乙女ゲームに転生したモブの僕は最悪ルート(ハピエン)に爆進した悪役令嬢の義理の兄になったので、可愛い義妹を溺愛したい!

悠月 星花

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第26話 ……絶対、大変になるやつだ。今まで以上に。

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 屋敷に戻ると、僕たちを待っていたと執事が執務室へやって来た。王宮への日産が休みだということで、少し遠慮をしてくれていたようだが、ティーリング公爵家からの招待状ということだったので、後回しにせず、渡してくれたようだ。
 中身は2通の手紙となっていた。1通は養父からの、もう1通はアルメリアからのものだ。

「これは、養父上の分から読まないといけないんだよな。アリアからの手紙が、早く読みたい」
「アルメリアお嬢様の手紙ならすぐに読めるでしょう。公爵の手紙は、簡潔ですから」
「書かれた内容が簡潔だからって、それが本当に簡単なことだったことなんて、1度もないんだよなぁ……」

 封も開けず、手元で遊びながら、養父らしい整った字を睨む。

 ……今度は、どんな難題を吹っ掛けてくるんだ?

 持っていても仕方がないので、グレンに封を開けてもらい手紙の中身を確認する。内容は……簡素。我が家にきて、アルメリアとの婚約をまとめろとのこと。
 大きくため息をついた。これ以上吐き出せないというほど、体から酸素をだ。

「公爵はなんと?」
「アリアとの婚約を早々にまとめろだって。養父が命令したら、有無を言わさないだろうけど、僕にきちんとアリアと向き合えとくれたチャンスなんだろうな」

 読んだ手紙を封筒に戻し、もう1通に手を伸ばした。少し分厚いその手紙は、封を開けると、招待状が同封されていた。
 手紙を読む前に、封が切られた招待状に目を通す。

 ……バカな弟が出した招待状なんて、今すぐ破り捨ててやりたい。アリアを侮辱して、ただで済むと思うなよ?

 招待状に同封されていたアルメリア宛のレオナルドからの手紙をクシャッと思わず握りつぶした。

「表情が怖いですよ? アルメリアお嬢様からのお手紙ではなかったのですか?」
「そうだが、今、潰したのは、レオナルドからのメアリーとの婚約パーティーの招待状だった。わざわざ、アリアを侮辱するような言葉を使ってあったから、握りつぶしてやったまでだ」
「それはそれは。ですが、クシャクシャにしてしまったら、当日、会場に入れませんから。ちなみになんと書いてあったのですか?」
「アリアのことを第二妃にならしてやる、高額な慰謝料を請求したことを謝るなら水に流してやると書かれていた。わかっていないようだな? 今、自分が、どれほど、愚かしいことをしているのか!」

「アルメリアお嬢様のこととなると……」と、グレンはため息をつき、お茶をコトリと置いてくれた。気持ちを落ち着かせるために、一口口に含ませる。

「アリアの方は、健気に婚約解消をする日にエスコートを頼むと言ってきている。それは、もちろん快諾だ。夜会の余興のひとつとして、レオナルドはアリアのことを見世物にする魂胆が見えてくるが、そんなもの、アリアなら跳ねのけてやれるさ」
「アルメリアお嬢様の衣装はどうされるのですか?」
「屋敷を出る前に、すでに注文したものがある。アリアによく似合うはずだ」
「あの日にそこまでのご用意をされていたのですね! さすが、ジャスティス様です」
「予定外のことも多いけどな……夜会は10日後。1度、屋敷へ戻れと養父上からの要望もある5日後に伺うとを連絡しておいてくれ」

「かしこまりました」とグレンが言ったとき、来客がきたようだ。

「騒々しく、なりそうですね……」
「そう嫌ってやるなって。昨日も話したけど、悪いやつじゃなかった。ちょっと、サボり癖がってくらいで、根は真面目だと思う」

 大きくため息をつき、出迎えるために扉の前にグレンが立つ。ノックがされたので、頷けば扉を開いた。
 そこには、意志の強そうなアイスブルーの瞳が、こちらを見ている。

「……伝言を受け取り、はせ参じました。あのっ!」
「どうかしたか? 親衛隊長ジークハルト」
「本当によかったのですか?」
「自ら望んでおいて? 不都合はないさ。気に入ったんだから。今日は辞令がないから……明日以降の仕事になるが……」
「……そういうことではなくて、もっと……もっと、すごい人がいるはずです!」
「あぁ、そういうこと? いいじゃないか。魔王の親衛隊長を代々していた家系なんだろ? だったら、僕のことも理解してもらいやすい。例えば、少し変な習慣を押し付けたりしたとしても、ジークなら何も言わないだろう?」

 手に握っている小箱。それは、僕がジークハルトに送ったピアスだった。ジークハルトに似合うかどうかは少し考えたが……、僕の所有物としてなら、目に見えるところにあった方がいい。

「これの、これのことですか?」
「あぁ、そうだ。この国にはない風習だろう? 昨日、魔王に関する書物を読ませてもらって実感したよ。僕は、魔法を使えるわけじゃない」
「「えっ?」」

 グレンとジークハルトが同時に驚き、こちらの方が困り顔をしてしまった。
 コンコンとノックの音が再度聞こえてきたので、入室を許可する。

「やぁ、マリアンヌ」
「ジャスティス様! 再度、お呼びいただき、光栄ですわ!」
「君たちも悪かったね、呼び出してしまって……」
「何を言っている。ジャスの文官となったのだから、いつでも呼んでくれて構わない」
「……これは?」

 グレンが部屋に入って来たマリアンヌ、アーロン、サティアを見て、固まってしまう。

「見た目が女性を側に置くことは、少し考えてしまったんだけどね? 社交界の華は、情報通だから手放せないよね」
「まぁ、お上手ねっ! いくら褒めたって、私があの方への恋慕は変わりませんよ?」
「もちろん。僕だって、アリア以外の女性を近くになんて、ごめんだよ」
「社交界きっての、モテ男がよく言いますこと。壁の花に徹する? 令嬢に囲まれて抜け出せないだけではなくて?」
「よく回る口だね?」
「それが、私の武器でしてよ?」

 オホホと笑うマリアンヌにため息をついた。貴族の中で、唯一親しい女性の友人としておこう。お互い、叶わない恋をしていて、もし、30歳までに婚姻できなければ、縁を結ぶ約束をしていたのだった。

「じゃあ、揃ったことで。マリアンヌには、まだ……」
「第一王子の地位に戻られるのを発表なさるのですよね? まさか、あの方の甥にあたるだなんて……正直、聞いたときは驚きましたけど、その才は、本物だと思っていましたわ!」

 ニッコリ笑うマリアンヌは、どこから仕入れてきたのか、朝の話も含め状況を知っているようだった。今からの説明は、まだ、何も聞かされていない、男性陣への説明となりそうである。

「はぁ、これで……約束は反故ですわね。正々堂々と、アルメリア様への求婚ができるというもの。あの下衆なレオナルド様から救いだして差し上げられるのですね!」

 うっとりしているマリアンヌとは別に、アーロン、ジークハルト、サティアは、ドン引きである。グレンは、公爵家の内情を知っているので、特に何も言わなかった。

「……マリアンヌ、少し、僕の話を聞いてほしいんだけど、いいかな? 話しても」
「えぇ、もちろんですわ! 魔王様」
「……どこまで知っているんだか」

 五人を前に大きくため息をついた。客用のソファをみなに勧め、グレンが用意してくれたお茶を飲む。

 ……絶対、大変になるやつだ。今まで以上に。

 一息入れたところで、今後のことを話しあうことにした。
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