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晶の記憶

流浪と帰路

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リハビリなど回復をしてる間にあっという間に
夏も秋も過ぎて、
冬に諸般の事情という奴で病院を放り出された。
色々試験を受けて資格を取り、
不動産周りの打ち合わせをする。

迎える準備はできたのは12月
既に恋人達が幸せそうに歩く時期だった。
しかし、和歌の消息は絶ったままだった。
多忙で調べる余裕も無かった。

GoToで安く借りてた新宿のAPAホテルに一通の電報が届いた。
綺麗な花の押し花がついていた

「12/23 12時 東京都庁南展望台、カフェスペース」

ただそれだけかいてあった。
こんな事するのは山田しかいない。
しかも今日じゃないか!
山田!なんの依頼だと思いながら、
あと1時間しかない俺は慌ててチェックアウトして
都庁の南展望台に向かった。

ユニクロのダブルフェイスダブルブレストコートを羽織り、急いで東京都庁にむかう。
入場制限はあったが、幸い運良く滑り込むことができた。
エレベーターに乗り、ごんごんと最上階に向かう
重力が世界を切り離すように感じるのが展望台の楽しいところだ。

なんとか10分前に着き、席に座る。
コーヒーを啜りながら、ぼーっと待っていると
荷物をどさっと落とす音がホールに響いた。

そこには見目麗しい、白い肌
髪の毛は三つ編みでもわかるくらい綺麗に手入れをされ、焦茶色が艶やかに光る。
深淵から希望で溢れた真っ黒でくりくりした目。

ずっと探してた。
俺は飢えた狼がむしゃぶりつくように、
きつく、ぎゅっと、和歌を強く抱きしめた。

「和歌…」

「もう…もう…プレゼント届かないから死んだのかと…」

「すまない、居場所を山田から聞きそびれた。」

「山田さんね、すごく守ってくれて…通信中学校でパソコンで勉強させてくれてね、いろんな所を転々として…だから今回も移動かなって…」

和歌はボロボロずっと泣いてる。

「それも今日で終わりだ。家に帰ろう。」

「…うん」

南展望台のピアノから
Someday My Prince Will Comeが流れてくる。
最初は綺麗なバラードからジャズアレンジで激しくなり
やがてまたバラードになる。

手を繋ぎ、エレベーターに乗る頃には
喝采がホールに響いた。

まるで2人を祝福するかの様に…
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