3 / 6
2話:ずっと──
しおりを挟む
「あっ、舞桜。舞桜の料理、相変わらずおいしいね!」
モグモグと私の作った朝食を美味しそうに食べる昧。
昧はほんとうに美味しそうに食べてくれるから作りがいがあるというものだ。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様です」
きちんと手を合わせてそう言った後、食器を台所に置きにいった。
「舞桜の寮って広いね。いいなぁ」
リビングに戻ってくるなりそんなことを言う。
「四人用の部屋だしね。正直一人だと持て余してるよ」
でも満足している。誰にも邪魔されないし、何よりも実家にいなくていいのだから。
「今更だけど一人で寮を使えてるのって...」
チラリ、と申し訳無さそうに目を合わせてくる。
「そう。そっちの理由」
昧の言いたいことを察したのでそう答える
「そっかぁ。大変...だね」
しゅん、と落ち込む昧。
「大丈夫、慣れてるから」
...そう、慣れてる。何も感じなくなるくらいには。
「そういえば、舞桜は春休み何してたの?」
あからさまに話を変えてくる。
まあ、私的にもそっちのほうが助かるからいいけど。
「特に何もしてないよ。そっちは?」
「私は仕事で忙しかったよ。単位がギリギリがだったから......」
うぅ、と苦しむ昧。
単位ギリギリって...この学校偏差値30切ってるから普通にしてたら大丈夫だと思うんだけどなぁ。
とある意味驚いてしまう。
「そういえばっ!ねぇ舞桜、天狐ちゃんは?天狐ちゃん」
急に目をキラキラとさせて聞いてくる。
「さぁ。その辺にいると思うけど...」
キョロキョロと周りを見回すと見覚えのないコップが目にはいる。
「天狐?出てこないとご飯あげないよ?」
脅すようにそういうと
「きゅきゅ!?」
慌てるような声と共にボフン、と白い小さな煙を上げながらコップが九つの尻尾を持った小さな狐に化ける。
「わ~い!もふもふだ~!」
すぐさま昧が天狐を捕まえて撫でまわす。
天狐、かなり嫌そう...。
天狐は九尾《きゅうび》。
9つの尾を持つ狐《きつね》の妖怪だ。
九尾とは人や物に化けて人を驚かすのが好きなちょっと迷惑な妖怪だ。
身長は肩に乗れるくらい。
本来なら2~3mくらいはあるのだが、化けることでこの大きさになっている。
全身は白い毛で覆われていて尻尾の先だけ赤くなっている。
「天狐、はい。油揚げ」
天狐に好物である油揚げを上げると「きゅきゅ~!!」と喜んで食べ始めた。
相変わらず見ているだけで癒されるほど可愛い。
「ねぇ昧、阿津斗は?」
天狐を撫でられなくなって少しがっかりしていた昧にそう聞く。
ちなみに阿津斗はもう一人の幼馴染み。
「ん~と、一人で行くって言ってたよ」
人差し指を顎に当てながら答える昧。
「そう。分かった」
昔はとても元気な男の子というイメージだったがある事件以降は無口であまり喋らなくなった。表情もあまりなく、周りからは「ロボット」なんて言われている。
阿津斗が変わった理由は分かってる。私のせいだ。私が...。
「舞桜?」
「えっ、あ、ごめん。考え事してた」
昧の言葉で意識が現実に戻る。
「考え事?暗い顔してた気がするけど…大丈夫?」
「本当、鋭いなぁ...」
小声でぼそり、と呟く私。
私が何と言ったのか分からず「?」と首を傾げる昧。
「何でもない。心配してくれてありがとう」
ふるふると首を横に振りながら言う。
「ならいいんだけど...」
心配そうに言う昧。
「昧は、優しいね」
悲しい笑みを浮かべる私に
「うんん!そんなことないよ!私なんかより舞桜の方がよっぽど優しいよ」
と励ましてくれる。
「私は...私は昧が思ってるほど綺麗な人間じゃないよ」
そう、この手は穢れてしまっている。心は凍り付いていて何も感じない。
人形である私は...。
「...ごめん。変なこと言った」
「大丈夫!誰にでも弱音を吐きたくなる時ってあるからね!」
笑顔でそう言ってくれる昧。
あぁ、本当に優しいなぁ。...でも、優しいだけじゃ誰も救えない。
だから、その役割は全て私が引き受ける。
痛いのも苦しいのも、傷つくのも傷つけるのも私一人でいい。
心を、生きる意味をくれた二人のためになら何者にでもなる。
何だってする。
これまでのように、ずっと──
