126 / 142
素敵な1品が出来上がるわよ!
しおりを挟む
「これはこれは、アンナリーゼ様。何かご用でしょうか?」
「えぇ、そろそろ、帰国の準備が終わるころだと思って」
「そうですね。あとは、宰相様にご挨拶すれば、いつでも出発できるかと」
「わかったわ。それじゃあ、宰相様に私の方から挨拶をしておくわ。日程は、そのときに決めることとします」
「かしこまりました。アンナリーゼ様は、日程の確認に来られたのでしょうか?」
あまり関りを持たなかったが、突然現れた私に驚いていたようだ。私だって、誰にスケジュールを話さないといけないことくらいわかっているので、ここへ来たのだ。
「そうよ。帰国の日程の確認と、帰国途中によりたい場所があるの。その話をしにきたのよ」
「寄りたい場所ですか?みなが、帰国を喜んでいるはず……一刻も早く帰りたいと」
「そうね。それはわかっているのだけど、もう、二度とインゼロ帝国への訪問は叶わないわ。今しかできないことをしておかないと、後悔するから。帰国途中で、10日ほど時間が欲しいの」
「10日もですか?」
「えぇ、それでも、短いと思うわ。一大決心をしてもらわないといけないのだから」
「……それは、どういうことですか?」
「こちらのことだから、そこは、あなたが知る必要はないわ。それじゃあ、そのつもりで、日程をお願いね。宰相様との挨拶が終わり次第、帰国とするから」
私は、勧められた席にも座らず、早々に部屋を出た。これが、ウィルだったら、こうも早く部屋を退出することもなく、話をしただろうが、どうも、苦手意識を持ってしまった隊長に対して、長居する気にはなれなかった。
ヒーナに、宰相との挨拶の場を設けてほしいと連絡するよう頼み、私は部屋へと戻った。すでに、ナタリーが部屋にいるのだが、あの人形がとても気に入っているようで、ソファに座らせ、紙を広げて自分は何かをしていた。
「戻られましたか?」
「えぇ、隊長には、帰国の途中で10日ほど、寄り道をしたいと伝えてきたわ」
「納得されました?」
「納得も何も、私の我がままは、聞き入れてもらうわ。帰国後、公に小言を言われようと、私はなんとも思わないし、何かあれば、領地に問題があったのでと、引っ込んでしまうわ」
「……子どものようなことをおしゃらないでください。アンナリーゼ様は、公国になくてはならない方なのですから」
「そんな風に言ってくれるのは、私の友人たちだけだから。ナタリーは、今、何をしているの?」
私は机の上に広げられた紙を見た。人形用のドレスの型紙を作っているようだ。
「アンナリーゼ様に着ていただく予定のドレスを作ろうかと。ハニーアンバー店にこの人形を飾りたく思うのですが、いいでしょうか?」
「私と同じドレスを着せてということかしら?」
「えぇ、そうです。できることなら、人形もあと数体あれば、いろいろなドレスを着せてあげられるのですが……」
「マネキンより、可愛いお人形さんが着る方が、なんだか素敵に見えるわね」
「等身大ではないので、イメージが付きにくいと言われそうですが、その年の流行のドレスや服なんかを着せて飾るのは、素敵ではないかと思います」
私は、ハニーアンバー店で、ナタリーが作ったドレスを着た人形を飾る想像をしてみた。可愛いドレスを着た、可愛い人形が、とても可愛くて、思わず微笑んでしまう。
「今は一体しかないですけど、数体あれば、お茶をしているような見せ方とか、お勉強しているような見せ方とか……想像がたくさん膨らんでいきますわ」
ナタリーの言葉を聞きながら想像すると、ますます、楽しみになっていく。
「職人の方が、アンバー領へ来てくださればいいですけど……こちらでも、高級品として取り扱われているのなら、アンナリーゼ様の願いであっても、断られる可能性はありますわね」
「断られることを大前提に、私たちは職人を訪ねていくのだから、あまり期待はしないでおきましょう。一つの出会いだくらいに考えておかなければいけないわ」
「もし、職人の方が、アンバー領へ来てくださるのなら、私だけでなく、人形のドレスを作りたいというものは多くいることでしょう」
「それなら、女の子の人形だけでなく、男の子の人形を作るのもいいかもしれないわ。恋人どおしのように寄り添わせれば、きっと素敵だもの」
私たちは、実現できるかわからないことを想像しながら、たくさんの案を話していく。そんな中でも、ナタリーは型紙を作っていき、とうとう出来上がった。
「公国へ帰るまでの時間は、馬車でおとなしくしていないといけませんから、こちらを作っていようかと思います。ありがたいことに、生地も入手できていますので、素敵なドレスが完成するに違いないですわ!」
「ナタリーにかかれば、素敵な1品が出来上がるわよ!」
二人で楽しくおしゃべりしていると、セバスとヒーナが同時に入ってくる。セバスは、私たちが何やら悪だくみをしているのではないかという心配で、ヒーナは頼んだ挨拶の話を持ってきてくれたのだ。
セバスに席を勧め、ヒーナにお茶を頼んだ。席についたセバスは、出来上がったばかりの人形用のドレスの型紙を見て、苦笑いをしたのである。
「えぇ、そろそろ、帰国の準備が終わるころだと思って」
「そうですね。あとは、宰相様にご挨拶すれば、いつでも出発できるかと」
「わかったわ。それじゃあ、宰相様に私の方から挨拶をしておくわ。日程は、そのときに決めることとします」
「かしこまりました。アンナリーゼ様は、日程の確認に来られたのでしょうか?」
あまり関りを持たなかったが、突然現れた私に驚いていたようだ。私だって、誰にスケジュールを話さないといけないことくらいわかっているので、ここへ来たのだ。
「そうよ。帰国の日程の確認と、帰国途中によりたい場所があるの。その話をしにきたのよ」
「寄りたい場所ですか?みなが、帰国を喜んでいるはず……一刻も早く帰りたいと」
「そうね。それはわかっているのだけど、もう、二度とインゼロ帝国への訪問は叶わないわ。今しかできないことをしておかないと、後悔するから。帰国途中で、10日ほど時間が欲しいの」
「10日もですか?」
「えぇ、それでも、短いと思うわ。一大決心をしてもらわないといけないのだから」
「……それは、どういうことですか?」
「こちらのことだから、そこは、あなたが知る必要はないわ。それじゃあ、そのつもりで、日程をお願いね。宰相様との挨拶が終わり次第、帰国とするから」
私は、勧められた席にも座らず、早々に部屋を出た。これが、ウィルだったら、こうも早く部屋を退出することもなく、話をしただろうが、どうも、苦手意識を持ってしまった隊長に対して、長居する気にはなれなかった。
ヒーナに、宰相との挨拶の場を設けてほしいと連絡するよう頼み、私は部屋へと戻った。すでに、ナタリーが部屋にいるのだが、あの人形がとても気に入っているようで、ソファに座らせ、紙を広げて自分は何かをしていた。
「戻られましたか?」
「えぇ、隊長には、帰国の途中で10日ほど、寄り道をしたいと伝えてきたわ」
「納得されました?」
「納得も何も、私の我がままは、聞き入れてもらうわ。帰国後、公に小言を言われようと、私はなんとも思わないし、何かあれば、領地に問題があったのでと、引っ込んでしまうわ」
「……子どものようなことをおしゃらないでください。アンナリーゼ様は、公国になくてはならない方なのですから」
「そんな風に言ってくれるのは、私の友人たちだけだから。ナタリーは、今、何をしているの?」
私は机の上に広げられた紙を見た。人形用のドレスの型紙を作っているようだ。
「アンナリーゼ様に着ていただく予定のドレスを作ろうかと。ハニーアンバー店にこの人形を飾りたく思うのですが、いいでしょうか?」
「私と同じドレスを着せてということかしら?」
「えぇ、そうです。できることなら、人形もあと数体あれば、いろいろなドレスを着せてあげられるのですが……」
「マネキンより、可愛いお人形さんが着る方が、なんだか素敵に見えるわね」
「等身大ではないので、イメージが付きにくいと言われそうですが、その年の流行のドレスや服なんかを着せて飾るのは、素敵ではないかと思います」
私は、ハニーアンバー店で、ナタリーが作ったドレスを着た人形を飾る想像をしてみた。可愛いドレスを着た、可愛い人形が、とても可愛くて、思わず微笑んでしまう。
「今は一体しかないですけど、数体あれば、お茶をしているような見せ方とか、お勉強しているような見せ方とか……想像がたくさん膨らんでいきますわ」
ナタリーの言葉を聞きながら想像すると、ますます、楽しみになっていく。
「職人の方が、アンバー領へ来てくださればいいですけど……こちらでも、高級品として取り扱われているのなら、アンナリーゼ様の願いであっても、断られる可能性はありますわね」
「断られることを大前提に、私たちは職人を訪ねていくのだから、あまり期待はしないでおきましょう。一つの出会いだくらいに考えておかなければいけないわ」
「もし、職人の方が、アンバー領へ来てくださるのなら、私だけでなく、人形のドレスを作りたいというものは多くいることでしょう」
「それなら、女の子の人形だけでなく、男の子の人形を作るのもいいかもしれないわ。恋人どおしのように寄り添わせれば、きっと素敵だもの」
私たちは、実現できるかわからないことを想像しながら、たくさんの案を話していく。そんな中でも、ナタリーは型紙を作っていき、とうとう出来上がった。
「公国へ帰るまでの時間は、馬車でおとなしくしていないといけませんから、こちらを作っていようかと思います。ありがたいことに、生地も入手できていますので、素敵なドレスが完成するに違いないですわ!」
「ナタリーにかかれば、素敵な1品が出来上がるわよ!」
二人で楽しくおしゃべりしていると、セバスとヒーナが同時に入ってくる。セバスは、私たちが何やら悪だくみをしているのではないかという心配で、ヒーナは頼んだ挨拶の話を持ってきてくれたのだ。
セバスに席を勧め、ヒーナにお茶を頼んだ。席についたセバスは、出来上がったばかりの人形用のドレスの型紙を見て、苦笑いをしたのである。
0
あなたにおすすめの小説
愛されない王妃は、お飾りでいたい
夕立悠理
恋愛
──私が君を愛することは、ない。
クロアには前世の記憶がある。前世の記憶によると、ここはロマンス小説の世界でクロアは悪役令嬢だった。けれど、クロアが敗戦国の王に嫁がされたことにより、物語は終わった。
そして迎えた初夜。夫はクロアを愛せず、抱くつもりもないといった。
「イエーイ、これで自由の身だわ!!!」
クロアが喜びながらスローライフを送っていると、なんだか、夫の態度が急変し──!?
「初夜にいった言葉を忘れたんですか!?」
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【完結済】悪役令嬢の妹様
紫
ファンタジー
星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。
そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。
ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。
やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。
―――アイシアお姉様は私が守る!
最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する!
※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>
既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
【完結】きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
Mimi
恋愛
若様がお戻りになる……
イングラム伯爵領に住む私設騎士団御抱え治療士デイヴの娘リデルがそれを知ったのは、王都を揺るがす第2王子魅了事件解決から半年経った頃だ。
王位継承権2位を失った第2王子殿下のご友人の栄誉に預かっていた若様のジェレマイアも後継者から外されて、領地に戻されることになったのだ。
リデルとジェレマイアは、幼い頃は交流があったが、彼が王都の貴族学院の入学前に婚約者を得たことで、それは途絶えていた。
次期領主の少年と平民の少女とでは身分が違う。
婚約も破棄となり、約束されていた輝かしい未来も失って。
再び、リデルの前に現れたジェレマイアは……
* 番外編の『最愛から2番目の恋』完結致しました
そちらの方にも、お立ち寄りいただけましたら、幸いです
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる