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お忍びしたいです!
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「いつのまに、そんなに仲良くなったんだ?」
「私とミントのことかしら?」
「滅相もない!何故こんな……」
「「こんな?」」
私とセプトが同時にミントへ睨みと共に言葉を発すると、カインが笑う。
「息ぴったり!」
「……そんなこと、ないわよ!それより、ミントは隣国のこともよく知っているの?」
「よくは知りませんけど、風の噂程度のことなら、街をぶらつけばわかりますよ!」
「街を?いいな……私も行きたい!」
「ビアンカ様も行けばいいじゃないですか?カインがいれば、いいでしょ?」
「……カインがいればいいの?」
「ダメ!ビアンカは城から出たらダメ!」
「カインがいればいいんでしょ?ねぇ、カイン!」
「まぁ……一緒に出掛けますか?」
「行きたい!お忍びしたいです!」
私が手をあげ、窓際からカインのところまで飛んできて、お願い!って言っていると、セプトがご機嫌斜めな雰囲気だ。
「そんなに気になるなら、一緒に行きましょ!それなら、いいでしょ?」
「……まぁ、それなら」
「じゃあ、セプトが時間あるときにお願いね!きっとだからね!」
まさかまさかの展開で、城の外に行けることになった。嬉しくて思わず顔が緩む。
「カインには、我儘をいうのに……まったく……」
「セプトも言って欲しいの?」
「当たり前だ。他の男にお願いなんて甘えた声を出されてたまるか!」
「セプト様は、変わられましたね?」
「どういうこと?カイン」
「来るものこ……」
「カインっ!」
慌てるセプトは、カインの言葉を遮ってしまった。カインはこういいたかったのだろう。『去る者は追わず来るもの拒まず』と。
「それだけ、ビアンカ様を大事にしていただけるなら、いいことではないですか?私としましても、ビアンカ様からは、学ばせていただくことが多いので……セプト殿下が、何かよからぬことをするのではないかと、正直ヒヤヒヤしているのですよ!」
ミントの口から出た言葉が、何よりも強烈だった。セプト……と、肩に手を置くと、左手でその手の上に重ねた。
「何があっても離さないから大丈夫。嫌われそうなことは……なるべく、しないように努力はします」
そんなことをいうセプトにみなが目を丸くして驚く。私以外は。
ここ数ヶ月一緒にいて、とても大事にしてくれるセプトしか知らない私は、鳥籠の外でどんなことをしていようとわからなかった。
だから、今のセプト、今後のセプトを大切にしていこうと決めたのだから、その言葉は、十分嬉しい言葉だ。
「嫌われるようなことって、どんなことかしら?元々、嫌いからスタートしている私たちの関係ですもの。お互い歩み寄る努力は、これからもしていきましょうね?」
ふふっと笑うと、当たり前だと返ってくる。もちろん、今までは当たり前ではなかったらしいので、みながセプトの常識が変わったことを好ましく想っているようだ。
「それより、どんな街並みなのかしら?」
「なんの変哲もない街並みだな。可もなく不可もなく、国民が普通に生活している。ただ、それだけだ」
「セプトたちにはそうでも、私は初めて行くのだもの!心躍らせてもいいじゃない!」
少々膨れた顔をすると、ニーアが話に入って来た。
「差し出がましいのですが、ビアンカ様のお忍び用の服がございません」
「そういえば、用意されてるのは、わりとしっかりしたドレスか、部屋着しかないわね」
「用意させよう。出かけるまでには、日程調整が必要だから、それまでに有ればいいだろ?早い段階で渡すと鳥籠からすっ飛んでいってしまいそうだ」
「可愛らしい鳥じゃないですものね!」
絶妙な掛け合いをしていたが、ニーアの服を借りようとしていた私へセプトが先に釘を打つ。
仕方がないので、しばらく大人しく待っていることにした。
