てを!!」
エグゼが呼ぶと、すぐにアーニャとティアラが駆けつけ戦場外に連れて行く。
「行くよ、サニー」
『日の大精霊サニー』と融合を果たしたエグゼが、一人戦場を走る。
襲い来る敵の数は10。
エグゼはそれを一振りで切り伏せる。
流れるような体裁きに烈火如き剣尖は、動体視力に優れた魔物ですらまともに捕らえることはできない。
しかし。
「!? ばかな!」
切り捨てたはずの魔物が再び動き出す。
これが混沌の力か。
戦場のここそこで悲鳴が上がる。
「お、おかしいです! エグゼ様!!」
一人の兵士が報告に来る。
「い、いくら切っても、こいつら何回も立ち上がって……!」
そして、目の前でその兵士は頭から食われた。
「エグゼ、こいつらは全員ミハエルに『混沌の欠片』を埋め込まれていますわ!普通の人間には、倒せません!!」
ナターシャが叫ぶ。
「なるほど、厄介だな……。総員、戦場外まで退避!! いそげ、こいつらは倒せない!!」
エグゼは叫ぶと、自身は敵のほうに突っ込んでいく。
確かに普通の人間には倒せないが、精霊と契約したエグゼなら、葬り去ることができる。
「我も戦えるのじゃ!!」
エンシェントドラゴンのミク。
そのブレスは魂まで焼き尽くすことができる。
「よし」
二人は殿を勤めながら兵士たちを逃がす。
そして、全ての兵隊が逃げたところで、エグゼとミクが大軍と相対する。
ソウマが大方の敵を倒してくれはしたが、その数は絶望的である。
3000対2。
しかし、ソウマはその倍の数のモンスターを相手にしていたのだ。
「今の僕なら、いける……」
光の塔3階。ここはほぼ塔の頂上だ。
そこにいたのは。
「光の軍勢?いや、これは」
光でも闇でもない色をした獣。
魔狼、フェンリル。
ただでさえ恐ろしい敵である。
しかも、その身に宿した力は、光でも闇でもなかった。
「これが、混沌……っ!」
向けられているのは確かな殺意と憎悪。
そして、魔狼が跳ねた。
「!?」
その速さは烈火の如く。
かろうじて避けた3人はすぐさま体制を立て直す。
「っっっっっっっっっっッ!!」
ハピナが可聴域外の超音波を放つ。
それはたしかに魔狼に届いたはずだった。
しかし。
「GRAAAA!!」
魔狼が吠えた。
ハピナの放った超音波は、魔狼の咆哮によって掻き消された。
だが、その一瞬の隙を見逃すビスタとたたらではない。
一足飛びに魔狼に近接すると、その斧で、その鉄槌で、魔狼に攻撃を仕掛ける。
一瞬遅れて気づいた魔狼が回避行動を取ろうと動作に入った。
「ーーーーーーーーっ!!」
ハピナが再び声なき声を発する。
今度こそ、魔狼に届いた。
その証に魔狼は苦しみ悶えながら、両耳から血を流す。
そして、ビスタの攻撃がその延髄を切り裂き、たたらの鉄槌が心臓を叩き潰す。
死体を確認するまでもない。
即死である。
本来ならば。
混沌の力が膨れ上がったかと思うと、いきなりそれは再生した。
「2人とも、まだっす!っ!?きゃあっ!!」
魔狼に背を向けていた2人に注意を向けたハピナに魔狼の凶刃が振り下ろされる。
寸でのところで直撃は免れたが、その衝撃で壁に叩きつけられたハピナは、気を失う。
「あの傷が治るのか!」
なおもハピナに追撃をしようとしている魔狼に、ビスタは詰めより、自分に注意を引きつける。
「たたら、ハピナを!!」
そのまま魔狼と槍を交わし、ハピナから遠ざけた。
「わかった!ハピナ、無事かっ!?」
エグゼと房中術を交わし、気を高めさらにわずかとはいえ、日、月、火の大精霊の恩恵を受けているハピナがたった一撃でやられるとは。
「よし、応急処置をすれば大丈夫だ」
しかし、もしエグゼと交わしたハピナでなかったら、今の一撃で即死だったであろう。
「なんなんだこいつはっ!?」
明らかに普通の魔物でも、ましてや造魔でもない。
この力が、混沌。
「霊体に直接攻撃できる手段がないと、こいつは倒せないぞ!」
たたらが叫ぶ。
ここに来るまでに、魔水晶の内在魔力は使い切ったため、簡単に攻撃を仕掛ける術がない。
しかし。
「私はまだ、強くなれる!!」
体に流れる、微弱ながらも強力な力。
それは、大精霊の力。
エグゼと繋がって手にいれた精霊の力を手にいれてた。
「火の大精霊、フィアナよ、私に力を」
その途端に沸き上がる力。
刀身に宿る火の莫大なる加護。
この力なら。
「行ける!」
魔狼に対し、ゆっくりと構えるビスタ。
そう、心には炎をたぎらせて、決してその炎にすべてを委ねてはいけない。
「私は私を超えるのだ!!」
五月雨の如く繰り出される刺突。
それは不可避の連撃。
確かにそれは魔狼を幾度となく貫いた。
そして、今までなら与えられない致命傷を、確かに与えることができたのだ。
「GRAAAAAA!!」
ドウ、と地に付す魔狼は果たして、正しく絶命していた。
雲山霧消する混沌の力。
それは、米粒ほどの大きさのものでしかなかったが、たったそれだけの結晶に常人では倒せないほどの力が宿っていたのだ。
「これが、混沌……。こんなものがミハエルの手の中にあるのか」
たたらは、一通りハピナの手当てを終えると呟く。
「たたらはここで、ハピナを見ていてくれ。
私はこの上を見てくる」
「わかった」
上にあるのは更なる試練か、それとも光の精霊か。
油断なく階上へと進むビスタ。
その先には、中央に光り輝く宝玉が供えられた祭壇があった。
それをなんと表現すればいいのか。
一点の曇りもない光。
「これは……」
『お待ちしておりました、ここまで来られる剛の者よ』
一切の気配を感じさせず、後ろに何者かが立っていた。
(これはっ!?)
実態のない虚影のようなものか。
『私たち光の民は、その宝玉の中に捕らえられています。私たちを助け出してくれるのなら、私たちは力を貸しましょう。しかし』
その瞳は曇りのない鏡のような物。
嘘偽りを言ったのなら、すぐ様看破されることだろう。
『助け出すのは、私たち光の民だけですか?』
この質問は。
そして、その答えは。
すでにエグゼとソウマが答えを出している。
そして、ビスタもその考えに賛同したのだ。
「いや。助け出すのは、闇の軍勢と『両方』だ」
きっぱりと言い放つ。
そう、闇だけでもダメ。
光だけでも不十分。
しかし、その二つを同時に解き放てばまた混沌へ戻ろうとするだろう。
ならば。
「光の民と、闇の軍勢と、我らメリクリウスに力を貸してほしい。我らが肉の身体を貸そう」
そう、肉体という檻に閉じ込めれば、光は光のまま、闇は闇のまま反発することも、一つになる事もないのだ。
そして、欠片で強制的に力を与える訳ではないため、欠片を埋め込まれた者のように、副作用をもたらす訳でもない。
それと同時にメリクリウスのメンバーは光と闇の、強力な力を手に入れられるのだ。
『ならば、闇も救うというのですね?』
「あぁ、そうだ。そして混沌を引き連れこの大陸を脅かす奴らを、一網打尽にするのだ!」
『なるほど……。わかりました。その宝玉を持ち、精霊魔法の使える者ところまで届けてください。そうすれば、私たちの力の使い方がわかるはずです』
そう言うと、光の精霊は再び宝玉の中に戻っていく。
「有り難くお借りします」
ビスタはそう言うと、階下へと戻っていった。
戦力差は見ての通り。
負の感情は時として、マイナス面でしかありえない。
しかし、エグゼはしっかりとたずなを握り、制御する術を心得ていた。
決してその奔流に飲まれず、しかし炎を滾らす薪のようにくべていく。
そして、それが更なる力を引き出していくのだ。
「魔水晶・魔砲台、準備よし!!」
後方から、声が聞こえる。
派手な爆発音と供に、魔法力を伴った砲弾が打ち出される。
それは、魔法力を内包した魔水晶の弾丸だった。
「ばかな、この装備は『クロス・クルセイド』の…っ!」
互いに不干渉の協約を取り交わしたクロス・クルセイド。
それがなぜ!?
「エグゼ殿、話は後だ!我らが誇る魔水晶大隊なら、奴らとも渡り合えるはず!助太刀いたす!!」
「恩に着ます!」
『まさか、クロス・クルセイドが来るとは…。面白いですね…』
実験体にされた獣人たちがエグゼに向けて進軍を開始する。
『こ、ろして…』
『ごんなの、い、やだぁぁぁ』
獣人の口から漏れでるは呪詛。
自分達をこんな体にしたミハエルへの怨念。
それを断ち切るには…。
「こんな方法しかなくて、ごめん」
エグゼは居たたまれない気持ちで剣を振るう。
そう、彼らはミハエルが行った人体実験の被害者なのだ。
ならば、エグゼにできることは、彼らの望みを叶えてやることだけなのだ。
剣閃が走る。
わずか一太刀で、数匹のモンスターが塵となり消えていく。
エグゼが目指すは最奥にいる、トール・ド・ルートのNO.2の元。
それを邪魔するものを一蹴しながら、最短ルートでたどり着く。
それ以外のクロス・クルセイドの兵は、ミクの指示の元、確実に敵を殲滅していく。
しかし、クロス・クルセイドの兵は人間だ。
強大な力を持つ獣人と相対することだけでも脅威なのだ。
さらに敵は混沌の力をも振るっている。
劣勢は明らかだった。
「はあぁあぁぁぁぁっ!!」
舞うように敵を切り裂いていくエグゼ。
その一振りが数匹の敵をなぎ倒し。
その一足が万里をかける。
敵の只中にいて、背後からの敵襲も予知するかの如く、かわし、反撃する。
敵には恐怖という感情がない。
敵には怯むという感情がない。
敵には情けという感情がない。
全てを、ミハエルが奪ったのだ。
だからこそ、エグゼも感情を押し殺してただ、剣を振り続ける。
いつしか、戦場はエグゼだけになっていた。
クロス・クルセイドは魔水晶に蓄えられた魔法力を使いきり、ミクも疲労で倒れた。
しかし、エグゼだけは戦い続けていた。
ただただ、無心で剣を振るう。
そして。
エグゼが参戦してから丸1日。
その場に立っているのはエグゼだけとなっていた。
トール・ド・ルートは壊滅。
光と闇の融合体、混沌にされるという、無残な死を遂げた。
「あいつらは…。名誉ある死をも汚したんだ」
エグゼがつぶやく。
戦士として。武人として。
戦場の中で対等に戦い死んでいく。
殉教にも似た死。
しかし、戦士たるエグゼもわかっていた。
自分の理想のために死ねることがどれほど幸せか。
それらを全て、ミハエルが奪ったのだ。
そして一人立ち尽くすエグゼ。
すでにこの戦さ場に動くものはいない。
エグゼが全て殺したのだから。
あたりは暗くなり、月のみがその場を照らす。
精霊の力を体から離して気がついた。
右目が見えない。
色覚を失った目は、今度は光を失ったのだ。
防衛ラインでは、全ての兵が帰ることなくエグゼを待っていた。
「お帰りなさい、エグゼ」
アーニャがエグゼに抱きつく。
そのシルクのような柔らかな髪を撫でながら、エグゼはソウマの容態を聞く。
「命に別状はありませんが、肉体よりも魂の傷が致命的です」
と、手当てをしてくるれたであろうナターシャとティアラが答える。
「肉体の傷は治るの!でも、でも魂までは妖精の粉でも無理で……」
ティアラは泣いていた。
前回はハピナの母を救えず。
今回もソウマは死の淵に瀕した。
自分の力不足を嘆いているのだろう。
「わかった。とりあえず、ラーズまではみんな、帰ろう」
「では、ワシが一足先にいって、皆を労う準備をしておこう」
そう言ってミクがパタパタと飛んでいく。
「エグゼ様のお傷も見せてくださいませ」
ナターシャが治療小屋にエグゼを連れて行く。
「これは……」
そのたましいは、エグゼとは違った意味で悲惨だった。
魂の所々が、人間の魂ではなく、もっと高次元の魂へと変化しつつあるのだ。
それはこの世にいられぬ存在。
「とりあえず肉体の怪我は、ティアラさんの粉で治りますが、この魂は……」
「やはり、無理かい?」
「すいません、少なくとも私にはできませんわ」
「そうか、なら治せるところだけお願いするよ」
「かしこまりました」
こうして、勝利したはずのメリクリウスは暗いムードの中、凱旋することになった。
今回の戦いで、思い知らされたのだ。
脅威は造魔と神魔。
だけではなくなったのだ。
さらに混沌の力を宿すことができるのだ。
そうなると、魔法の使えないこの大陸で、奴らを一般の兵が倒すことは出来ない。
今回持ち込まれた魔水晶も、全ての兵には行き渡らないだろう。
なにか打開策を練らなければ、これから先エグゼとソウマとミクくらいしか戦えるものはいなくなってしまうのだ。
(光の軍勢と闇の軍勢の力が手に入れば、あるいは……)
エグゼはラーズに戻りながら、ビスタ、たたら、ハピナの三人の吉報を楽しみにしているのだった。
それから2日後。
ようやく治療や被害状況の確認などを終えることが出来たエグゼの前に、一人の女性が立っていた。
それは、魔水晶を装備したクロス・クルセイドの兵の代表だった。
名前をカーナ・エスメラルダと言った。
「この説は助かりました。しかし、クロス・クルセイドと我々メリクリウスは、不可侵条約を互いに結んだと思いますが、なぜ……?」
ソウマとクロス・クルセイドとのTOP会談で、そのように決まり、血判状はこちらも控えていた。
「はい。私たちはクロス・クルセイドの中でも、雇われていた身でした」
つまりは、魔物排斥という理念の元に集った正規兵ではなく、お金を稼ぐことが目的の傭兵団なのだ。
「クロス・クルセイドがほぼ壊滅した今、我々はタダの金食い虫にすぎません。契約を打ち切られました」
女性は朗らかに言うが、その実態は違うであろう。
魔水晶と、さらに魔水晶からなる武器を装備し、さらに切り札といっても過言ではない、魔砲台すら3台も持ってきたのだ。
傭兵というのも嘘でとないが、首という口実の援軍であった。
「助かります!これからもよろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
エグゼはカーナとしっかりと握手を交わしたのだった。
それから1日後。
エグゼの元に、ハピナの帰還の報がもたらされた。
空を飛べるハピナが、たたら、ビスタに先行して、ラーズふ戻ったのである。
「よかった、みんな無事かい?」
「はい、ピンピンしてるっすよ!早速っすが、これが光の宝玉っす」
ハピナが背嚢から、黄金に輝く宝玉を取り出し、エグゼに手渡した。
「これが、光の軍勢の宝玉……。ありがとう」
エグゼは宝玉を手にし、立ち上がる。
「僕はすぐに要塞都市ブリガンダインに行くよ。この街は任せていいかな?ハピナ」
「はい、大丈夫っす!」
「ナターシャを連れて、二人で出かける。何かあったら、すぐにデーモンロードさんに連絡を」
「わかったっす!お気をつけて!」
エグゼとナターシャ、二人は再び要塞都市ブリガンダインに来ていた。
「われわれ悪魔は、精霊とは異なり、この世界に顕現するには、呼び出す魔法力の他に肉の身体が必要になるのです」
デーモンロード宅で小休止をとるエグゼとナターシャ。
そんなおり、デーモンロードが話し始めたことだ。
「肉の器がない場合、召喚者の魔法力を延々と使い続けてしまうのです」
「精霊は呼び出す時だけ魔法力を使って、あとはこの世界にずっといてくれますね」
精霊と悪魔の違い。
しかし肉の身体ではなく、幽体で別次元に存在すると言うところは同じか。
「そうですな、そこが大きな違いであります。我々が受肉する肉の器と言っても、死した獣の肉でもなんでも良いのです。あとは自由に姿を変えられます」
そして、悪魔は還す時も手間がかかると言う。
「基本的に私たちは召喚者の願いを叶えるためにこの世界に受肉しますが、地獄に還る時は、召喚の願いを叶えるか、召喚者が返還するかの2択なのです」
精霊は割と気分屋で、ずっと一緒に旅するものもいれば、用が済んだら自分の意志で還るものもいる。
「そう、我々は自分の意思で還ることができないのです」
そして、デーモンロードたちを召喚した者は先のクーデターで死んでしまったと言う。
「そうした悪魔が各地にいました。そして、クーデター後に正教が広まるに連れ、この大陸にいた悪魔や悪魔と契約した魔女は迫害を受けることになる。
そう、あの呪いの杖の村のように。
「『水の大精霊ミズキ』様は、そんな我々を集めこの街を作ってくださった。それは、今の時のようなことを想定していたのかもしれません」
いつの日か、エグゼが再立ち上がることを予想して、強力な戦力となる悪魔の軍団を集めたのだ。
「この度、闇の軍勢を解放してくださった暁には、我らもその力をメリクリウスのためにお貸ししましょうぞ」
「ありがとうございます!とても心強い」
エグゼは立ち上がる。
「まずは、闇の軍勢の解放を」
「はい、わかりました」
エグゼは出されたお茶を飲み干すと、ナターシャを連れて地獄へと向かうのだった。
地獄を歩くエグゼとナターシャ。
足元はぬかるみ、あちらこちらから怨嗟の声な聞こえてくる。
光の軍勢のは、精霊共々この宝玉に閉じ込められ、全く動けない。
どちらが地獄なのだろうか。
いや、どちらがではない。
どちらも地獄なのだ。
「厄介な……」
目の前に現れたのは、魔獣オルトロス。
武器不能地帯にあってはエグゼも剣は使えない。
しかし、その身に宿りし剣聖の技は冴え渡る。
さらに、ソウマの戦いを間近で見てきたのだ。
ある程度は徒手空拳でも戦えはする。
しかし、魔法力も、ソウマのような気の力も使えないエグゼにはオルトロスを倒す術がない。
ここは戦いを避け先に進むのが懸命だろう。
「なんとか、切り抜けましたね」
ナターシャもよくついて来てくれている。
「もうここからは安全だ」
前回、闇の精霊と出会った場所に来ていた。ここだけはなぜか魔獣が寄り付かない。
「闇の精霊よ、いるか!?」
エグゼが声を張り上げ、闇の精霊に呼びかける。
『……。人間よ。なぜ再びここを訪れた。闇しか見えぬお主らと語らう言葉は、我にはあらん』
「僕たちは、闇の軍勢を解放しに来た。そして、光の軍勢達もだ!」
そう言って、エグゼは懐から光の宝玉を取り出す。
『おぉ、それは……っ!!汝らは、光と闇を分け隔てなく救うというのか!』
「光と闇は表裏一体。どちらが欠けても、この世界は成り立たない存在です」
一瞬の沈黙のあと、何かが弾けるような衝撃があった。
『この先に、闇の軍勢を解放するための試練が待ち受けている。もし解放してくれた暁には、我ら闇の軍勢はそなたらに力を貸そうぞ!』
そして、今まで閉ざされていた、地獄の最奥への道が開かれたのだ。
「必ずや」
短く返事をしたエグゼは、ナターシャを連れて先へと進むのだった。
そこは一言でいえば焦熱。
光の軍勢はコキュートスに匹敵する程の氷の棺に囚われていたという。
ならば、闇はこの灼熱の地獄に閉じ込められたのだ。
「ナターシャ、足元に気をつけて」
「はい、心得ました」
二人は慎重に歩を進める。
この先には、一体何が……?
特に敵襲もなく、エグゼ達は最奥の広間に出る。
しかし、そこは行き止まりだった。
ここに至るまでの道のりば分岐もなく一本道だった。
だとすれば、ここに何かがあるのは明白だった。
「エグゼ様、ここには何も……」
ない、と言いかけて、ナターシャがエグゼを見て固まる。
見えなくなったはずの右目が、赤く染まっていた。
その異様さは人間のものではない。
それはまさしく、精霊と同じものだった。
長いこと精霊の魂と融合していたその結果であった。
しかし、それは皮肉なことに、今ここで役に立ってしまったのだ。
「ミズキ、久しぶり」
「よく、来たわね。光の宝玉も手に入れてくれたみたいだし、感謝するわ。でも」
ミズキはその場を離れようしない。
「私がこの闇の宝玉を守っていないと、奴が来るのよ」
ミズキは何者かから、ここにある闇の宝玉を守っているらしかった。
だからこそ、この場から動くことができないのだ。
しかも、ここは灼熱地獄である。
水の大精霊とは相性が悪く、ミズキもその力を100%使えてはいなかった。
「その、奴とは一体……」
「エグゼ様、何か来ます!」
話をしていたこの場に、何者かがやって来たのだ!
『闇の、宝玉……』
それは爆炎の魔神、イーフリートであった。
『それがあれば、我は……』
「こいつが闇の宝玉を狙っていたのか!」
しかし、この場に置いてエグゼは剣を振るえない。
こんな時に、ソウマのような力があれば……。
「ミズキ、僕と契約できるか?」
「えぇ、少し時間がかかるけど。今はそれしか、突破口はないわね」
莫大な水の加護と、水精の徒手格闘を授けるミズキと契約して融合すれば、エグゼでも素手で敵と戦える。
しかし、契約時は全くの無防備だ。
「エグゼ様、わたくしが暫しの時を稼ぎます。どうか、その間に契約をお願い致します」
そう言って、ナターシャがエグゼとイーフリートとの間に立ち塞がる。
「私も悪魔の端くれ。時間稼ぎくらいできますわ」
そう言って、ナターシャはイーフリートに向かっていく。
「ナターシャ、ありがとう!」
「いきなりだけど、いくわよ、エグゼ」
ミズキと手を合わせた瞬間、エグゼの意識は闇に落ちる。
それは、エグゼですら忘れ去った、遠い記憶。
母に抱かれ、父にあやされた遠い遠い過去。
「この子の未来は一体どうなるのでしょうか」
母が心配そうに寝ているエグゼの頭をなでる。
「なに、心配はいらないさ。我々の子だ」
それを優しく受け止める父。
あぁ、これが家族なのか。
エグゼの心に優しい灯火がともる。
しかし、幸せは長くは続かなかった。
ある日訪れた地獄の名は。
『混沌』
「くそ、混沌の手勢がこんな所にまで!!」
父は剣を片手に、応戦をする。
類稀なる剣術で敵を屠っていく父だが、相手はエネルギー体である。
魔法か精霊の力を用いなければ倒すことはできない。
そして、物量だ。
100からなる混沌は、その絶大なる力と数で父を取り囲む。
「エグゼ、ごめんなさい。私たちは、貴方を守る事が出来なかった」
母は泣きながら呪文を唱える。
それは、転移の魔法。
しかし今はどこに転移させるか、細かく座標指定をしている時間はない。
「さようなら、愛しい子よ」
母は泣きながらその魔法力を解放した。
エグゼが飛ばされたのはエルフの森の入り口。
そして、そこで剣聖ルーシアに拾われるのだ。
「これが貴方の過去……。なぜ混沌は貴方の家を襲ったのかしら」
その問いに答えるものは誰一人いなかった。
「ミズキ」
歪な魂のエグゼと、ミズキが向かい合う。
「こんなにまで精霊化が進んでいるなんて……」
エグゼの傷口を撫でるように、優しく触れるミズキ。
「僕が何者なのかはわからない。でも、今は君の力が必要なんだ」
「Yes,my master」
そして、ミズキとエグゼは融合を始めた。
「ハァ、ハァ……っ!!」
爆炎の魔神イーフリートは追撃の手を休めない。
魔法の使えないこの大陸において、この爆炎の魔神を倒すことのできるものは限られているだろう。
気を使い、魂にまで攻撃を与えられるソウマ。
剣で精霊と融合している時のエグゼ。
精霊の加護を発露させたビスタ。
エンシェントドラゴンの遺伝子すら手に入れた、ミハエルの神魔。
この4人くらいだ。
ナターシャも魔法が使えていれば、勝ち得たかも知れないが、使えない現在攻撃手段はない。
ただ避け、逃げて時間を稼ぐ。
それだけしかできない。
あるいは父のデーモンロードなら、魔法を使わずとも倒せたかも知れなかった。
(非力というのは、歯がゆいものですわね……)
ナターシャも父からの教育は受けてきた。
しかし、まさか自分が魔法の使えない状況下で、このように戦うことなど考えてもいなかったのだ。
護身程度。
そうおもっていた。
しかし、それは真実ナターシャを守る技として、役に立ってはいる。
魔法などとは関係なく、その身自体が炎を纏うイーフリートにとって、この焦熱地獄はまさにうってつけの戦場だ。
この高温はただそこに立っているだけで体力を奪う。
そして限られた足場。
一歩踏み間違えれば、灼熱にその身を焼かれ、骨も残らず絶命するだろう。
「はぁ、はぁ、しつこいとレディに嫌われ、ますわよ?」
しかし、この魔神に言葉は通用するのか。
さらなる猛攻が、ナターシャを襲った。
その時。
イーフリートの炎の拳を受け止める者がいた。
「待たせたね。ありがとう、ナターシャ」
「エグゼ、さま……。契約はできたの、ですね……」
ぐらり、と倒れそうになるナターシャを抱え、エグゼは彼女を安全な場所へと移し、イーフリートに向き直る。
「水精拳」
それこそが、『水の大精霊ミズキ』の得意とする徒手格闘。
両腕には、龍の如く、莫大たる水を称えている。
「水針攻」
針の如く圧縮された、超水量の攻撃。
水とはいえ、それを圧縮し打ち出せばミスリルさえも穿つという。
エグゼの放ったそれはその名の通り、刃となり敵を切り裂く。
しかし。
その肉体自体が炎で出来ているイーフリートは、すぐに再生する。
炎に包まれたこの場所では、イーフリートは無限に再生できるのだ。
「厄介な……」
蹴り、突き、投げ、極める。
急所を狙おうとも、関節を決めようとも、たちどころに回復してみせる炎の魔人。
「エグゼ様、イーフリートには『核』があるはずです!それを破壊すれば、倒すことができるはずです!」
ナターシャが叫ぶ。
「核だって!?しかし、どこにそんな物が……!?」
目を凝らしてみるが、それらしきものは見当たらない。
『エグゼ、右目に集中して!』
それはミズキの声。
今のエグゼは、右目は、精霊と融合していない時は見えていない。
それは、エグゼの魂が精霊に近づいている証拠だ。
『今のあなたの右目なら見えるはず!より精霊よりになった、その目なら!』
皮肉なことに、人間の目では見通せない物を、視力を失った目だけが見ることができるのだ。
「わかった」
エグゼは左目を瞑り、右目だけでイーフリートを見据える。
赤く光る拳大の炎の塊。
眉間にそれを見ることができた。
「そこか!!」
触れれば即死してもおかしくないほどの力と熱を携えた拳を紙一重でかわし、エグゼの渾身の突きがイーフリートの眉間に突き刺さる。
「GYAAAAAAっ!!」
苦しみだしたイーフリートの体から、炎が消えていく。
そして、イーフリートの体は完全に消滅したのだった。
「ふぅ、ナターシャ、助かったよ」
「いえ、無事にミズキ様と契約が出来て良かったですわ」
水分を補給し、しばし休んだナターシャもだいぶ回復したようだ。
「エグゼ様、闇の宝玉を」
「あぁ。これで、光と闇を解放することができる」
闇の宝玉を手にしたエグゼは、要塞都市ブリガンダインへと戻った。
「たしかに、光の宝玉と闇の宝玉、お受けしました」
デーモンロードは恭しくそれを受け取る。
「しかし、解放した後はどうなるんですか?
