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和歌の記憶

LOVE PHANTOM

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あれから田中さんは元気がない。
私を監禁していた新興宗教の総本部が壊滅してからだ。

地下に隠れていた、教祖と子供8人は全員死亡。
晶は全身火傷でドクターヘリで緊急搬送され
手術をしたが意識不明のまま、
誰かの手によってその後すぐ消息不明に。

花家賢人は全ての責任を取って辞職。
そしてその後消息不明になる。

「あの時甲藤君を止めていれば…」

彼女はずっとくちずさんでいた。

「……田中さん……花家さんの事を……」

田中さんはキッと睨む!

「花家さんに失礼です!
あの人は若い頃死んだ奥様がずっと好きなんです!
私なんか…無理なんです

…………………

綺麗な思い出には勝てません。」

それでも お慕い申してます… と言いたげな顔で
田中さんは言い返した。

よく聞く泥沼不倫なんかより、ずっとずっと業が深い
そう思いながら胸が痛くなる。

きっと花家さんは 綺麗な 姿しか、見せてない。
それが花家さんの彼女への優しさなのかも知れない。
私を脅したのは、晶のためだけではない
田中さんのためもあるのでは、そう思った。

逆に私は愛されては居ない証拠に、
花家さんの泥臭い腹の中をみせてくれた。

愛するから、腹の中を見せることもあると同時に
愛するからこそ、夢を見せることもある。
花家さんも花家さんの奥様も似たような人なのだろう。

愛することは難しい。



春の誕生日も夏もクリスマスも
次の年の誕生日もオリンピックの予定日も
私へのプレゼントは届かなかった。
あれから2年過ぎたよ
私はもう中3になったよ。

少し胸がおおきくなったけど
背はずっとおなじです。
きっと晶の胸くらいの高さのままです。

髪の毛は少しのびました。
あれから切ってないので三つ編みにしてます。
普通の子に見えるように、カモフラージュしています。

いま晶会ったら…私の事気づくかな?

晶はどんなタイプが好きか、聞く前に消えちゃったね。
晶の好みのタイプになるように、頑張りたかったよ。

………お願い!生きていて!
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