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和歌の記憶

入学式

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私は覆面パトカーのフェアレディZに乗せられ、
思い出で溢れていた新宿を離れた。
私はこれからどこへ行くんだろう…

「とりあえず暫くは23区のビジネスホテルを転々としてもらう。見張りは私と部下の田中で交代するが、大概は田中と一緒だ」

そう言うと、運転してる女の人が田中さんなのだろう。
グレーのパンツスーツがとても似合う、前下がりボブがよく似合う人が視線を流してきた。

「よ…宜しくお願いします」

「あら、私だって気づいたの。なかなか察しいいね。宜しくね!」

「田中は貧乏だから防衛大学から警察学校に流れてきた生え抜きだ。強くて賢いぞ」

「花家さん! 貧乏 は余計です!」

「田中、お前の一番好きなもんはうまい棒めんたい味を砕いて乗せたふりかけご飯だろ?
宿直の時にばれているぞ!
あと弟妹が5人居て
お母さんが1人で長距離トラックで稼いでいて、
更に下の子たちの面倒はお前と弟の長男が…」

「やーめーてー!!!」

花家さん…絶対敵に回したくない…

「田中さん可哀想だから…やめたげて…」

ははは…と笑ってる花家さんが怖い…

「まあ田中の紹介はともかく、晶くんには 山田 で通しているからきをつけて。
山田の正体も大方は秘密。
君はこれから花家と山田をつかいわけてもらう。
あと、さっきのインターホンの出方、あれは危ない。
これからは合言葉をつくる。
これは常にかわるから、連絡はスマホをこまめにチェックすると。」

花家さんは車内で打ち合わせをする。
時折警察の無線をききつつ話しているのが判る。

さて…着いた。先ずはここで入学手続きだ。
そう言って下ろしてくれたのは

N中等部

今話題の通信制中学校だった。
建物に入ると早速面接だった。

学力が著しくないが、夢がある。
今の学校ではついていけないから、ここで学んで基礎学力つけたいこと。
夢であるオーナーシェフになるために調理師免許証をとって店を運営できるように沢山学んで卒業したい。

夢を重視する学校には断る理由はなかったのか、
警察のコネが効いたのかわからない。
直ぐに入学手続きが始まり、
制服や教科書などの必要な物が揃った。

「制服ってオーダーメイドでは…」

「前から晶くんが入れる予定だったからね、用意は出来てた。」

「え?じゃあ」

「そう、今は8月だが、君は7月に入学してる」

N中等部の職員さんは苦笑してる。

「君はこれから、様々な場所を移動するが、学問は保証する。入学おめでとう!和歌ちゃん」

「…ありがとうございます、いきなりすぎて実感わきません」

私は何がなんだかわからないが、
晶の置き土産に驚いたし、嬉しかったし、
きっと優しくしてもらえることは幸せなんだ。

そうおもった。
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