ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

文字の大きさ
54 / 142

日常の変化

しおりを挟む
 ジョージアたちの卒業式が終わり、新しい年度の始まりを迎えていた。
 私は相変わらずだったし、殿下もハリーも相変わらずであった。
 友人たちも特に変わったところはなかった。


 変わったのは、日常的にあった校舎裏へのお呼び出しがより一層増えたこと。
 告白から始まり、ジョージア派閥にハリー派閥、自国の公爵令嬢に虐められるようになった。
 虐めと言っても……校舎裏への呼び出しが多くなったって言う程度だ。
 取り巻きを含め、セリフはいつも同じなのだ。
 最近少しずつ変化をつけているようだが、結局内容は、どのお呼び出しでも同じでつまらない。
 悪役令嬢でも目指しているのか、悪口のレパートリーの少なさが残念である。
 私、悲劇のヒロインになったつもりで、涙を流しながら崩れ落ちたほうが雰囲気的にいいのだろうか?
 なんて、くだらないことを真顔で考えながら今日も同じ言葉を繰り返し聞いているところだ。
 呼び出しが増えたのだから、そろそろひねりのきいたセリフの一つでも持ってきてほしいものだ!
 去年の3割増しで、うんざりしているし聞いているのも退屈しているところだ。


 元々、公爵令嬢のイリアは、ハリーに想いを寄せている。
 なのに相手にされてないから、私に八つ当たりをしてきているのだが……小さい頃からハリー一筋であることには感心してしまう。
 私に対して八つ当たりと言うのは、全くのとばっちり……とは言い難い。
 ハリーも昨年度の卒業式のパートナーとして、私に打診してくれているくらいだから。

 ジョージアと約束があったので断ったのだが、ハリーはその後、誰にも卒業式のパートナーを申し込んでないらしい。
 そこで、イリア嬢に打診していたら、先に私への打診があったことで角は立つかもしれないが、とりあえず、私のお呼び出しの回数は増えなかったであろう。


「ジョージア様は、籠絡できたとしても、ヘンリー様はそうはいきませんから!」
「変に色目なんて使わないでちょうだい!」
「あなたのような淫乱な侯爵令嬢なんて、見たことありませんわ!」
「私のヘンリー様に関わらないでください!ただじゃおきませんよ!!」
「ヘンリー様はお優しいから、あなたのような誰彼構わず誑し込んでいるような人でも、相手にされる
 のよ!少しは、謹みなさい!」


 エトセトラ、エトセトラ……


 ようは、ハリーに近づくなと言いたいらしいが、1日に2回も呼び出されたら、だんだんめんどくさくなってくる。


 逆にローズディアのお嬢様方の反応は、かなり友好的なのだ。
 よっぽど、ダドリー男爵家のソフィアが、ローズディアの令嬢たちから嫌われているのだろう。
 卒業式にソフィアも来ていて私を射殺すかのごとく見ていたが、これ見よがしに私はジョージアにより着飾れていたわけだ。
 国の花である薔薇をふんだんにあしらったドレスに、公国外には未発表となっている青薔薇の宝飾品を身につけていた。
 ジョージアと並ぶためだけに用意されたモノで、全てジョージアが私のために作らせたモノだと、ご令嬢たちの耳にも入っているのだろう。


「アンナリーゼ様は、どのようにジョージア様の心を射止めたのかしら?」
「ご婚約の話は聞いてないけど……アンナリーゼ様が卒業されたら、ご婚約されるのかしら?」
「卒業式のお二人はとってもお似合いでしたね……」
「ソフィア様と婚約なんて、おやめになればよろしいのですよ!」


 両国のご令嬢が、私の評価を勝手にしてくれている。
 卒業式に参加していなかった在校生も噂話に入っているのから、ハリーとジョージアの人気ぶりに感嘆だ。


「デビュタントの時もかなり話題になっていたけど、アンナは今回もかなり話題になっているね?」


 ハリーが呑気に総評をしてくれているが、私にとって何も特別な卒業式ではなかった。
 『予知夢』で予見することができなかっただけで、あとはジョージア様と一緒に過ごしただけの卒業式である。