モグモグと私の作った朝食を美味しそうに食べる昧。
昧はほんとうに美味しそうに食べてくれるから作りがいがあるというものだ。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様です」
きちんと手を合わせてそう言った後、食器を台所に置きにいった。
「舞桜の寮って広いね。いいなぁ」
リビングに戻ってくるなりそんなことを言う。
「四人用の部屋だしね。正直一人だと持て余してるよ」
でも満足している。誰にも邪魔されないし、何よりも実家にいなくていいのだから。
「今更だけど一人で寮を使えてるのって...」
チラリ、と申し訳無さそうに目を合わせてくる。
「そう。そっちの理由」
昧の言いたいことを察したのでそう答える
「そっかぁ。大変...だね」
しゅん、と落ち込む昧。
「大丈夫、慣れてるから」
...そう、慣れてる。何も感じなくなるくらいには。
「そういえば、舞桜は春休み何してたの?」
あからさまに話を変えてくる。
まあ、私的にもそっちのほうが助かるからいいけど。
「特に何もしてないよ。そっちは?」
「私は仕事で忙しかったよ。単位がギリギリがだったから......」
うぅ、と苦しむ昧。
単位ギリギリって...この学校偏差値30切ってるから普通にしてたら大丈夫だと思うんだけどなぁ。
とある意味驚いてしまう。
「そういえばっ!ねぇ舞桜、天狐ちゃんは?天狐ちゃん」
急に目をキラキラとさせて聞いてくる。
「さぁ。その辺にいると思うけど...」
キョロキョロと周りを見回すと見覚えのないコップが目にはいる。
「天狐?出てこないとご飯あげないよ?」
脅すようにそういうと
「きゅきゅ!?」
慌てるような声と共にボフン、と白い小さな煙を上げながらコップが九つの尻尾を持った小さな狐に化ける。
「わ~い!もふもふだ~!」
すぐさま昧が天狐を捕まえて撫でまわす。
天狐、かなり嫌そう...。
天狐は九尾《きゅうび》。
9つの尾を持つ狐《きつね》の妖怪だ。
九尾とは人や物に化けて人を驚かすのが好きなちょっと迷惑な妖怪だ。
身長は肩に乗れるくらい。
本来なら2~3mくらいはあるのだが、化けることでこの大きさになっている。
全身は白い毛で覆われていて尻尾の先だけ赤くなっている。
「天狐、はい。油揚げ」
天狐に好物である油揚げを上げると「きゅきゅ~!!」と喜んで食べ始めた。
相変わらず見ているだけで癒されるほど可愛い。
「ねぇ昧、阿津斗は?」
天狐を撫でられなくなって少しがっかりしていた昧にそう聞く。
ちなみに阿津斗はもう一人の幼馴染み。
「ん~と、一人で行くって言ってたよ」
人差し指を顎に当てながら答える昧。
「そう。分かった」
昔はとても元気な男の子というイメージだったがある事件以降は無口であまり喋らなくなった。表情もあまりなく、周りからは「ロボット」なんて言われている。
阿津斗が変わった理由は分かってる。私のせいだ。私が...。
「舞桜?」
「えっ、あ、ごめん。考え事してた」
昧の言葉で意識が現実に戻る。
「考え事?暗い顔してた気がするけど…大丈夫?」
「本当、鋭いなぁ...」
小声でぼそり、と呟く私。
私が何と言ったのか分からず「?」と首を傾げる昧。
「何でもない。心配してくれてありがとう」
ふるふると首を横に振りながら言う。
「ならいいんだけど...」
心配そうに言う昧。
「昧は、優しいね」
悲しい笑みを浮かべる私に
「うんん!そんなことないよ!私なんかより舞桜の方がよっぽど優しいよ」
と励ましてくれる。
「私は...私は昧が思ってるほど綺麗な人間じゃないよ」
そう、この手は穢れてしまっている。心は凍り付いていて何も感じない。
人形である私は...。
「...ごめん。変なこと言った」
「大丈夫!誰にでも弱音を吐きたくなる時ってあるからね!」
笑顔でそう言ってくれる昧。
あぁ、本当に優しいなぁ。...でも、優しいだけじゃ誰も救えない。
だから、その役割は全て私が引き受ける。
痛いのも苦しいのも、傷つくのも傷つけるのも私一人でいい。
心を、生きる意味をくれた二人のためになら何者にでもなる。
何だってする。
これまでのように、ずっと──
0
あなたにおすすめの小説
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる