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第1章 シエンナ騎士団

シエンナ騎士団 25

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 先に攻撃を繰り出したのはレイだった。

 それからの二人は、まるで雷鳴が轟くが如く激しく刹那的な斬撃を繰り出した。
 まずレイがランスの盾の上部から頭を狙うように剣を繰り出すと、ランスが素早く盾を持ち上げ反応する。それによりランスの視界を奪ったレイは、本命の一撃を足下に繰り出そうとしたが、それより早くランスの右手が鋭い刺突を繰り出して来た。

 レイはランスの刺突を盾でいなして弾じき、そのままランスに体当たりを食らわせた。ランスが後ろによろめいて、「おおー」と言う声が上がる。しかしランスはそのままレイを抱えると横に投げ飛ばし、稲光の様な斬撃を打ち下ろした。

 レイは転がりながら、かろうじてその一撃を避けた。

「フフ、面白い。貴公とはもう少し楽しみたい所だ。しかし、すぐ終わりにしよう」
「余裕だな」
「……そうではない、私は負けるわけにはいかんのだ」

 ランスは少し悲しそうな表情を見せ「一族のために」と呟いやいた。
 間合いを開けたランスが盾を下ろす。そしてブロードソードをしっかり握りなおすと、低い姿勢で身構えた。

 ……来る! 

 レイも盾を投げ捨てると、ブロードソードを握り直した。モーラとの戦い、ノアとの戦い、2度も見せつけられた疾風迅雷しっぷうじんらいの如きの一撃。そして2度も見ることができたのは幸運だった。レイは静かにランスの一撃に全神経を集中させ、そして決意を固めた。

 ……理由なんて知ったこっちゃねえ。俺はノアの借りを返す!! 絶対叩き落とす!!!!
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