長いこと光と闇が近くにいると、また混沌に戻ろうとしてしまうのでは……」
光と闇は表裏一体でありなが、元は混沌という一つのエネルギー体であった。
二つに別れはしたが、長時間至近距離にいるた、混沌となり、またこの大陸、いやこの星の脅威となる。
だからこそ、封印したのちも、地下迷宮と霊峰の頂上というかけ離れたところに宝玉として封じられていたのである。
「御心配召されるな。あなた方の戦力となり、さらには混沌に戻さない方法が一つあるのです」
そう言って、デーモンロードは二つの宝玉を祭壇に捧げる。
「我々悪魔が、この世界に顕現する際に、肉体が必要だと言いましたが、光と闇もまた、それと同じなのです」
光と闇のエネルギーに肉の体を与える。
それは、先の戦いでドール・ド・ルートがやっていたことだ。
特に、団長であったトールは、その身に光と闇を宿しながらも、完璧にその力を抑え、また任意で使うこともできたのだ。
そして、その身体能力は格段に上がったのだ。
ミハエルが用いた、神魔に匹敵する程の力を得ていた。
「光と闇、相性があるのでなんとも言えませんが、メリクリウスのメンバーに、軍勢を憑依させます。そうするば、元の混沌に戻ろうとすることはない。しかも、強力な味方となってくれるでしょう」
デーモンロードは一冊の本を手に取りながら、説明をする。
「昔、宇宙からやってきた混沌を追い返した時も、そのようにして戦ったという記述があります」
しかし、それはエグゼの精霊と融合しているようなものではないのか。
ならば、デメリットがある可能性も否定はできない。
「僕は精霊と長く融合しすぎたために、右目の視力を失い、左手も失った。そのような害はないのですか?」
エグゼは右目を抑えながらデーモンロードに問う。
「光と闇の同意が得られなければ、害はあります。エグゼ殿が戦った、あの混合魔獣(キメラ)のように、寿命を縮め、さらにはその身を滅ぼします。しかし、それぞれの精霊からの祝福があれば、そう言った副作用もないでしょう」
それはなんという僥倖か。
前日までの戦いで兵も減り、戦さ場に出なかった者たちが生き残っていた。
ブリガンダインの悪魔や魔女たちの力を借り、人数の問題は解決できた。
そして、兵の質。
まだまだ練兵が必要で、戦場に出れない者も多数いた。
そんな彼らが一気にレベルアップすることが可能なのだ。
こんなに素晴らしいことはない。
「しかし先ほども言った通り、相性があります。光の軍勢としか融合できない者。闇の軍勢としか融合できない者。またはどちらとも融合できない者もいます。それだけはご理解を」
「わかった」
精霊との相性というのは、精霊使いであるエグゼには十分理解できていた。
「では、光と闇、この二つと融合してもいい、という者たちをこのブリガンダインに集めて下さい」
その情報は瞬く間にメリクリウス全体に報告され、数日後にはこのブリガンダインに、2000を超える兵士たちが集まった。
光、闇。
宝玉に封じられた軍勢の数はそれぞれ1000。
ちょうどいい数であろう。
そして、相性を調べたり融合を果たしたりなどを繰り返し、少しずつ兵士たちがレベルアップしていくのがわかった。
これなら、造魔にも勝てる軍団ができるはずだ。
「僕は残念ながら、どちらとも相性は良くなかったみたいだね」
エグゼは肩を竦めるが、大精霊と契約した時の強さは、やはりどの兵よりも群を抜いていた。
「俺がいない間に面白そうなことしやがって!」
激痛を抱えながらも普段通り動くことができるようになったソウマの場合は、意志力が強すぎて、どちらの軍勢も付け入る隙がなかったらしい。
こうして、悪魔、魔女たちの力を借りることができ、さらには軍全体のレベルアップも測れたのだ。
練兵場では、強くなった自分たちの力を試すように、兵士たちの訓練が続いている。
「おーおー!みんな強くなったなぁ!」
練兵場では、ソウマがみんなの訓練を眺めていた。
光とも闇とも相性の悪かった者は、ソウマに気の練り方を教わったりしていた。
もちろん一朝一夕にできるものではないが、続けていけば、それなりの効果はあるそうだ。
「あとは、自信が過信にならないといいけど……」
いきなりのレベルアップで、浮れてしまうものも出てくるかも知れない。
「なに、少ししたらいいイベントを開催しようと思っているよ」
そういうソウマの顔はいつになく真剣であった。
ツクヨミの街では。
「事後処理かぁ……」
街に戻ったビスタが頭を抱えていた。
「壊れた装備の修理に、新たに仲間になった悪魔たちの武器防具……。精霊石はだれか買いに行ってるか?」
たたらも新しい仲間ができて、鍛治で大忙しだ。
「アーニャが行ってくれている!5日後には、頼まれた数が揃うだろう。えーと、足りないのは馬に荷台。
魔砲も動かせるような台車も必要だ」
「私は、鍛治場に戻るからな!」
「あぁ、頼んだ」
ダメだ、これは一人では無理だ。
だれか、有能な秘書でもいないととてもじゃないが回らない。
そう決意して、ビスタは人を探し始めるのだった。
ラーズの街でも同じようなことが起こっていた。
「あぁ~、頭が爆発するっす~」
会長代理のハピナが苦悩している。
「新しい人員が増えました。住居の新築が必要ですわ」
右手にはナターシャ。
「ナダルの村の兵と食料が足りてないのじゃ。あの辺りは魔獣もでるから、兵を2~3人と、バリケードを作るための木材、さらに食糧援助を行うのじゃ!」
「わかってるっすよ~、ちょっと待つっす!まだまえの被害報告も読めてないっすよ!」
「速読の仕方は教えたはずですわ」
「そんな直ぐ、覚えられないっすよ!」
ツクヨミと合わせて、要所であるラーズの街。
この街を治めるのは大変なようだ。
エグゼは自身の執務室で、書類を読んでいた。
それは次に向かう『木の大精霊ネイ』のいるところの情報だ。
「ミトラ、か」
大森林が広がり、神樹ミッドランジェが生えているという、神聖なる森である。
精霊の加護がないと入ることも出来ない巨大な森林である。
そこに、ネイがいる。
エグゼの瞳は、既につぎなる戦いを見据えていた。
…。
立ち尽くすトール。
着地の態勢のままのソウマ。
トールの肉体は、見た目破壊しつくされていた。
問題は、混沌の力を消し去れたかどうか、である。
ぐらり、と体が揺れ、ソウマが倒れる。
「ソウマ!」
心配した皆が立ち上がる。
「ぐ、ぬ…」
ゆらゆらと立ち上る異形のエネルギー。
「まさか、こんな…っ!!」
トールに移植された光と闇の欠片は、本当に小さいものだった。
たしかに混沌のエネルギーは莫大だが、その大元である欠片のエネルギーが切れてしまえば、混沌になりえない。
ソウマは、確かに勝ったのだ。
「ばかなぁ!!おれは、究極の力を手に入れたのだぞ!なぜ、なぜたかが人間に敗れるっ!?」
トールの最後。
神にも匹敵する力を得たと過信した、最後であった。
地面に落ちる、二つの石片。
それは、力を失った光と闇の欠片だった。
「さぁ、これであたしたちの勝ちよ!!」
そういって、アーニャは欠片を拾うと声高らかに叫んだ。
「投降するものには温情を与えましょう!しかし、歯向かうなら容赦はいたしません!!」
剣を高々と掲げ、ナターシャは勝鬨を上げる。
そこには、抵抗するものなどいないかに見えた。
しかし。
『まさか、混沌の手勢までやられようとは…』
空に突如として現れたのは、他でもない。
ミハエル・ド・カザドその人だった。
「ミハエル…っ!」
そのビジョンを見上げるソウマ。
『強靭な肉体を誇る獣人に、最強の混沌の力。これなソウマ君を打ち負かすことができるかと思いましたが、まさか負けるとは……』
ミハエルの顔が醜く歪む。
想定外。それがありありと表情に浮かんでいた。
『しかし、いいデータがとれましたよ』
そういって、パチン、と指を鳴らす。
その瞬間。
「ぐおおおおおっ!?」
「ぎゃああああっ!!」
トール・ド・ルートの面々に異変が起きた。
残った獣人兵およそ3000人。
その圧倒的な数の全員から、今混沌の力を体から噴出させているのだ。
「そ、そんなっ!!??」
さすがのナターシャもあせりを隠せない。
今現在のメリクリウスの戦力で、この数の混沌の魔物を倒しきることはできない。
それが、ナターシャの判断だった。
「ナターシャ様、援軍が!!」