「お忍び用の服は、どんなものがいいですか?」
「そうね……ヒラヒラしてなくて、動きやすいの。靴もペタンコのものがいいのだけど……後はニーアに任せるわ!」
「俺じゃなく、ニーアに?」
「えっ?普通、そうじゃないの?」
「いや、お金出すのは俺だから、てっきり、選ばせてもらえるのかと……」
「なるほど……でも、ニーアの方が、センスが良さそうだから……ねぇ?そう思わない?」
微妙な顔をする男性陣からは、一言も発せられることはなかった。
もぅ!と言えば、慌てるニーア。
「殿下に選んでいただきましょう!殿下との色味も合わせないといけませんから!」
「そう?ニーアがそれで、いいなら……セプトが選んでもいいよ?くれぐれもヒラヒラキラキラはやめてね!外を歩くんだから!」
「わかっている。これでも、街へ出歩いていることもあるんだ。それくらいの心得はある」
本当かなぁ?と疑う言葉をぐっと飲み込み、お任せします!と微笑んだ。
これで、城の外へお出かけできるんだと思うと、なんだか嬉しい。
鳥籠から、ずっと出られないと思っていたので、こんなご褒美があるとは……思いもしなかった。
「とっても、楽しみね!」
「あぁ、早々に日程を決めてくる」
「うん、よろしくお願いします」
「日程と言えば、聖女についての公式な発表をするんだが、何か希望があるか?」
「うーん、私って、どうしても聖女じゃないとダメ?」
「聖女じゃないとダメ。もし、俺に万が一があったとき、聖女という肩書きがビアンカを守る」
「万が一なんて、あっちゃダメだよ!」
「いや、あったらダメでも、最悪は考えておくべきなのは普通だろ?まぁ、ビアンカを残して、やすやすと死んだりはしないけどさ」
当たり前よ!と叱ると、みながそんな私を見て笑う。
「なんで笑うのよ!」
「二人のやり取りが、微笑ましいなって……」
「セプト様も愛されているなって」
「殿下は、死んでも死ねませんね!」
三者三様言いたいことを言う。自分では意識していなかったので、そんなふうに言われると恥ずかしくなった。
照れ隠しにセプトの背中をバンッ!と叩いて、セプトのせいで笑われたわよ!というと、平和でいいじゃないか……いてて……と呻くのである。
「私とミントのことかしら?」
「滅相もない!何故こんな……」
「「こんな?」」
私とセプトが同時にミントへ睨みと共に言葉を発すると、カインが笑う。
「息ぴったり!」
「……そんなこと、ないわよ!それより、ミントは隣国のこともよく知っているの?」
「よくは知りませんけど、風の噂程度のことなら、街をぶらつけばわかりますよ!」
「街を?いいな……私も行きたい!」
「ビアンカ様も行けばいいじゃないですか?カインがいれば、いいでしょ?」
「……カインがいればいいの?」
「ダメ!ビアンカは城から出たらダメ!」
「カインがいればいいんでしょ?ねぇ、カイン!」
「まぁ……一緒に出掛けますか?」
「行きたい!お忍びしたいです!」
私が手をあげ、窓際からカインのところまで飛んできて、お願い!って言っていると、セプトがご機嫌斜めな雰囲気だ。
「そんなに気になるなら、一緒に行きましょ!それなら、いいでしょ?」
「……まぁ、それなら」
「じゃあ、セプトが時間あるときにお願いね!きっとだからね!」
まさかまさかの展開で、城の外に行けることになった。嬉しくて思わず顔が緩む。
「カインには、我儘をいうのに……まったく……」
「セプトも言って欲しいの?」
「当たり前だ。他の男にお願いなんて甘えた声を出されてたまるか!」
「セプト様は、変わられましたね?」
「どういうこと?カイン」
「来るものこ……」
「カインっ!」
慌てるセプトは、カインの言葉を遮ってしまった。カインはこういいたかったのだろう。『去る者は追わず来るもの拒まず』と。
「それだけ、ビアンカ様を大事にしていただけるなら、いいことではないですか?私としましても、ビアンカ様からは、学ばせていただくことが多いので……セプト殿下が、何かよからぬことをするのではないかと、正直ヒヤヒヤしているのですよ!」