「そうなのよね……話題になっているのはいいのだけど、呼び出しが増えたのが……
 正直めんどくさいわ……ハリー、イリア嬢はなんとかならないの?」


 明け透けにいう私にハリーは肩をすくめるだけだった。


「それは、仕方ないであろう?あの者は、ハリーの第一夫人を狙っておるのだから……」
「殿下……それだけは……」


 殿下に本当のことを言われ、ばつの悪そうにしているハリー。
 でも、私は、そんなに悪い取り合わせではないと思っているのだが、本人が嫌だというものを勧めるわけにもいかない。


「イリア嬢ももう少し控えめにすれば、素敵な女性だと思うけど?って、一度冗談でもいいから
 言ってあげたら?もう少しナチュラルな君の方が素敵さ!とか」


 本人にその気がないのだが、殿下に追随するように私もハリーをからかう。


「それで治るなら……一度試してみるよ!あの、ケバケバしさは正直寄ってきてほしくない程、
 なんだよね……殿下はよくデビュタントで我慢できましたね……?」


 本音ダダ漏れのハリーにご愁傷様と殿下と私が片肩ずつ手を置くと、ハリーからため息が漏れる。
 私は、ジョージアの婚約話で結構頭いっぱいになっていたが、実は、ハリーもイリアのところからかなりの重圧をかけられているらしい……
 同じ公爵位のため、無下にもできず笑って躱しているらしいが、それも時間の問題だろうって聞いたことがある。

 もうそろそろ、本当に、それぞれの結婚相手が決まるのだ。
 この楽しい日常も、さらに劇的に変化していくことになりそうで寂しい。



 ◆◇◆◇◆



 今年の新入生にローズディア公国の第二公女が学園に入ってきて話題になっている。
 入学式でチラッと見たら、どことなくジョージアに似ているような雰囲気をもった可愛らしい女の子だった。
 容姿は淡い青みがかった金髪で目は翡翠のような色をしている。
 うっすらと瞳の淵には蜂蜜色が混ざっているような不思議な瞳であった。

 何はともあれ、そう、とっても美人なのである。

 是非ともお友達になって、殿下に紹介しようと私も躍起になっているところだ。


 秘密のお茶会で、こっそり名前とか好きなお菓子とか色々調査済みであるのだが、ただ、公族なのでなかなかお目通りが叶わないので、躍起になっていると言っても大人しくしているしかないのだった。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

愛されない王妃は、お飾りでいたい

夕立悠理
恋愛
──私が君を愛することは、ない。  クロアには前世の記憶がある。前世の記憶によると、ここはロマンス小説の世界でクロアは悪役令嬢だった。けれど、クロアが敗戦国の王に嫁がされたことにより、物語は終わった。  そして迎えた初夜。夫はクロアを愛せず、抱くつもりもないといった。 「イエーイ、これで自由の身だわ!!!」  クロアが喜びながらスローライフを送っていると、なんだか、夫の態度が急変し──!? 「初夜にいった言葉を忘れたんですか!?」

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

【完結済】悪役令嬢の妹様

ファンタジー
 星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。  そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。  ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。  やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。  ―――アイシアお姉様は私が守る!  最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する! ※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>  既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

【完結】すり替えられた公爵令嬢

鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。 しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。 妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。 本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。 完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。 視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。 お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。 ロイズ王国 エレイン・フルール男爵令嬢 15歳 ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳 アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳 マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳 マルゲリーターの母 アマンダ・オルターナ エレインたちの父親 シルベス・オルターナ  パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト アルフレッドの側近 カシュー・イーシヤ 18歳 ダニエル・ウイロー 16歳 マシュー・イーシヤ 15歳 帝国 エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(前皇帝の姪) キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹) 隣国ルタオー王国 バーバラ王女

処理中です...