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嫉妬する話その二
しおりを挟む「俺ちょっと気づいたことあるんだけど」
「なに」
「深見もたぶん無理だと思うなぁ」
「唐突に何を決めつけたの」
俺がニヤニヤしながら話しかけると深見がとても嫌そうな顔をした。最近この顔も結構アリだと思っている。しかし今はその顔を堪能するよりも俺の発見を伝えることを優先した。
「深見俺のこと嘘でも“嫌い”って言える?」
「………………言えない」
だろ──と上機嫌に言った俺の横で何故か深見はショックを受けていた。
「なにがそんなにショックなの」
「俺、嘘とか平気でつけるのに……」
「言うなよ……そんなこと……」
突然のクズ人間カミングアウトに呆れるものの、何やら片手を顔に当てショックを受けている深見が芝居がかって見えて写真に撮りたい衝動に駆られた──というか撮った。
前回の教訓からいつまた深見の顔が見れなくなるかわからないので最近は積極的に撮るようにしている。
俺の深見フォルダには日々写真がたまっていき俺の幸せが増えていく。こんなことならもっと早く撮りためておくんだった。
さっそく先ほど撮ったものを確認していると深見が俺のスマホを指さし「……それさぁ」と渋い顔をして言った。
「それ?」
「今見なくてもいいよね」
「…………深見?」
「違う。それは俺じゃない、スマホだ」
「深見だよ」と画面を見せる。
「いや、スマホだよ」
「スマホだけど深見じゃん」
「俺かもしれないけどスマホだよね」
そんなやり取りをどれだけしただろう──
「あー、もうっ! 俺のこと好きすぎだろっ!」とついに深見がキレた。そして「……でも俺がいないときもそれ見てニヤニヤしてると思うと消せって言えない」と今度は項垂れた。
なんだコイツ、俺のこと好きすぎだろう。
「嫉妬? スマホに嫉妬?」
「俺は無機物に嫉妬なんかしない」
「でも嫉妬してるじゃん、今キレたじゃん」
「俺が嫉妬したのはスマホじゃない」
「じゃあなに」
深見の目が泳ぐ、顔がわずかに赤くなり口を開きかけて閉じた。
俺の手も疼く、自然と笑顔になりスマホを構えてボタンを押した。
「……だから、それやめて」
「レアだったから、つい……」
そう言いながらもすばやく先程の写真を確認した……端的に言って最高だと思う。
思わずスマホに魅入っているとスマホが誰かに奪われた。顔をあげると少し怒った様子の深見が俺を見つめる。
──撮りたい。
この深見も撮りたい、しかしスマホを探すが手元にない。それは被写体の手に渡り、深見は俺のスマホを見て「え…………どんだけ撮ってるの……」とドン引き状態で呟いた。
「なんか……自然と……不思議なことに」
深見が半目で俺を見おろす、その顔はやめて欲しい、撮りたい、手元にない。
そっとスマホに手を伸ばすがその手はけっこうな勢いではたかれた、痛い。
手をさすりながら恨めしげに深見を見るとシャッター音が鳴った。
「俺を撮ってどうする」
「せっかくだから俺も記録を……ぶっ、変な顔」
そう言いながら深見はスマホを見てとても楽しそうに柔らかく微笑んで──
「…………なに」
深見の手からスマホを取り上げてその顔を見つめる。深見は俺を見ると意地悪そうな笑みを浮かべ俺に「わかった?」と聞いた。頷くと俺のスマホが差し出され、それと深見のものを交換する。
───自分に嫉妬した。
無言になった俺に深見が「地味に恥ずかしいだろ」と言った。たしかに恥ずかしい。頭を抱えようとするとシャッター音が鳴った。
「せめてシャッター音消して」
「俺には盗撮の趣味はないから」
「…………消したほうがいい?」
「消さなくてもいいよ、見てたいんでしょ」
「……俺ヤバくない?」
「ちょっとヤバイかもしれないね」
「……どうしたらいい?」
「……嘘でも嫌いって言ってみたら?」
──嘘でも。
「泣きそうなんだけど」
重症だね、と言いながら深見の手元でシャッター音が鳴った。
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