ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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あと3日ですね

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「結果は、10日後にわかることだし、俺たちは、気長に待つしかないな」
「そうね」
「アンナリーゼ様は、他の職人へ声をかけることは、考えていないのですか?」

 ナタリーに言われ、私は苦笑いをした。他の職人へ声をかけることも考えたが、私はトレビと出会って、話をしてみて、なんとなく、他の職人ではない気がしたのだった。だから、ナタリーの申し出もわかるが、他を当たるつもりはなかった。

「ナタリーの言う通り、他の職人も考えてみたけど……」
「アンナリーゼ様は、トレビさんが来てくれることを願っているって感じかな?」
「そうね。セバスの言う通り。直感で、トレビさんがいいと思ってしまったから、今は、他の職人へ声をかけることは、控えたいわ」
「でも、この地には、もう来れないのですよ。職人を連れ出すには、こんな機会……」
「わかっているわ。でも、他の職人に声をかけなくても、私はいいと思っているの」
「……そんな」

 ナタリーは、よほど、人形が気に入っているらしく、職人を連れて、領地へ戻りたかったようだ。ただ、インゼロ帝国とは、国交断裂もしている中、無理に連れていくわけにもいかない。自分で決めて、アンバー領へ来てくれないと、何かあったとき、立ち直れないこともある。
 私はナタリーの肩を抱いて、「大丈夫よ」とだけ呟いた。

「ナタリーの言い分もわかるけど、姫さんの意見も尊重してあげないとだろ?」
「ウィルに言われなくてもわかっていますわ!」
「それなら、問題ないだろう? それに、ナタリーもよく考えてみてくれ。勝てない商談は、姫さんならしない。何かしら、手ごたえがあるから、10日もこの地で野宿する羽目になったんだから」
「ごめんね。私の我がままに付き合わせて」
「いいってことよ。まぁ、多少、お気に召さないものもいるかもしれないけど、姫さんのために組まれた隊だから、文句は言わないだろう」
「国からの手当とは別に、私も特別手当を出すつもりよ。往路だけでも、いろいろとあったもの」
「そりゃ、みんな喜ぶ。無事に国へ戻れたらってことで、楽しみにしておくよ」

 そういって、ウィルは、近衛たちが集まっている場所へと向かった。野営の準備をしているのだ。護衛の指示に向かったのだろう。
 その場に残った私たちも、寝泊まりするための準備をする。私とナタリーは、もちろん馬車の中で眠るし、セバスは荷馬車で寝ることになるので、そちらの準備に取り掛かった。ヒーナも手伝ってくれるが、人の少ない野営であるから、自分たちのことは、なるべく進んですることにしている。

「食事は、私も手伝いに向かうわ」
「お願いします」

 ナタリーとヒーナが、馬車の中を整えているので、私は夕食の手伝いに向かった。簡単な料理なら作れるし、少しくらい役には立つ。それを近衛たちも知っているので、私を夕食の手伝いで邪魔者扱いすることはなかった。

「アンナリーゼ様、質素な夕食で……」
「私が望んで野営になったのだもの。気にしないで。そもそも、あなたたちを野営に巻き込んでしまったことの方が、申し訳ないわ」
「そんなことはないですよ。一生に一度経験できるかどうかの出来事ばかりでしたから……。それに、こうしてゆっくり鍋をかき混ぜる時間なんて、公都に戻ったらありませんからね」
「そうです、そうです。セシリア副隊長は、アンナリーゼ様より、ずっと厳しいですからね」

 あはは……と、近衛たちが笑っているので、そこにウィルも合流した。

「いいのかな?セシリアに言いつけるぞ?」
「大隊長、それだけは、勘弁してください。ただでさえ、厳しい訓練なのに、血反吐を吐くくらいの訓練になったら、どうするんですか?」
「そりゃ、大変だな。俺は、アンバー領にいるから、その訓練を受けられなくて、残念だ!」
「大隊長!」

 嘆くように近衛たちは、ウィルを呼んでいる。鍋を囲みながら、「そろそろよさそうね」というと、待機していた近衛たちが机を広げ、食器を並べていく。私は、ナタリーたちを呼びに行ってくると馬車に向かい、そのあいだに、手早く夕食の準備が整えられていった。ナタリーとセバスを呼んだあと、護衛の者を残し、夕食を囲む。食べたあとは、残りの者と交代となる近衛たちは、効率よくご飯を食べ、次々と変わっていく。私とナタリーとセバスはゆっくりご飯を食べているので、少し申し訳なく思ったが、怪我をしているウィルも同じように食べていたので、気にしないでいいと言ってくれた。

それから、7日間、この場で野営を続けている。私たちは、ときどき、町に買い出しに向かい食料を補充しながら、トレビを待ち続けた。

「あと3日ですね」

 ナタリーが町の方を見ながら、ため息をついていると、見覚えのある人物が、手を振ってやってきた。背中には大きな荷物をしょっているように見える。

「……ここで、野営をされていたのですね。町を出たところでと言われたので、少し探してしまいました」
「町のすぐそばでは、さすがに目立つから、少し離れていたの」

 私たちは軽く挨拶を交わし、今、淹れたばかりのお茶をトレビにも差し出すと、ごくごくと飲んでしまった。
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感想 18

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みんなの感想(18件)

ユウキ
2025.06.14 ユウキ

現在更新されている分は全て読みました
とても面白いです
どこでアンナリーゼが死ぬのか、アンジェラがどうやって女王になるのか、と続きが楽しみです
ただいくつか気になるとこというか残念なとこもありますね

・学生編は、早回しにしたかったのだと思いますが、それならキャラの名前は、はっきり違うものにして欲しかったです
メアリーとナタリーの名前が似てるので混乱しました
メアリーが政略結婚したとか語られた際に『え? 王太子の第3妃になって子供がサシャの子供と結ばれるのじゃなかったの?』って感じでした

・誤字が多い、特に『ソファ』を『ソフィア』と描かれていたのが度々あり気になりました
『ソフィアに座る』→あんな強烈な香水を付けている女に座るの?って感じで話の内容そっちのけで毎回気になりました
他にも名前の誤字がありましたね。ジョージアとジョージとかダドリー男爵とトライド男爵とか

・予知夢でジョージアと冷え切っていたらしいが実際何があったのですか? 何故別居していたのか
本編でもアンジェラ誕生から10ヶ月別居してましたが、その理由が謎です

・前公夫妻は何をしているのか
前公って普通現公の補佐とか相談役とかしませんかね?
前王妃だけは何故かお茶会で登場しましたけど

・前アンバー公爵夫妻は何をしているのか
前公爵は、旅行に行くとかって話が出てましたがお金は?
アンバー領は荒んで金がない筈ですけど
それに手紙とかやり取りしていたり、カルラだったかスーザンだったかを一時期預かって貰ったりしていたようでしたが、それなら何故ジョージアと別居中に乱入して来てジョージアに説教しなかったんですかね?
ディルあたりが報告してますよね?
そもそもアンナリーゼが嫁に来るってなった時に、それならせめて領地をどうにかしなければと意気込んでいたのに、あっさり爵位を相続させているのが謎ですね

・予知夢で未来を知り未来を変えて死ぬ筈の者を生かしても直ぐにまた死んでしまうという話ではなかったですか?
娼婦がそうだったとか
それならシルキーは何故生きてるのですか?
細かい事を言えばアンバー領の領民もそうですね
アンナリーゼが、1年早く領地改革に着手したお陰で生き延びられた者が多くいると思います

もし良ければこの疑問に回答して頂けば嬉しいです
また続きを楽しみにしています

解除
ユウキ
2025.06.14 ユウキ

帝国宰相の奥さんの名前がテレジアからマチルダに変わってますよ?

解除
ユウキ
2025.06.14 ユウキ

ウィルの隊にいる女性近衛の名前が度々変わるのが気になります
セシリア→シルビア→セルビア→セルシア
シルビアって名前になってから、混ざった名前になってますね
シルビアって誰ですか?

それとウィルが大佐と呼ばれてるとこがあります
サーラー隊長やサーラー伯爵はわかるのですがサーラー大佐とは?
この世界観に大佐、中佐、少佐とかそんな階級ありましたっけ?

解除

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