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思っていたより重かった?
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「これが、姫さんがもらった銃?俺、あんまり見てなかったから、触ってもいい?」
「もちろんよ。銃弾は入っていないから、大丈夫」
ウィルは、けがをしていない右手で、銃を持つと「結構な重さがあるんだな」と呟いた。
「思っていたより重かった?」
「あぁ、重い。俺は、もう少し、軽いのかと」
「軽いのもあるわよ。これは、皇帝に献上されたものだから、性能もさながら、装飾もある。その分、兵が使うものより、多少は重くなっているわ。暴発させないために、工夫もあるようだし」
「なるほどな。そういえば、女性も銃を護身用に持っているものがいるって聞いたけど?」
窓に向かって、銃口を向けて引き金を引く真似をする。ウィルは体を鍛えているので、持っていても重みがあっても安定している。
「……ワイズが持っていたのは、もう少し小さかった気がするな」
「気がするじゃなくて、小さかったわよ。ジャケットに収まるくらいのものじゃないといけないから」
「……なるほど。これは、確かに、目につくほど大きい。装飾の一種と言われても頷けるほど、綺麗な文様が入っている」
ウィルが小箱へ戻そうとしたところ、セバスが受けてくれた。セバスが構えるには、少々重いだろうなと考えていたので、声をかけた。
「セバス、さっきのウィルと同じように銃を撃つ真似をしてみてくれる?」
「わかりました。こうでいいですか?」
先ほどのウィルと同じように、銃口を窓に向けると、最初は真っすぐ向いていた銃身もだんだんと下を向いていく。片手で持っていたので、かなりの重みを感じているようだ。
「セバス、銃身が下がってきている。もっと、上に向けないと、撃っても当たらないぞ?」
「わかっているけど、片手じゃ、とてもじゃないけど、僕には無理だ」
「重いの?」
「ナタリーも持ってみるといいよ。見た目と違って、かなり重いから」
セバスはナタリーに銃を渡すと、ナタリーも二人と同じように窓に向かって銃をむけようとした。
最初、片手で持ち上げようとしたが、ナタリーの細腕では難しいようで、結局、両手で銃を持つ。それでも、グラグラと銃身がするので、私が後ろからナタリーを支えた。
「アンナリーゼ様」
「ナタリーには重いわね」
「……はい。悔しいですが、私には、難しいですね」
「持つだけならまだしも、銃を撃つとなると、衝撃もあるわ。撃ちなれていなければ、後ろに弾き飛ばされることもあるから……」
そう言って、ナタリーから銃を受け取る。私は、ソファから立ち上がり、みなと同じように、窓に向かって銃口を向ける。
「さすが、姫さん。伊達に剣を振ってるだけはあるな」
「それは褒めているのかしら?」
「褒めているに決まっているだろう?成人男性であるセバスでさえ、銃口を窓に向け続けることは難しいんだから」
「ただ、持って、目標に向けて、銃口を向けるくらいなら、できるけど……撃つとなると、別物よ。たぶん、私は、この衝撃に耐えられるかは疑問だわ」
ソファにすとんと座り、入っていた小箱へと銃をしまう。銃の管理はセバスに任せることになり、私たちは、それぞれ、感想を言い合った。
量産されることへの懸念は、共通認識のようだ。
「インゼロ帝国を出る前に、小型の銃を1丁手に入れましょう。領地内外を飛び回るナタリーの護身用に」
「アンナリーゼ様、それは……」
「いざというときに、必要だと思うだけよ。剣やナイフで立ち向かうことができなくても、銃ならということね。ただし、訓練は必要よ?」
「……訓練はわかるのですが、やはり、ウィルの怪我を見たあとだと、怖く感じます」
「それが、普通の感想だと思うわ。その恐怖を忘れてほしくはない。剣を取ること、銃を持つこと……それは、命を奪う可能性があることですもの。もちろん、命を取られる可能性もあるわね。でも、身を守ることも考えてほしい」
「……女性でも扱える小型の銃の話は、僕も聞きました。この国でなら、簡単に手にすることができるとか。あまり、ローズディアに持ち込みたい代物ではありませんが……」
「ナタリーの身のためと、今後の研究のために、手に入れておく必要があるわね。屋敷と街へ出ただけだった一昨日までと、昨日、夜会で見聞きした情報を得た今では、考え方を変えなくてはいけない。約束事があったとしても、それがいつまでも続くことではないということは、書面に記載さてた文言を読めば、わかるでしょ?」
セバスの方に視線を向けると、頷いている。皇帝から提案があり、私の生きている限りは、三国への手出しはしないというものの、私の命の期限があることを知っている三人にとって、良い知らせと悪い知らせが同時にあるようなものだ。
「そういえば、宰相は、その密約を書状にして持ってきてくれたのか?」
「えぇ、そうよ。今から、その話をしようと思って、ウィルにもこっちの部屋へ来てもらったの」
「……やっぱり、さっきの会談に、俺も入っておけばよかった」
