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第2章 訓練の日々

訓練の日々 53

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 中央の広間ではグレーンとディックの戦いが続いていた。
 ロングソード(両手剣)を持つグレーンの構えは迫力があった。さらにその弧を描く一撃は重く、盾で防御するディックを幾度となくよろめかせていた。ディックも素早く身を寄せては自身の間合いに入るのを試みた。だが、轟音うなるグレーンの一撃に、ことごとく弾き返されついには猛攻の連打に耐えきれず、カタカタと音を立て壁面まで後退し膝をついた。

 グレーンは涼しい顔して中央まで戻ると、また次の相手を求めた。その後、モーラやビルバ、2回目のディック、そしてランスをも連撃で退けた。レイも対戦してすぐに、グレーンの一撃を受け、モーラのような巨軀とパワー、ビルバの剣技、ランスのスピードを持っていることがわかった。そして、重く響く剣の連打を受け体勢をくずし膝をついた。

 戦いを見守っていたストラスブルが呟く。

「レイ、大胸筋、三角筋、広背筋、僧帽筋、脊柱起立筋、筋力足りず、か」

 その声を聞いて、ストラブルの横で一緒に見ていたトーブは嫌な予感がした。
 そこにセイセルーが静かに近づいてきてトーブに声をかけた。
 
 「君がトーブ君かな? 君の力ぐらい測っておこう」

 トーブが、ハッとして顔を向ける。

「炎の魔法を僕に打ってみて」
「えっ」
「遠慮はなしでいいから」
「しかし」
「いいから」

 トーブは一瞬考えた後、右手のひらに炎を集めた。そして、少し離れたセイセルーに向かって火柱を放った。炎の熱とボウッという音に、皆の視線が集まる。当たる! と思ったその時、その炎がセイセルー前で弾けて四方八方に飛び散った。
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