ミントの口から出た言葉が、何よりも強烈だった。セプト……と、肩に手を置くと、左手でその手の上に重ねた。
「何があっても離さないから大丈夫。嫌われそうなことは……なるべく、しないように努力はします」
そんなことをいうセプトにみなが目を丸くして驚く。私以外は。
ここ数ヶ月一緒にいて、とても大事にしてくれるセプトしか知らない私は、鳥籠の外でどんなことをしていようとわからなかった。
だから、今のセプト、今後のセプトを大切にしていこうと決めたのだから、その言葉は、十分嬉しい言葉だ。
「嫌われるようなことって、どんなことかしら?元々、嫌いからスタートしている私たちの関係ですもの。お互い歩み寄る努力は、これからもしていきましょうね?」
ふふっと笑うと、当たり前だと返ってくる。もちろん、今までは当たり前ではなかったらしいので、みながセプトの常識が変わったことを好ましく想っているようだ。
「それより、どんな街並みなのかしら?」
「なんの変哲もない街並みだな。可もなく不可もなく、国民が普通に生活している。ただ、それだけだ」
「セプトたちにはそうでも、私は初めて行くのだもの!心躍らせてもいいじゃない!」
少々膨れた顔をすると、ニーアが話に入って来た。
「差し出がましいのですが、ビアンカ様のお忍び用の服がございません」
「そういえば、用意されてるのは、わりとしっかりしたドレスか、部屋着しかないわね」
「用意させよう。出かけるまでには、日程調整が必要だから、それまでに有ればいいだろ?早い段階で渡すと鳥籠からすっ飛んでいってしまいそうだ」
「可愛らしい鳥じゃないですものね!」
絶妙な掛け合いをしていたが、ニーアの服を借りようとしていた私へセプトが先に釘を打つ。
仕方がないので、しばらく大人しく待っていることにした。
「お忍び用の服は、どんなものがいいですか?」
「そうね……ヒラヒラしてなくて、動きやすいの。靴もペタンコのものがいいのだけど……後はニーアに任せるわ!」
「俺じゃなく、ニーアに?」
「えっ?普通、そうじゃないの?」
「いや、お金出すのは俺だから、てっきり、選ばせてもらえるのかと……」
「なるほど……でも、ニーアの方が、センスが良さそうだから……ねぇ?そう思わない?」
微妙な顔をする男性陣からは、一言も発せられることはなかった。
もぅ!と言えば、慌てるニーア。
「殿下に選んでいただきましょう!殿下との色味も合わせないといけませんから!」
「そう?ニーアがそれで、いいなら……セプトが選んでもいいよ?くれぐれもヒラヒラキラキラはやめてね!外を歩くんだから!」
「わかっている。これでも、街へ出歩いていることもあるんだ。それくらいの心得はある」
本当かなぁ?と疑う言葉をぐっと飲み込み、お任せします!と微笑んだ。
これで、城の外へお出かけできるんだと思うと、なんだか嬉しい。
鳥籠から、ずっと出られないと思っていたので、こんなご褒美があるとは……思いもしなかった。
「とっても、楽しみね!」
「あぁ、早々に日程を決めてくる」
「うん、よろしくお願いします」
「日程と言えば、聖女についての公式な発表をするんだが、何か希望があるか?」
「うーん、私って、どうしても聖女じゃないとダメ?」
「聖女じゃないとダメ。もし、俺に万が一があったとき、聖女という肩書きがビアンカを守る」
「万が一なんて、あっちゃダメだよ!」
「いや、あったらダメでも、最悪は考えておくべきなのは普通だろ?まぁ、ビアンカを残して、やすやすと死んだりはしないけどさ」
当たり前よ!と叱ると、みながそんな私を見て笑う。
「なんで笑うのよ!」
「二人のやり取りが、微笑ましいなって……」
「セプト様も愛されているなって」
「殿下は、死んでも死ねませんね!」
三者三様言いたいことを言う。自分では意識していなかったので、そんなふうに言われると恥ずかしくなった。
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