「ダメよ。けが人がピンピンしているところを見られては、取れるものも取れなくなるわ」
私がウィルに目配せすれば、大きなため息をついて「そうだった」とだけ呟いた。
「もちろんよ。銃弾は入っていないから、大丈夫」
ウィルは、けがをしていない右手で、銃を持つと「結構な重さがあるんだな」と呟いた。
「思っていたより重かった?」
「あぁ、重い。俺は、もう少し、軽いのかと」
「軽いのもあるわよ。これは、皇帝に献上されたものだから、性能もさながら、装飾もある。その分、兵が使うものより、多少は重くなっているわ。暴発させないために、工夫もあるようだし」
「なるほどな。そういえば、女性も銃を護身用に持っているものがいるって聞いたけど?」
窓に向かって、銃口を向けて引き金を引く真似をする。ウィルは体を鍛えているので、持っていても重みがあっても安定している。
「……ワイズが持っていたのは、もう少し小さかった気がするな」
「気がするじゃなくて、小さかったわよ。ジャケットに収まるくらいのものじゃないといけないから」
「……なるほど。これは、確かに、目につくほど大きい。装飾の一種と言われても頷けるほど、綺麗な文様が入っている」
ウィルが小箱へ戻そうとしたところ、セバスが受けてくれた。セバスが構えるには、少々重いだろうなと考えていたので、声をかけた。
「セバス、さっきのウィルと同じように銃を撃つ真似をしてみてくれる?」
「わかりました。こうでいいですか?」
先ほどのウィルと同じように、銃口を窓に向けると、最初は真っすぐ向いていた銃身もだんだんと下を向いていく。片手で持っていたので、かなりの重みを感じているようだ。
「セバス、銃身が下がってきている。もっと、上に向けないと、撃っても当たらないぞ?」
「わかっているけど、片手じゃ、とてもじゃないけど、僕には無理だ」
「重いの?」
「ナタリーも持ってみるといいよ。見た目と違って、かなり重いから」
セバスはナタリーに銃を渡すと、ナタリーも二人と同じように窓に向かって銃をむけようとした。
最初、片手で持ち上げようとしたが、ナタリーの細腕では難しいようで、結局、両手で銃を持つ。それでも、グラグラと銃身がするので、私が後ろからナタリーを支えた。
「アンナリーゼ様」
「ナタリーには重いわね」
「……はい。悔しいですが、私には、難しいですね」
「持つだけならまだしも、銃を撃つとなると、衝撃もあるわ。撃ちなれていなければ、後ろに弾き飛ばされることもあるから……」
そう言って、ナタリーから銃を受け取る。私は、ソファから立ち上がり、みなと同じように、窓に向かって銃口を向ける。
「さすが、姫さん。伊達に剣を振ってるだけはあるな」
「それは褒めているのかしら?」
「褒めているに決まっているだろう?成人男性であるセバスでさえ、銃口を窓に向け続けることは難しいんだから」
「ただ、持って、目標に向けて、銃口を向けるくらいなら、できるけど……撃つとなると、別物よ。たぶん、私は、この衝撃に耐えられるかは疑問だわ」
ソファにすとんと座り、入っていた小箱へと銃をしまう。銃の管理はセバスに任せることになり、私たちは、それぞれ、感想を言い合った。
量産されることへの懸念は、共通認識のようだ。
「インゼロ帝国を出る前に、小型の銃を1丁手に入れましょう。領地内外を飛び回るナタリーの護身用に」
「アンナリーゼ様、それは……」
「いざというときに、必要だと思うだけよ。剣やナイフで立ち向かうことができなくても、銃ならということね。ただし、訓練は必要よ?」
「……訓練はわかるのですが、やはり、ウィルの怪我を見たあとだと、怖く感じます」
「それが、普通の感想だと思うわ。その恐怖を忘れてほしくはない。剣を取ること、銃を持つこと……それは、命を奪う可能性があることですもの。もちろん、命を取られる可能性もあるわね。でも、身を守ることも考えてほしい」
「……女性でも扱える小型の銃の話は、僕も聞きました。この国でなら、簡単に手にすることができるとか。あまり、ローズディアに持ち込みたい代物ではありませんが……」
「ナタリーの身のためと、今後の研究のために、手に入れておく必要があるわね。屋敷と街へ出ただけだった一昨日までと、昨日、夜会で見聞きした情報を得た今では、考え方を変えなくてはいけない。約束事があったとしても、それがいつまでも続くことではないということは、書面に記載さてた文言を読めば、わかるでしょ?」
セバスの方に視線を向けると、頷いている。皇帝から提案があり、私の生きている限りは、三国への手出しはしないというものの、私の命の期限があることを知っている三人にとって、良い知らせと悪い知らせが同時にあるようなものだ。
「そういえば、宰相は、その密約を書状にして持ってきてくれたのか?」
「えぇ、そうよ。今から、その話をしようと思って、ウィルにもこっちの部屋へ来てもらったの」
「……やっぱり、さっきの会談に、俺も入っておけばよかった」
「ダメよ。けが人がピンピンしているところを見られては、取れるものも取れなくなるわ」
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