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第2章 訓練の日々

訓練の日々 45

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 謁見の間は広い天井をもち、瓶底のような丸く小さなガラスが、正面の壁にふんだん埋め込まれ、輝く明かりを幾筋も取り込んでいた。壁面は他の場所同様、石面むき出しだったが、シエンナオレンジの幕が天井から八方、そして左右の壁面中央にかけられていた。

 正面には王座のような席が一つあったが、誰も座ってなかった。隣には祭壇のようなものがあり、大きな剣が置かれている。その両脇に、軍務長モンペリを中心に錚々そうそうたるメンバーが座っていた。謁見の間の左右には、輝く鎖かたびらの上にシエンナオレンジのサーコート、そして印章入りのカーキのマントをまとった騎士団の面々が立ち並ぶ。

 シエンナ騎士団の叙任式は、他の騎士団にくらべるととても簡素なものだ。それでも、この儀式を経て正式なシエンナ騎士団となる重要な儀式の一つである。皆、張り詰めた空気に叙任式の重さを感じていた。

 練習で行ったように、横一列に並び片膝をついてひざまずき頭を下げた。
 叙任式の指揮を執るモンペリが、祭壇にまつってあった剣を取り皆の前まで歩いてきた。静かに剣を抜き、響く声で皆に騎士叙任式の宣言を告げる。
 そして一人一人に語りかけるように誓いの文句を述べていった。

 「汝、須(すべか)らく『平和に尽くし、自由を守り、平等を築く』、シエンナ騎士団の精神を愛し守るべし
  汝、シエンナの地を衛り、地域の民、及び訪問者の守護者たるべし
  汝、謙虚、誠実であり、嘘偽りを述べるなかれ、汝の誓言に忠実たるべし
  汝、礼儀を守り、寛大に、誰に対しても施しを為すべし
  汝、正義と善の味方となりて、弱き者を尊び護るべし
  汝、いついかなる時もシエンナ騎士の身であることを自覚すべし」

 レイは誓いの文句を訊きながら、先日、夕食後にヴィベールがフラッとやって来て話したシエンナ騎士団に関する話を思い出した。

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