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第2章 訓練の日々
訓練の日々 19
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歩廊の上からは城塞都市シエンナの全体が見渡せた。
夜の闇をかき消す様に、街並みの灯りが美しく灯っていた。
きっとあの場所では賑やかな喧騒が響いているのだろう。しかし、この歩廊では強い風の音しか聞こえなかった。
ラクフが連れていたかれた後も、クレテイスはしばらく歩廊に残ってその夜景を見ていた。ベールに残された他とは違う直黒のナイフを見つめる。気がつくと隠密部隊長のアヌシビが隣にやって来ていた。その黒い長髪が風に靡く。
「アヌシビ様!」
クレテイスがサッと跪く。
「良い。クレテイス立ちなさい」
「……」
クレテイスは遠慮する様に静かに立ち上がった。
「黒い羽は使わなかったのですね?」
「これは、もう、使うことも無いかと」
「……そうですか。もう殺しはしませんか。 ……戻らないのですね」
「はい。 ……申し訳ございません」
「修道女として潜ってもらいたい所があったのですが」
「命令とあらば」
「いや良い。医療に励みなさい、それも大事な役目」
「……はい」
アヌシビは「しかし、寂しいぞ私は」と呟いて顔を背けた。
二人はそのまま、強い風に吹かれながら、遠くにも近くにも見える街並みの明かりを静かに眺めていた。
× × ×
夜の闇をかき消す様に、街並みの灯りが美しく灯っていた。
きっとあの場所では賑やかな喧騒が響いているのだろう。しかし、この歩廊では強い風の音しか聞こえなかった。
ラクフが連れていたかれた後も、クレテイスはしばらく歩廊に残ってその夜景を見ていた。ベールに残された他とは違う直黒のナイフを見つめる。気がつくと隠密部隊長のアヌシビが隣にやって来ていた。その黒い長髪が風に靡く。
「アヌシビ様!」
クレテイスがサッと跪く。
「良い。クレテイス立ちなさい」
「……」
クレテイスは遠慮する様に静かに立ち上がった。
「黒い羽は使わなかったのですね?」
「これは、もう、使うことも無いかと」
「……そうですか。もう殺しはしませんか。 ……戻らないのですね」
「はい。 ……申し訳ございません」
「修道女として潜ってもらいたい所があったのですが」
「命令とあらば」
「いや良い。医療に励みなさい、それも大事な役目」
「……はい」
アヌシビは「しかし、寂しいぞ私は」と呟いて顔を背けた。
二人はそのまま、強い風に吹かれながら、遠くにも近くにも見える街並みの明かりを静かに眺めていた。
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