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和歌の記憶

花家さんとの出会い

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「和歌ちゃんだっけ?君…随分と仕事熱心だね?」

山田さんと初めて会ったのは、
奴隷にされてる新興宗教の接待で
教祖様と警視庁の密会で山田さんにあてがわれた時だった。

そつなくそれなりのことはするが、
私は1万くれたら
前立腺も肛門舐めもすると誘惑をしている。
山田さんは何も言わずに1万渡し、
そつ無く抱かれ、
そつ無く山田さんを雌にした。

彼はとても淡白で、
仕事だからと笑いながら、ローションで濡らして、
挿れてじっとして勝手に逝く、
5分足らずで終わるような交尾というよりは
オナニーみたいな吐精をし、
オプションも適当に出したような
真剣味の無い行為としか思えない。

むしろ、山田さんの目的は、
私へのピロートークだった。
私を抱きしめ、小声で情報交換をする。
情報を売る代わりに毎回1万、
良い情報なら5万貰える。
山田さんに情報を回すたび、
教団の支部にガサ入れが入る。
気に入ってくれてるのか、
時々指名してくれる山田さんは私にもありがたかった。

「ガサ入れ…私の本部にも…」

それを山田さんは聞き逃さなかった。

「君は『おはなし』が買収と気付いてるんだね」

山田さんにしては珍しく、甘い声で囁く。

「人形で無いなら手を貸そう」

私は振り向いた。こんな奇跡あるのかと!

「逃げるために貯めていた…114万…」

山田さんはにっこりと笑い

「英国では素人の殺しの相場はね10万、だけどすぐバレる」

私は目を白黒する。
そんなんじゃ…意味がない。

「私ならルーキーだか凄腕のプロに100万で頼める。諭吉100枚渡せる?」

「その人は信頼できるの?」

私は半信半疑だった。
しかし山田さんはにっこりと笑い

「素人100人でも足りないくらいの生え抜きだ。
本来ならもっと取れるが、箔をつけさせてくれるなら、
彼を用意しよう。」

「交渉成立ね…ありがとう。」

私は山田さんに抱きついた。

この時の名前は山田でなく 花家 と名乗っていた。
山田という偽名を知るのは、晶が消えたその日だった。
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