1 / 6
プロローグ:世界の理を壊した
しおりを挟む
街に立ち込める硝煙の匂い。
壊れた数々のビル。
全部、全部私がやった。
…でも、死者はいないはずだ。そのあたりは特に注意しながら壊したのだから。
そして、そんな町を壊した『悪者』である私は『英雄』によって倒された。
ああ、どこから間違えちゃったんだろう。
私への嫌味のように澄みきった空を見上げながらそんなことを考える。
最初からだった気もするしそうじゃない気もする。
...今さらそんなことを考えても意味なんてないのに頭の中では後悔とか、今までの楽しかった思い出が駆け巡っている。
『英雄』によって貫かれた胸の傷からは血が流れ続けている。徐々に体に力が入らなくなり、冷たくなっていくのが自分でもわかる。
「こんな、こんな終わり方があるかよっ!」
悔しそうに握りこぶしを震わせながら目に涙を浮かべて叫ぶ『英雄』。
「うんん、これで…これでいいん…だよ。皆が幸せに、なれる方法は、これしか、無かった…から。だから…さ、笑って」
薄れゆく意識の中、弱々しく首を横に振りながら答える私。
『悪者』が『英雄』によって倒されて世界が平和になる。
なんともいい話ではないか。
これはハッピー・エンド、それで終わりなのだから。
「だったら、だったらよ、お前は、お前はハッピー・エンドを迎えられたのかよっ!」
ギリッと歯ぎしりをしながら悔しそうにそう言う『英雄』。
誰もかれもが幸せになれるなんてこんな世界じゃありえない。
誰かが笑うだけ別の誰かが泣いている。
そんな当たり前で、とても最高な世界なのだから。
なのに、なのにそんなことを言うどこまでもお人好しなそいつに、どこまでも『英雄』なそいつの言葉にすがってしまう。
「死にたく...ないよ...」
心からの叫びをかすれる声で紡ぐ。
ボロボロと涙があふれる。
一度あふれ出した感情は止められない。
「私だって、私だって皆とバカやって、笑って過ごしたいよっ!
──もっと、もっと、皆と一緒にいたいよ…」
子どものように泣きじゃくる私。
「おね…がい。私を…救って…『英雄』」
「ああ、当たり前だ、必ず助ける」
私の懇願に即答で答える『英雄』。そんな『英雄』を見て微笑んでしまう。
強く私の右手を握ってくれる両手に反対側の手を重ねる。
ごめん…ね、君は断れないってわかってるのに…。こんな最低なお願いをした私を許してね。
そして私は──『私のためだけに』世界の理を壊した。
壊れた数々のビル。
全部、全部私がやった。
…でも、死者はいないはずだ。そのあたりは特に注意しながら壊したのだから。
そして、そんな町を壊した『悪者』である私は『英雄』によって倒された。
ああ、どこから間違えちゃったんだろう。
私への嫌味のように澄みきった空を見上げながらそんなことを考える。
最初からだった気もするしそうじゃない気もする。
...今さらそんなことを考えても意味なんてないのに頭の中では後悔とか、今までの楽しかった思い出が駆け巡っている。
『英雄』によって貫かれた胸の傷からは血が流れ続けている。徐々に体に力が入らなくなり、冷たくなっていくのが自分でもわかる。
「こんな、こんな終わり方があるかよっ!」
悔しそうに握りこぶしを震わせながら目に涙を浮かべて叫ぶ『英雄』。
「うんん、これで…これでいいん…だよ。皆が幸せに、なれる方法は、これしか、無かった…から。だから…さ、笑って」
薄れゆく意識の中、弱々しく首を横に振りながら答える私。
『悪者』が『英雄』によって倒されて世界が平和になる。
なんともいい話ではないか。
これはハッピー・エンド、それで終わりなのだから。
「だったら、だったらよ、お前は、お前はハッピー・エンドを迎えられたのかよっ!」
ギリッと歯ぎしりをしながら悔しそうにそう言う『英雄』。
誰もかれもが幸せになれるなんてこんな世界じゃありえない。
誰かが笑うだけ別の誰かが泣いている。
そんな当たり前で、とても最高な世界なのだから。
なのに、なのにそんなことを言うどこまでもお人好しなそいつに、どこまでも『英雄』なそいつの言葉にすがってしまう。
「死にたく...ないよ...」
心からの叫びをかすれる声で紡ぐ。
ボロボロと涙があふれる。
一度あふれ出した感情は止められない。
「私だって、私だって皆とバカやって、笑って過ごしたいよっ!
──もっと、もっと、皆と一緒にいたいよ…」
子どものように泣きじゃくる私。
「おね…がい。私を…救って…『英雄』」
「ああ、当たり前だ、必ず助ける」
私の懇願に即答で答える『英雄』。そんな『英雄』を見て微笑んでしまう。
強く私の右手を握ってくれる両手に反対側の手を重ねる。
ごめん…ね、君は断れないってわかってるのに…。こんな最低なお願いをした私を許してね。
そして私は──『私のためだけに』世界の理を壊した。
10
あなたにおすすめの小説
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる