ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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素敵な1品が出来上がるわよ!

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「これはこれは、アンナリーゼ様。何かご用でしょうか?」
「えぇ、そろそろ、帰国の準備が終わるころだと思って」
「そうですね。あとは、宰相様にご挨拶すれば、いつでも出発できるかと」
「わかったわ。それじゃあ、宰相様に私の方から挨拶をしておくわ。日程は、そのときに決めることとします」
「かしこまりました。アンナリーゼ様は、日程の確認に来られたのでしょうか?」

 あまり関りを持たなかったが、突然現れた私に驚いていたようだ。私だって、誰にスケジュールを話さないといけないことくらいわかっているので、ここへ来たのだ。

「そうよ。帰国の日程の確認と、帰国途中によりたい場所があるの。その話をしにきたのよ」
「寄りたい場所ですか?みなが、帰国を喜んでいるはず……一刻も早く帰りたいと」
「そうね。それはわかっているのだけど、もう、二度とインゼロ帝国への訪問は叶わないわ。今しかできないことをしておかないと、後悔するから。帰国途中で、10日ほど時間が欲しいの」
「10日もですか?」
「えぇ、それでも、短いと思うわ。一大決心をしてもらわないといけないのだから」
「……それは、どういうことですか?」
「こちらのことだから、そこは、あなたが知る必要はないわ。それじゃあ、そのつもりで、日程をお願いね。宰相様との挨拶が終わり次第、帰国とするから」

 私は、勧められた席にも座らず、早々に部屋を出た。これが、ウィルだったら、こうも早く部屋を退出することもなく、話をしただろうが、どうも、苦手意識を持ってしまった隊長に対して、長居する気にはなれなかった。
 ヒーナに、宰相との挨拶の場を設けてほしいと連絡するよう頼み、私は部屋へと戻った。すでに、ナタリーが部屋にいるのだが、あの人形がとても気に入っているようで、ソファに座らせ、紙を広げて自分は何かをしていた。

「戻られましたか?」
「えぇ、隊長には、帰国の途中で10日ほど、寄り道をしたいと伝えてきたわ」
「納得されました?」
「納得も何も、私の我がままは、聞き入れてもらうわ。帰国後、公に小言を言われようと、私はなんとも思わないし、何かあれば、領地に問題があったのでと、引っ込んでしまうわ」
「……子どものようなことをおしゃらないでください。アンナリーゼ様は、公国になくてはならない方なのですから」
「そんな風に言ってくれるのは、私の友人たちだけだから。ナタリーは、今、何をしているの?」

 私は机の上に広げられた紙を見た。人形用のドレスの型紙を作っているようだ。

「アンナリーゼ様に着ていただく予定のドレスを作ろうかと。ハニーアンバー店にこの人形を飾りたく思うのですが、いいでしょうか?」
「私と同じドレスを着せてということかしら?」
「えぇ、そうです。できることなら、人形もあと数体あれば、いろいろなドレスを着せてあげられるのですが……」
「マネキンより、可愛いお人形さんが着る方が、なんだか素敵に見えるわね」
「等身大ではないので、イメージが付きにくいと言われそうですが、その年の流行のドレスや服なんかを着せて飾るのは、素敵ではないかと思います」

 私は、ハニーアンバー店で、ナタリーが作ったドレスを着た人形を飾る想像をしてみた。可愛いドレスを着た、可愛い人形が、とても可愛くて、思わず微笑んでしまう。

「今は一体しかないですけど、数体あれば、お茶をしているような見せ方とか、お勉強しているような見せ方とか……想像がたくさん膨らんでいきますわ」

 ナタリーの言葉を聞きながら想像すると、ますます、楽しみになっていく。

「職人の方が、アンバー領へ来てくださればいいですけど……こちらでも、高級品として取り扱われているのなら、アンナリーゼ様の願いであっても、断られる可能性はありますわね」
「断られることを大前提に、私たちは職人を訪ねていくのだから、あまり期待はしないでおきましょう。一つの出会いだくらいに考えておかなければいけないわ」
「もし、職人の方が、アンバー領へ来てくださるのなら、私だけでなく、人形のドレスを作りたいというものは多くいることでしょう」
「それなら、女の子の人形だけでなく、男の子の人形を作るのもいいかもしれないわ。恋人どおしのように寄り添わせれば、きっと素敵だもの」

 私たちは、実現できるかわからないことを想像しながら、たくさんの案を話していく。そんな中でも、ナタリーは型紙を作っていき、とうとう出来上がった。

「公国へ帰るまでの時間は、馬車でおとなしくしていないといけませんから、こちらを作っていようかと思います。ありがたいことに、生地も入手できていますので、素敵なドレスが完成するに違いないですわ!」
「ナタリーにかかれば、素敵な1品が出来上がるわよ!」

 二人で楽しくおしゃべりしていると、セバスとヒーナが同時に入ってくる。セバスは、私たちが何やら悪だくみをしているのではないかという心配で、ヒーナは頼んだ挨拶の話を持ってきてくれたのだ。
 セバスに席を勧め、ヒーナにお茶を頼んだ。席についたセバスは、出来上がったばかりの人形用のドレスの型紙を見て、苦笑いをしたのである。
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