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しおりを挟む「タロウくんっ!無理無理無理ムリだから」
「なんで、初めてなの?」
「なんで俺が経験者だと思ってるの」
「八尋男好きなんだろ」
「そんなこと、んっ……もう、抜いて……」
「…………しょうがないな」
異物が出ていく感覚に思わず変な声が漏れた。それを聞いたタロウくんが捕食者の目で俺を見る………………怖い。
なんでかよくわからないうちに流れるように尻に指を入れられた。俺だけもう何も身に着けておらず、前もすでに一度いかされている。
タロウくんなんか慣れてる。そして大きな誤解をしている。
「コタは──」
さっきから何度も虎太郎は犬であることを伝えようとしているのだが、虎太郎の事を話そうとするとなぜかそれを察知したタロウくんはあらゆる手段で口を塞いでくる。今回はまたキスをされた、深いやつだ。逃げる俺の舌を舌で追いかけながら尻にまた指を入れてくる───しかもさっきより多い。
「……タロウくん…………もうやだ、抜いて……」
「なんで? 気持ちよくない?」
「よくない……」
指が動かされるたびに変な痺れが起きるているのを必死に耐えている。口から変な声も出そうで唇を噛むとそれに気付いたタロウくんが微かに笑って俺の脇腹を撫でた。思わず開いた口から喘ぎ声のような声が漏れる。そこからはもう声を抑えられず、俺の口から聞きたくもないような声が出続ける。
「たろ……もう…………」
もうやめて欲しい──そう言ったつもりだ。指が引き抜かれたのでタロウくんにも通じたのだと思いホッとして大きく息を吐いた。その瞬間指よりも大きなものが入りこんでくる。
「なっ、たろ……や…………」
「なんで、さっき欲しいって言っただろ」
「……言ってな……」
「八尋……きつい、もっと力抜いて」
「できな……」
どうしてこんな事になってるんだ、タロウくん全然人の話聞いてくれないし。
嗚咽があがり涙が溢れてくる。
そんな俺を元凶であるはずのタロウくんは心配そうにのぞきこみ顔を歪めた。
なんで……タロウくんがそんな顔をするんだ。
「八尋、俺のことコタロウだと思っていいから」
「…………コタ……」
呟くとタロウくんが苦しそうな顔をする、なんで……。
手を伸ばし頭を撫でるとタロウくんの顔が近付いてきた、同時に奥まで入ってきて息が詰まる。タロウくんの腰があたる感覚がして全部入ったのだと知る。
耳元で聞こえた「八尋」という声がやけに切ない、こんな時にそんな声を出さないでほしい…………拒絶できない。
*
初めて自分のベッドで寝た。
ひとりではないが抱きしめられているのは窮屈で落ち着く。
とにかく、色々な誤解をとく必要がある気がする。まず俺は男が好きなわけではないし経験者でもない、そして何より虎太郎は犬であり俺の想い人ではない。
しかし、その誤解をといたとしてなんでタロウくんとこんな事になったんだ?
タロウくん、自分を虎太郎だと思っていいとか言ってたけど……。
とりあえず隣にいるので頭を撫でようと手を伸ばす。するとすばやくその腕を掴まれた。タロウくんがまっすぐに俺を見る。
「この手は?」
「あ……ちょっと頭を撫でたいなぁって」
「……それはコタロウのかわりに?」
否定できない、今のは虎太郎のかわりだ。俺が目を泳がすと「確かにかわりにしていいって言ってたけどさぁ」とため息をつかれて──俺の中でなにかがブチ切れた。
「……タロウくん、勝手すぎない?」
「ん?」
「勝手にうち来て、勝手に居座って、なんか勝手に虎太郎目の敵にして、勝手に俺抱いて──なんでっ! 俺なんかした?」
「……え、わかんないの」
「わかんないよ、ちゃんと言ってよ!」
「言ったら……コタロウってやつのこと忘れる?」
「なんで虎太郎忘れないとだめなの。だから虎太郎は──」
まただ、また邪魔をする、キスしようとしてくるタロウくんを両手でガードして何とか「──虎太郎は犬だからっ!」と言い切った。
「……あ?…………いぬ…………」
「実家の犬、チョーーー可愛い」
「……好きって」
「大好きだよ、子犬の頃からずっと飼ってるし、家族だし」
「……お前、犬とキスするの」
「キスするなんて言ってないよ、顔は舐められるけど」
「……そ、そもそもなんで犬に虎太郎なんて名前つけるんだよっ!」
「つけたのは妹だよっ!世話してたのはほとんど俺だけど」
──沈黙が訪れた。
タロウくんはおもむろに身体を起こすと俺の足を掴んで開く、慌てて腕を掴んで阻止する。
「ちょっとタロウくんなにしようとしてるの」
「………………もう一回する」
「しないよ、誤解もとけたし……それにタロウくん、ちょっと顔赤いよ」
「……お前もっと早く言えよ……」
「言おうとしたのことごとく阻止したのタロウくんだよ」
「それよりももっと早くだよっ! 最初に虎太郎に会いたいって言った時に言えばいいだろっ!」
「……タロウくん見て犬の虎太郎思い出してましたなんて言いにくいだろ」
「…………だいたい、なんで俺見て犬思い出さなきゃいけないんだよ。名前が同じだけだろ」
「それだけじゃなくて、ちょっと……似てるんだよ」
「……どこが」
馬鹿っぽいところ──とか言ったらブチ切れるんだろうな……他には──
「可愛いところ……かな」
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