底に現れたのは、エグゼ率いる本体だった。
「待たせたな、ソウマ、アーニャ!!」
混沌の力に飲み込まれ、異形と成り果てたトール・ド・ルートの面々が次々と襲い掛かってくる。
戦争が始まった。
「ソウマ!」
エグゼは一足早く、ソウマに駆け寄った。
「なんだ……。今頃来たのか?……美味しいところは、俺がみんな……、持って行っちまった……ぜ」
「アーニャ、ティアラ、ソウマの手当てを!!」
エグゼが呼ぶと、すぐにアーニャとティアラが駆けつけ戦場外に連れて行く。
「行くよ、サニー」
『日の大精霊サニー』と融合を果たしたエグゼが、一人戦場を走る。
襲い来る敵の数は10。
エグゼはそれを一振りで切り伏せる。
流れるような体裁きに烈火如き剣尖は、動体視力に優れた魔物ですらまともに捕らえることはできない。
しかし。
「!? ばかな!」
切り捨てたはずの魔物が再び動き出す。
これが混沌の力か。
戦場のここそこで悲鳴が上がる。
「お、おかしいです! エグゼ様!!」
一人の兵士が報告に来る。
「い、いくら切っても、こいつら何回も立ち上がって……!」
そして、目の前でその兵士は頭から食われた。
「エグゼ、こいつらは全員ミハエルに『混沌の欠片』を埋め込まれていますわ!普通の人間には、倒せません!!」
ナターシャが叫ぶ。
「なるほど、厄介だな……。総員、戦場外まで退避!! いそげ、こいつらは倒せない!!」
エグゼは叫ぶと、自身は敵のほうに突っ込んでいく。
確かに普通の人間には倒せないが、精霊と契約したエグゼなら、葬り去ることができる。
「我も戦えるのじゃ!!」
エンシェントドラゴンのミク。
そのブレスは魂まで焼き尽くすことができる。
「よし」
二人は殿を勤めながら兵士たちを逃がす。
そして、全ての兵隊が逃げたところで、エグゼとミクが大軍と相対する。
ソウマが大方の敵を倒してくれはしたが、その数は絶望的である。
3000対2。
しかし、ソウマはその倍の数のモンスターを相手にしていたのだ。
「今の僕なら、いける……」
光の塔3階。ここはほぼ塔の頂上だ。
そこにいたのは。
「光の軍勢?いや、これは」
光でも闇でもない色をした獣。
魔狼、フェンリル。
ただでさえ恐ろしい敵である。
しかも、その身に宿した力は、光でも闇でもなかった。
「これが、混沌……っ!」
向けられているのは確かな殺意と憎悪。
そして、魔狼が跳ねた。
「!?」
その速さは烈火の如く。
かろうじて避けた3人はすぐさま体制を立て直す。
「っっっっっっっっっっッ!!」
ハピナが可聴域外の超音波を放つ。
それはたしかに魔狼に届いたはずだった。
しかし。
「GRAAAA!!」
魔狼が吠えた。
ハピナの放った超音波は、魔狼の咆哮によって掻き消された。
だが、その一瞬の隙を見逃すビスタとたたらではない。
一足飛びに魔狼に近接すると、その斧で、その鉄槌で、魔狼に攻撃を仕掛ける。
一瞬遅れて気づいた魔狼が回避行動を取ろうと動作に入った。
「ーーーーーーーーっ!!」
ハピナが再び声なき声を発する。
今度こそ、魔狼に届いた。
その証に魔狼は苦しみ悶えながら、両耳から血を流す。
そして、ビスタの攻撃がその延髄を切り裂き、たたらの鉄槌が心臓を叩き潰す。
死体を確認するまでもない。
即死である。
本来ならば。
混沌の力が膨れ上がったかと思うと、いきなりそれは再生した。
「2人とも、まだっす!っ!?きゃあっ!!」
魔狼に背を向けていた2人に注意を向けたハピナに魔狼の凶刃が振り下ろされる。
寸でのところで直撃は免れたが、その衝撃で壁に叩きつけられたハピナは、気を失う。
「あの傷が治るのか!」
なおもハピナに追撃をしようとしている魔狼に、ビスタは詰めより、自分に注意を引きつける。
「たたら、ハピナを!!」
そのまま魔狼と槍を交わし、ハピナから遠ざけた。
「わかった!ハピナ、無事かっ!?」
エグゼと房中術を交わし、気を高めさらにわずかとはいえ、日、月、火の大精霊の恩恵を受けているハピナがたった一撃でやられるとは。
「よし、応急処置をすれば大丈夫だ」
しかし、もしエグゼと交わしたハピナでなかったら、今の一撃で即死だったであろう。
「なんなんだこいつはっ!?」
明らかに普通の魔物でも、ましてや造魔でもない。
この力が、混沌。
「霊体に直接攻撃できる手段がないと、こいつは倒せないぞ!」
たたらが叫ぶ。
ここに来るまでに、魔水晶の内在魔力は使い切ったため、簡単に攻撃を仕掛ける術がない。
しかし。
「私はまだ、強くなれる!!」
体に流れる、微弱ながらも強力な力。
それは、大精霊の力。
エグゼと繋がって手にいれた精霊の力を手にいれてた。
「火の大精霊、フィアナよ、私に力を」
その途端に沸き上がる力。
刀身に宿る火の莫大なる加護。
この力なら。
「行ける!」
魔狼に対し、ゆっくりと構えるビスタ。
そう、心には炎をたぎらせて、決してその炎にすべてを委ねてはいけない。
「私は私を超えるのだ!!」
五月雨の如く繰り出される刺突。
それは不可避の連撃。
確かにそれは魔狼を幾度となく貫いた。
そして、今までなら与えられない致命傷を、確かに与えることができたのだ。
「GRAAAAAA!!」
ドウ、と地に付す魔狼は果たして、正しく絶命していた。
雲山霧消する混沌の力。
それは、米粒ほどの大きさのものでしかなかったが、たったそれだけの結晶に常人では倒せないほどの力が宿っていたのだ。
「これが、混沌……。こんなものがミハエルの手の中にあるのか」
たたらは、一通りハピナの手当てを終えると呟く。
「たたらはここで、ハピナを見ていてくれ。
私はこの上を見てくる」
「わかった」
上にあるのは更なる試練か、それとも光の精霊か。
油断なく階上へと進むビスタ。
その先には、中央に光り輝く宝玉が供えられた祭壇があった。
それをなんと表現すればいいのか。
一点の曇りもない光。
「これは……」
『お待ちしておりました、ここまで来られる剛の者よ』
一切の気配を感じさせず、後ろに何者かが立っていた。
(これはっ!?)
実態のない虚影のようなものか。
『私たち光の民は、その宝玉の中に捕らえられています。私たちを助け出してくれるのなら、私たちは力を貸しましょう。しかし』
その瞳は曇りのない鏡のような物。
嘘偽りを言ったのなら、すぐ様看破されることだろう。
『助け出すのは、私たち光の民だけですか?』
この質問は。
そして、その答えは。
すでにエグゼとソウマが答えを出している。
そして、ビスタもその考えに賛同したのだ。
「いや。助け出すのは、闇の軍勢と『両方』だ」
きっぱりと言い放つ。
そう、闇だけでもダメ。
光だけでも不十分。
しかし、その二つを同時に解き放てばまた混沌へ戻ろうとするだろう。
ならば。
「光の民と、闇の軍勢と、我らメリクリウスに力を貸してほしい。我らが肉の身体を貸そう」
そう、肉体という檻に閉じ込めれば、光は光のまま、闇は闇のまま反発することも、一つになる事もないのだ。
そして、欠片で強制的に力を与える訳ではないため、欠片を埋め込まれた者のように、副作用をもたらす訳でもない。
それと同時にメリクリウスのメンバーは光と闇の、強力な力を手に入れられるのだ。
『ならば、闇も救うというのですね?』
「あぁ、そうだ。そして混沌を引き連れこの大陸を脅かす奴らを、一網打尽にするのだ!」
『なるほど……。わかりました。その宝玉を持ち、精霊魔法の使える者ところまで届けてください。そうすれば、私たちの力の使い方がわかるはずです』
そう言うと、光の精霊は再び宝玉の中に戻っていく。
「有り難くお借りします」
ビスタはそう言うと、階下へと戻っていった。
戦力差は見ての通り。
負の感情は時として、マイナス面でしかありえない。
しかし、エグゼはしっかりとたずなを握り、制御する術を心得ていた。
決してその奔流に飲まれず、しかし炎を滾らす薪のようにくべていく。
そして、それが更なる力を引き出していくのだ。
「魔水晶・魔砲台、準備よし!!」
後方から、声が聞こえる。
派手な爆発音と供に、魔法力を伴った砲弾が打ち出される。
それは、魔法力を内包した魔水晶の弾丸だった。
「ばかな、この装備は『クロス・クルセイド』の…っ!」
互いに不干渉の協約を取り交わしたクロス・クルセイド。
それがなぜ!?
