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晶の記憶

好きと知る事

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憂鬱だ…

「はい1の段の掛け算暗唱」
「セックス」
…これだ
…つらい…つらすぎる…

「はい、セクハラー!セクシャルハラスメントー!」
「いや、晶は男だし、親だし」
「セクハラは男も女も関係ない、親ならもっとヤバいだろ!近親相姦だろ!」
すかさず突っ込んだ。
「ほんとやる気だしてくれ…将来にかかるから…」
俺は泣きそうになりながら言うが和歌には伝わらない。
「もう娼婦しかないでしょ?」
「18過ぎないと風俗は違法だ、中学卒業するまで働くのも違法。あとババアになったらどうする?」
「うわっ!最低!」
「若いうちだけだぞ稼げるのは。はい勉強!」

こんな調子である。
何か長所があればそこをきっかけにのばせるのに…
そんなことを思いながらテーブルの横にいる和歌を横目に見る。
ノースリーブを着た和歌の脇からピンク色にぷっくりとした若芽がチラチラ見える。
「……!っ」
絶句する俺を横目に和歌は気づき、ニヤっと笑った。

「……誘ってるの…か?」

和歌の目尻が上がる。
そうか…そういうことか…

「大人をからかうのもいいかげんにしろ!子供なんだからもっと自分を大事にしろ!」

ああ…ありふれた大人のようなことしか言えない。
こんなことを言っても全てを知った彼女には一切響かない。わかっている。

和歌は哀れむような目で俺を見つめてきた。

「なんで、年齢を理由に好きになったり、その気になってもらう努力をしちゃいけないの?
わたしは晶のことが胸が苦しくなるくらい好きなだけで、何もしてあげられなくて…
身体しかないから色仕掛けしてるだけなのに…
大人はやってよくて子供はだめなの?なんで?」

和歌の周りの大人の悪さに絶望感しかなかった。
怒りを叩きつけるように俺はスマホをいじってAmazonで買い物をした。

「こんな時になにやってんの!」

俺はスマホを見せた。
ー山川倫理ご購入ありがとうございます。ー
そう書いてある画面を突き出す。

「お前に一番大事な物をかった」
和歌は怒りを抑えつつきいてるのかほっぺたが膨らんでいる。
「俺と付き合うなら、普通のステップを踏んでもらいたい。
俺が好きなのはわかった。
だが、いきなり肉体関係はなしだ。
俺は性欲処理器ではない。
もし付き合うならば俺らは普通の恋愛をしなければならないとおもう。」

そう言って俺は和歌の手を握り
「友達から始めましょう、和歌」
口説くような声でニンマリとありったけの情をかけて笑った。
「馬鹿…」
そういうと和歌は目が潤み、真珠のような涙がぼろぼろと泣き始めた。

「俺は和歌をしらない、だから知ることから始めよう。」

これが幼いながらも恋してくれた女の子への礼儀だ。

和歌はうん!と言って握手をした。
「晶のことなにもしらなかった。ごめん」
その顔は膨れてはいないが、手を握るのが恥ずかしいのか顔と耳が赤い。
「これからだ…これから始めよう」
俺は、逃げれないと腹を括った。
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