上 下
13 / 29
晶の記憶

山田と花家

しおりを挟む
最後に不夜城を見たのはいつだろうか…
あれから2年…クリスマスと誕生日には必ずマリアージュフレールの紅茶を送る。
俺の記憶で数少ない彼女が欲しがったものだったから、
夏にはバビロニアも届ける。
和歌の顔は思い出せるがだんだんぼやけてくる。
彼女も成長し、一体どんな姿になったかとおもうと胸が締め付けられる。

2019年2月、支部から壊滅させ、敵の信者を少しずつ本部に集まるようにし、いよいよ総本部を叩けば壊滅に近い状態まで追い込んだ。

「甲藤さん…やっと隠れないで家帰れますね」

そういうのは警察庁機動隊の田中だった。

「山田さん…ほんっとに警察の人だったんだな」

甲藤は呆気に取られる。

「山田さん…いや花家さんは立派な警視正ですよ、家柄も、学歴も最高の家なんで失礼な事いわないでくださいよ!」

お前のようなやつとは違うんだと言い出そうな目で田中は言った。
今日、ぞろぞろと警視庁機動隊を連れてきたのは山田太郎だった。
そして、山田太郎は 警視庁第一機動隊警視正 花家賢人 と聞いて甲藤は舌を巻く。

「ファンタジーでいう、騎士団長さまってやつか」

「そのラノベ脳、やめてくれませんか。花家さんに失礼ですよ!」

田中は思わず突っ込んだ。ノリがいいのか山田を尊敬してるのかわからない。
そして通りで太った初老なのに身のこなしが軽い理由が分かった。
食えない狸め…そう苦虫噛みながら苦笑してると、山田が近づいてきた。

「どっちで呼べばいいですか? 花家 さん?」

山田は面食らいつつ

「いや、なんでもいいよ、名前なんて記号だから、わかればいい」

「じゃあ、山田さんで」

「ははっ…」

山田は困惑する。

「…っで、大方は捕まえたんですよね?」

山田は頷き眉をしかめる

「しかし…居ないんだよ…いる様子がないんだ…教祖が」

甲藤は困惑するが、ふと、地図をみて指を刺す。

「これ…なんで隙間あるんですかね?柱が必要ない」

山田は急いで本拠地に突撃するよう命令する。
甲藤も山田を守るように走り出す!

甲藤の予想通り、壁に穴を開けると下に下がる階段があった。
軽装の甲藤は突撃した。

「山田さん、俺がカナリアになります!」

「甲藤!早まるな!」

これで…これで終わる!和歌の脅威がなくなる!
そう思いながら階段を降りると粉っぽいスモークの先にすえた臭いが充満する。

「和歌を奪ったやつか」

ブヨブヨと太った中に硬い筋繊維が隠れてるのがわかるレスラー体型の大男が沢山の裸の子供を侍らせていた。

「ねえ、和歌ってあの裏切りもの?」

「わたしきらーい!あのこ」

「教祖さまのお恵みをいやがるなんておかしいよ」

「きもちいいのにねー」

そして教祖は少女の割れ目に男根を根元まで貫く

「あはっ!教祖さまぁーお恵みありがとうございます」

子供達の目を見ると、トロンと虚空を見つめていて深淵がみえる、絶望、恐怖の成れの果ての目だ。

「貴様っ!」

俺は歯をギリっと音を立てた。

「和歌は悪魔に取り憑かれてるのを救済できなかった…最後まで お恵み を抵抗していた。目の力が取れなかった…哀れな子だ」

和歌は最後まで…最後まで…
強い子だったんだ…

「親が一旦は逃したが嬲り殺しにして聞き出して、児相の闇ブローカーに依頼して戻った時に初めて おしおき したときは最高にいい声を出していたよ。信者全員で 恵んで あげたのに…奴は…」

教祖は愉悦が滲み出る顔をみせてにんまりと笑った。

「貴様ー!貴様はー!」

俺は我慢できず銃を突き出す!

「甲藤ー!やめろー!総員退却!」

山田は叫んだが、すでに遅く引金を引いた。
ファイアークラッカーが鳴り響くと共に、空気上の粉に引火し、地下室は粉塵爆発を起こした!

くそっ!ヘマをした!

「甲藤ー!甲藤ー!」

山田は絶叫する

「駄目です!隊長!いってはだめです!」

田中と同僚達は必死に止める。

「畜生!馬鹿野郎!和歌ちゃんを1人にするなー!」

隊員に抑えられた山田を 花家さんおちついて! と抑える田中を炎の中で揺らいで見えたのが最後だった。
ああ…意識が遠のく…

なだ万の弁当…買わなきゃ…な…
しおりを挟む

処理中です...