「エグゼ殿、話は後だ!我らが誇る魔水晶大隊なら、奴らとも渡り合えるはず!助太刀いたす!!」
「恩に着ます!」
『まさか、クロス・クルセイドが来るとは…。面白いですね…』
実験体にされた獣人たちがエグゼに向けて進軍を開始する。
『こ、ろして…』
『ごんなの、い、やだぁぁぁ』
獣人の口から漏れでるは呪詛。
自分達をこんな体にしたミハエルへの怨念。
それを断ち切るには…。
「こんな方法しかなくて、ごめん」
エグゼは居たたまれない気持ちで剣を振るう。
そう、彼らはミハエルが行った人体実験の被害者なのだ。
ならば、エグゼにできることは、彼らの望みを叶えてやることだけなのだ。
剣閃が走る。
わずか一太刀で、数匹のモンスターが塵となり消えていく。
エグゼが目指すは最奥にいる、トール・ド・ルートのNO.2の元。
それを邪魔するものを一蹴しながら、最短ルートでたどり着く。
それ以外のクロス・クルセイドの兵は、ミクの指示の元、確実に敵を殲滅していく。
しかし、クロス・クルセイドの兵は人間だ。
強大な力を持つ獣人と相対することだけでも脅威なのだ。
さらに敵は混沌の力をも振るっている。
劣勢は明らかだった。
「はあぁあぁぁぁぁっ!!」
舞うように敵を切り裂いていくエグゼ。
その一振りが数匹の敵をなぎ倒し。
その一足が万里をかける。
敵の只中にいて、背後からの敵襲も予知するかの如く、かわし、反撃する。
敵には恐怖という感情がない。
敵には怯むという感情がない。
敵には情けという感情がない。
全てを、ミハエルが奪ったのだ。
だからこそ、エグゼも感情を押し殺してただ、剣を振り続ける。
いつしか、戦場はエグゼだけになっていた。
クロス・クルセイドは魔水晶に蓄えられた魔法力を使いきり、ミクも疲労で倒れた。
しかし、エグゼだけは戦い続けていた。
ただただ、無心で剣を振るう。
そして。
エグゼが参戦してから丸1日。
その場に立っているのはエグゼだけとなっていた。
トール・ド・ルートは壊滅。
光と闇の融合体、混沌にされるという、無残な死を遂げた。
「あいつらは…。名誉ある死をも汚したんだ」
エグゼがつぶやく。
戦士として。武人として。
戦場の中で対等に戦い死んでいく。
殉教にも似た死。
しかし、戦士たるエグゼもわかっていた。
自分の理想のために死ねることがどれほど幸せか。
それらを全て、ミハエルが奪ったのだ。
そして一人立ち尽くすエグゼ。
すでにこの戦さ場に動くものはいない。
エグゼが全て殺したのだから。
あたりは暗くなり、月のみがその場を照らす。
精霊の力を体から離して気がついた。
右目が見えない。
色覚を失った目は、今度は光を失ったのだ。
防衛ラインでは、全ての兵が帰ることなくエグゼを待っていた。
「お帰りなさい、エグゼ」
アーニャがエグゼに抱きつく。
そのシルクのような柔らかな髪を撫でながら、エグゼはソウマの容態を聞く。
「命に別状はありませんが、肉体よりも魂の傷が致命的です」
と、手当てをしてくるれたであろうナターシャとティアラが答える。
「肉体の傷は治るの!でも、でも魂までは妖精の粉でも無理で……」
ティアラは泣いていた。
前回はハピナの母を救えず。
今回もソウマは死の淵に瀕した。
自分の力不足を嘆いているのだろう。
「わかった。とりあえず、ラーズまではみんな、帰ろう」
「では、ワシが一足先にいって、皆を労う準備をしておこう」
そう言ってミクがパタパタと飛んでいく。
「エグゼ様のお傷も見せてくださいませ」
ナターシャが治療小屋にエグゼを連れて行く。
「これは……」
そのたましいは、エグゼとは違った意味で悲惨だった。
魂の所々が、人間の魂ではなく、もっと高次元の魂へと変化しつつあるのだ。
それはこの世にいられぬ存在。
「とりあえず肉体の怪我は、ティアラさんの粉で治りますが、この魂は……」
「やはり、無理かい?」
「すいません、少なくとも私にはできませんわ」
「そうか、なら治せるところだけお願いするよ」
「かしこまりました」
こうして、勝利したはずのメリクリウスは暗いムードの中、凱旋することになった。
今回の戦いで、思い知らされたのだ。
脅威は造魔と神魔。
だけではなくなったのだ。
さらに混沌の力を宿すことができるのだ。
そうなると、魔法の使えないこの大陸で、奴らを一般の兵が倒すことは出来ない。
今回持ち込まれた魔水晶も、全ての兵には行き渡らないだろう。
なにか打開策を練らなければ、これから先エグゼとソウマとミクくらいしか戦えるものはいなくなってしまうのだ。
(光の軍勢と闇の軍勢の力が手に入れば、あるいは……)
エグゼはラーズに戻りながら、ビスタ、たたら、ハピナの三人の吉報を楽しみにしているのだった。
それから2日後。
ようやく治療や被害状況の確認などを終えることが出来たエグゼの前に、一人の女性が立っていた。
それは、魔水晶を装備したクロス・クルセイドの兵の代表だった。
名前をカーナ・エスメラルダと言った。
「この説は助かりました。しかし、クロス・クルセイドと我々メリクリウスは、不可侵条約を互いに結んだと思いますが、なぜ……?」
ソウマとクロス・クルセイドとのTOP会談で、そのように決まり、血判状はこちらも控えていた。
「はい。私たちはクロス・クルセイドの中でも、雇われていた身でした」
つまりは、魔物排斥という理念の元に集った正規兵ではなく、お金を稼ぐことが目的の傭兵団なのだ。
「クロス・クルセイドがほぼ壊滅した今、我々はタダの金食い虫にすぎません。契約を打ち切られました」
女性は朗らかに言うが、その実態は違うであろう。
魔水晶と、さらに魔水晶からなる武器を装備し、さらに切り札といっても過言ではない、魔砲台すら3台も持ってきたのだ。
傭兵というのも嘘でとないが、首という口実の援軍であった。
「助かります!これからもよろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
エグゼはカーナとしっかりと握手を交わしたのだった。
それから1日後。
エグゼの元に、ハピナの帰還の報がもたらされた。
空を飛べるハピナが、たたら、ビスタに先行して、ラーズふ戻ったのである。
「よかった、みんな無事かい?」
「はい、ピンピンしてるっすよ!早速っすが、これが光の宝玉っす」
ハピナが背嚢から、黄金に輝く宝玉を取り出し、エグゼに手渡した。
「これが、光の軍勢の宝玉……。ありがとう」
エグゼは宝玉を手にし、立ち上がる。
「僕はすぐに要塞都市ブリガンダインに行くよ。この街は任せていいかな?ハピナ」
「はい、大丈夫っす!」
「ナターシャを連れて、二人で出かける。何かあったら、すぐにデーモンロードさんに連絡を」
「わかったっす!お気をつけて!」
エグゼとナターシャ、二人は再び要塞都市ブリガンダインに来ていた。
「われわれ悪魔は、精霊とは異なり、この世界に顕現するには、呼び出す魔法力の他に肉の身体が必要になるのです」
デーモンロード宅で小休止をとるエグゼとナターシャ。
そんなおり、デーモンロードが話し始めたことだ。
「肉の器がない場合、召喚者の魔法力を延々と使い続けてしまうのです」
「精霊は呼び出す時だけ魔法力を使って、あとはこの世界にずっといてくれますね」
精霊と悪魔の違い。
しかし肉の身体ではなく、幽体で別次元に存在すると言うところは同じか。
「そうですな、そこが大きな違いであります。我々が受肉する肉の器と言っても、死した獣の肉でもなんでも良いのです。あとは自由に姿を変えられます」
そして、悪魔は還す時も手間がかかると言う。
「基本的に私たちは召喚者の願いを叶えるためにこの世界に受肉しますが、地獄に還る時は、召喚の願いを叶えるか、召喚者が返還するかの2択なのです」
精霊は割と気分屋で、ずっと一緒に旅するものもいれば、用が済んだら自分の意志で還るものもいる。
「そう、我々は自分の意思で還ることができないのです」
そして、デーモンロードたちを召喚した者は先のクーデターで死んでしまったと言う。
「そうした悪魔が各地にいました。そして、クーデター後に正教が広まるに連れ、この大陸にいた悪魔や悪魔と契約した魔女は迫害を受けることになる。
そう、あの呪いの杖の村のように。
「『水の大精霊ミズキ』様は、そんな我々を集めこの街を作ってくださった。それは、今の時のようなことを想定していたのかもしれません」
いつの日か、エグゼが再立ち上がることを予想して、強力な戦力となる悪魔の軍団を集めたのだ。
「この度、闇の軍勢を解放してくださった暁には、我らもその力をメリクリウスのためにお貸ししましょうぞ」
「ありがとうございます!とても心強い」
エグゼは立ち上がる。
「まずは、闇の軍勢の解放を」
「はい、わかりました」
エグゼは出されたお茶を飲み干すと、ナターシャを連れて地獄へと向かうのだった。
地獄を歩くエグゼとナターシャ。
足元はぬかるみ、あちらこちらから怨嗟の声な聞こえてくる。
光の軍勢のは、精霊共々この宝玉に閉じ込められ、全く動けない。
どちらが地獄なのだろうか。
いや、どちらがではない。
どちらも地獄なのだ。
「厄介な……」
目の前に現れたのは、魔獣オルトロス。
武器不能地帯にあってはエグゼも剣は使えない。
しかし、その身に宿りし剣聖の技は冴え渡る。
さらに、ソウマの戦いを間近で見てきたのだ。
ある程度は徒手空拳でも戦えはする。
しかし、魔法力も、ソウマのような気の力も使えないエグゼにはオルトロスを倒す術がない。
ここは戦いを避け先に進むのが懸命だろう。
「なんとか、切り抜けましたね」
ナターシャもよくついて来てくれている。
「もうここからは安全だ」
前回、闇の精霊と出会った場所に来ていた。ここだけはなぜか魔獣が寄り付かない。
「闇の精霊よ、いるか!?」
エグゼが声を張り上げ、闇の精霊に呼びかける。
『……。人間よ。なぜ再びここを訪れた。闇しか見えぬお主らと語らう言葉は、我にはあらん』
「僕たちは、闇の軍勢を解放しに来た。そして、光の軍勢達もだ!」
そう言って、エグゼは懐から光の宝玉を取り出す。
『おぉ、それは……っ!!汝らは、光と闇を分け隔てなく救うというのか!』
「光と闇は表裏一体。どちらが欠けても、この世界は成り立たない存在です」
一瞬の沈黙のあと、何かが弾けるような衝撃があった。
『この先に、闇の軍勢を解放するための試練が待ち受けている。もし解放してくれた暁には、我ら闇の軍勢はそなたらに力を貸そうぞ!』
そして、今まで閉ざされていた、地獄の最奥への道が開かれたのだ。
「必ずや」
短く返事をしたエグゼは、ナターシャを連れて先へと進むのだった。
そこは一言でいえば焦熱。
光の軍勢はコキュートスに匹敵する程の氷の棺に囚われていたという。
ならば、闇はこの灼熱の地獄に閉じ込められたのだ。
「ナターシャ、足元に気をつけて」
「はい、心得ました」
二人は慎重に歩を進める。
この先には、一体何が……?
特に敵襲もなく、エグゼ達は最奥の広間に出る。
しかし、そこは行き止まりだった。
ここに至るまでの道のりば分岐もなく一本道だった。
だとすれば、ここに何かがあるのは明白だった。
「エグゼ様、ここには何も……」
ない、と言いかけて、ナターシャがエグゼを見て固まる。
見えなくなったはずの右目が、赤く染まっていた。
その異様さは人間のものではない。
それはまさしく、精霊と同じものだった。
長いこと精霊の魂と融合していたその結果であった。
しかし、それは皮肉なことに、今ここで役に立ってしまったのだ。
「ミズキ、久しぶり」
「よく、来たわね。光の宝玉も手に入れてくれたみたいだし、感謝するわ。でも」
ミズキはその場を離れようしない。
「私がこの闇の宝玉を守っていないと、奴が来るのよ」
ミズキは何者かから、ここにある闇の宝玉を守っているらしかった。
だからこそ、この場から動くことができないのだ。
しかも、ここは灼熱地獄である。
水の大精霊とは相性が悪く、ミズキもその力を100%使えてはいなかった。
「その、奴とは一体……」
「エグゼ様、何か来ます!」
話をしていたこの場に、何者かがやって来たのだ!
『闇の、宝玉……』
それは爆炎の魔神、イーフリートであった。
『それがあれば、我は……』
「こいつが闇の宝玉を狙っていたのか!」
しかし、この場に置いてエグゼは剣を振るえない。
こんな時に、ソウマのような力があれば……。
「ミズキ、僕と契約できるか?」
「えぇ、少し時間がかかるけど。今はそれしか、突破口はないわね」
莫大な水の加護と、水精の徒手格闘を授けるミズキと契約して融合すれば、エグゼでも素手で敵と戦える。
しかし、契約時は全くの無防備だ。
「エグゼ様、わたくしが暫しの時を稼ぎます。どうか、その間に契約をお願い致します」
そう言って、ナターシャがエグゼとイーフリートとの間に立ち塞がる。
「私も悪魔の端くれ。時間稼ぎくらいできますわ」
そう言って、ナターシャはイーフリートに向かっていく。
「ナターシャ、ありがとう!」
「いきなりだけど、いくわよ、エグゼ」
ミズキと手を合わせた瞬間、エグゼの意識は闇に落ちる。
それは、エグゼですら忘れ去った、遠い記憶。
母に抱かれ、父にあやされた遠い遠い過去。
「この子の未来は一体どうなるのでしょうか」
母が心配そうに寝ているエグゼの頭をなでる。
「なに、心配はいらないさ。我々の子だ」
それを優しく受け止める父。
あぁ、これが家族なのか。
エグゼの心に優しい灯火がともる。
しかし、幸せは長くは続かなかった。
ある日訪れた地獄の名は。
『混沌』
「くそ、混沌の手勢がこんな所にまで!!」
父は剣を片手に、応戦をする。
類稀なる剣術で敵を屠っていく父だが、相手はエネルギー体である。
魔法か精霊の力を用いなければ倒すことはできない。
そして、物量だ。
100からなる混沌は、その絶大なる力と数で父を取り囲む。
「エグゼ、ごめんなさい。私たちは、貴方を守る事が出来なかった」
母は泣きながら呪文を唱える。
それは、転移の魔法。
しかし今はどこに転移させるか、細かく座標指定をしている時間はない。
「さようなら、愛しい子よ」
母は泣きながらその魔法力を解放した。
エグゼが飛ばされたのはエルフの森の入り口。
そして、そこで剣聖ルーシアに拾われるのだ。
「これが貴方の過去……。なぜ混沌は貴方の家を襲ったのかしら」
その問いに答えるものは誰一人いなかった。
「ミズキ」
歪な魂のエグゼと、ミズキが向かい合う。
「こんなにまで精霊化が進んでいるなんて……」
エグゼの傷口を撫でるように、優しく触れるミズキ。
「僕が何者なのかはわからない。でも、今は君の力が必要なんだ」
「Yes,my master」
そして、ミズキとエグゼは融合を始めた。
「ハァ、ハァ……っ!!」
爆炎の魔神イーフリートは追撃の手を休めない。
魔法の使えないこの大陸において、この爆炎の魔神を倒すことのできるものは限られているだろう。
気を使い、魂にまで攻撃を与えられるソウマ。
剣で精霊と融合している時のエグゼ。
精霊の加護を発露させたビスタ。
エンシェントドラゴンの遺伝子すら手に入れた、ミハエルの神魔。
この4人くらいだ。
ナターシャも魔法が使えていれば、勝ち得たかも知れないが、使えない現在攻撃手段はない。
ただ避け、逃げて時間を稼ぐ。
それだけしかできない。
あるいは父のデーモンロードなら、魔法を使わずとも倒せたかも知れなかった。
(非力というのは、歯がゆいものですわね……)
ナターシャも父からの教育は受けてきた。
しかし、まさか自分が魔法の使えない状況下で、このように戦うことなど考えてもいなかったのだ。
護身程度。
そうおもっていた。
しかし、それは真実ナターシャを守る技として、役に立ってはいる。
魔法などとは関係なく、その身自体が炎を纏うイーフリートにとって、この焦熱地獄はまさにうってつけの戦場だ。
この高温はただそこに立っているだけで体力を奪う。
そして限られた足場。
一歩踏み間違えれば、灼熱にその身を焼かれ、骨も残らず絶命するだろう。
「はぁ、はぁ、しつこいとレディに嫌われ、ますわよ?」
しかし、この魔神に言葉は通用するのか。
さらなる猛攻が、ナターシャを襲った。
その時。
イーフリートの炎の拳を受け止める者がいた。
「待たせたね。ありがとう、ナターシャ」
「エグゼ、さま……。契約はできたの、ですね……」
ぐらり、と倒れそうになるナターシャを抱え、エグゼは彼女を安全な場所へと移し、イーフリートに向き直る。
「水精拳」
それこそが、『水の大精霊ミズキ』の得意とする徒手格闘。
両腕には、龍の如く、莫大たる水を称えている。
「水針攻」
針の如く圧縮された、超水量の攻撃。
水とはいえ、それを圧縮し打ち出せばミスリルさえも穿つという。
エグゼの放ったそれはその名の通り、刃となり敵を切り裂く。
しかし。
その肉体自体が炎で出来ているイーフリートは、すぐに再生する。
炎に包まれたこの場所では、イーフリートは無限に再生できるのだ。
「厄介な……」
蹴り、突き、投げ、極める。
急所を狙おうとも、関節を決めようとも、たちどころに回復してみせる炎の魔人。
「エグゼ様、イーフリートには『核』があるはずです!それを破壊すれば、倒すことができるはずです!」
ナターシャが叫ぶ。
「核だって!?しかし、どこにそんな物が……!?」
目を凝らしてみるが、それらしきものは見当たらない。
『エグゼ、右目に集中して!』
それはミズキの声。
今のエグゼは、右目は、精霊と融合していない時は見えていない。
それは、エグゼの魂が精霊に近づいている証拠だ。
『今のあなたの右目なら見えるはず!より精霊よりになった、その目なら!』
皮肉なことに、人間の目では見通せない物を、視力を失った目だけが見ることができるのだ。
「わかった」
エグゼは左目を瞑り、右目だけでイーフリートを見据える。
赤く光る拳大の炎の塊。
眉間にそれを見ることができた。
「そこか!!」
触れれば即死してもおかしくないほどの力と熱を携えた拳を紙一重でかわし、エグゼの渾身の突きがイーフリートの眉間に突き刺さる。
「GYAAAAAAっ!!」
苦しみだしたイーフリートの体から、炎が消えていく。
そして、イーフリートの体は完全に消滅したのだった。
「ふぅ、ナターシャ、助かったよ」
「いえ、無事にミズキ様と契約が出来て良かったですわ」
水分を補給し、しばし休んだナターシャもだいぶ回復したようだ。
「エグゼ様、闇の宝玉を」
「あぁ。これで、光と闇を解放することができる」
闇の宝玉を手にしたエグゼは、要塞都市ブリガンダインへと戻った。
「たしかに、光の宝玉と闇の宝玉、お受けしました」
デーモンロードは恭しくそれを受け取る。
「しかし、解放した後はどうなるんですか?
長いこと光と闇が近くにいると、また混沌に戻ろうとしてしまうのでは……」
光と闇は表裏一体でありなが、元は混沌という一つのエネルギー体であった。
二つに別れはしたが、長時間至近距離にいるた、混沌となり、またこの大陸、いやこの星の脅威となる。
だからこそ、封印したのちも、地下迷宮と霊峰の頂上というかけ離れたところに宝玉として封じられていたのである。
「御心配召されるな。あなた方の戦力となり、さらには混沌に戻さない方法が一つあるのです」
そう言って、デーモンロードは二つの宝玉を祭壇に捧げる。
「我々悪魔が、この世界に顕現する際に、肉体が必要だと言いましたが、光と闇もまた、それと同じなのです」
光と闇のエネルギーに肉の体を与える。
それは、先の戦いでドール・ド・ルートがやっていたことだ。
特に、団長であったトールは、その身に光と闇を宿しながらも、完璧にその力を抑え、また任意で使うこともできたのだ。
そして、その身体能力は格段に上がったのだ。
ミハエルが用いた、神魔に匹敵する程の力を得ていた。
「光と闇、相性があるのでなんとも言えませんが、メリクリウスのメンバーに、軍勢を憑依させます。そうするば、元の混沌に戻ろうとすることはない。しかも、強力な味方となってくれるでしょう」
デーモンロードは一冊の本を手に取りながら、説明をする。
「昔、宇宙からやってきた混沌を追い返した時も、そのようにして戦ったという記述があります」
しかし、それはエグゼの精霊と融合しているようなものではないのか。
ならば、デメリットがある可能性も否定はできない。
「僕は精霊と長く融合しすぎたために、右目の視力を失い、左手も失った。そのような害はないのですか?」
エグゼは右目を抑えながらデーモンロードに問う。
「光と闇の同意が得られなければ、害はあります。エグゼ殿が戦った、あの混合魔獣(キメラ)のように、寿命を縮め、さらにはその身を滅ぼします。しかし、それぞれの精霊からの祝福があれば、そう言った副作用もないでしょう」
それはなんという僥倖か。
前日までの戦いで兵も減り、戦さ場に出なかった者たちが生き残っていた。
ブリガンダインの悪魔や魔女たちの力を借り、人数の問題は解決できた。
そして、兵の質。
まだまだ練兵が必要で、戦場に出れない者も多数いた。
そんな彼らが一気にレベルアップすることが可能なのだ。
こんなに素晴らしいことはない。
「しかし先ほども言った通り、相性があります。光の軍勢としか融合できない者。闇の軍勢としか融合できない者。またはどちらとも融合できない者もいます。それだけはご理解を」
「わかった」
精霊との相性というのは、精霊使いであるエグゼには十分理解できていた。
「では、光と闇、この二つと融合してもいい、という者たちをこのブリガンダインに集めて下さい」
その情報は瞬く間にメリクリウス全体に報告され、数日後にはこのブリガンダインに、2000を超える兵士たちが集まった。
光、闇。
宝玉に封じられた軍勢の数はそれぞれ1000。
ちょうどいい数であろう。
そして、相性を調べたり融合を果たしたりなどを繰り返し、少しずつ兵士たちがレベルアップしていくのがわかった。
これなら、造魔にも勝てる軍団ができるはずだ。
「僕は残念ながら、どちらとも相性は良くなかったみたいだね」
エグゼは肩を竦めるが、大精霊と契約した時の強さは、やはりどの兵よりも群を抜いていた。
「俺がいない間に面白そうなことしやがって!」
激痛を抱えながらも普段通り動くことができるようになったソウマの場合は、意志力が強すぎて、どちらの軍勢も付け入る隙がなかったらしい。
こうして、悪魔、魔女たちの力を借りることができ、さらには軍全体のレベルアップも測れたのだ。
練兵場では、強くなった自分たちの力を試すように、兵士たちの訓練が続いている。
「おーおー!みんな強くなったなぁ!」
練兵場では、ソウマがみんなの訓練を眺めていた。
光とも闇とも相性の悪かった者は、ソウマに気の練り方を教わったりしていた。
もちろん一朝一夕にできるものではないが、続けていけば、それなりの効果はあるそうだ。
「あとは、自信が過信にならないといいけど……」
いきなりのレベルアップで、浮れてしまうものも出てくるかも知れない。
「なに、少ししたらいいイベントを開催しようと思っているよ」
そういうソウマの顔はいつになく真剣であった。
ツクヨミの街では。
「事後処理かぁ……」
街に戻ったビスタが頭を抱えていた。
「壊れた装備の修理に、新たに仲間になった悪魔たちの武器防具……。精霊石はだれか買いに行ってるか?」
たたらも新しい仲間ができて、鍛治で大忙しだ。
「アーニャが行ってくれている!5日後には、頼まれた数が揃うだろう。えーと、足りないのは馬に荷台。
魔砲も動かせるような台車も必要だ」
「私は、鍛治場に戻るからな!」
「あぁ、頼んだ」
ダメだ、これは一人では無理だ。
だれか、有能な秘書でもいないととてもじゃないが回らない。
そう決意して、ビスタは人を探し始めるのだった。
ラーズの街でも同じようなことが起こっていた。
「あぁ~、頭が爆発するっす~」
会長代理のハピナが苦悩している。
「新しい人員が増えました。住居の新築が必要ですわ」
右手にはナターシャ。
「ナダルの村の兵と食料が足りてないのじゃ。あの辺りは魔獣もでるから、兵を2~3人と、バリケードを作るための木材、さらに食糧援助を行うのじゃ!」
「わかってるっすよ~、ちょっと待つっす!まだまえの被害報告も読めてないっすよ!」
「速読の仕方は教えたはずですわ」
「そんな直ぐ、覚えられないっすよ!」
ツクヨミと合わせて、要所であるラーズの街。
この街を治めるのは大変なようだ。
エグゼは自身の執務室で、書類を読んでいた。
それは次に向かう『木の大精霊ネイ』のいるところの情報だ。
「ミトラ、か」
大森林が広がり、神樹ミッドランジェが生えているという、神聖なる森である。
精霊の加護がないと入ることも出来ない巨大な森林である。
そこに、ネイがいる。
エグゼの瞳は、既につぎなる戦いを見据えていた。
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