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第4章 禁術の魔法

禁術の魔法 4

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 イーリアの城門は美しく城門の両側にはほっそりととした尖塔があった。その建築美は白幻都市という名に恥じぬ気品を備えていたが、シエンナのゴツく実践的な城壁に見慣れていたレイたちにとっては、いささか心もとないものがあった。

 イーリアの中央に位置する、大広場に向かって大きな道を進んでいくが、通り過ぎる人の姿はなく、あったとしても皆暗い顔をし足速に通り過ぎて行った。

 南のエスト領、南南東のトゥーバル王国、東のエクス=アン=ディーヌとの交易の拠点ともなり、『イーリアの市にくればどんなものでも揃う』と言われる活気はどこにもなく、広場にも市場ではなく簡易に造られた兵舎と野戦病棟があった。

 レイたちが広場に着くと、兵舎から出迎えの者たちが出てくる。

「レイ、ノア、馬車の前にいるのはトーブか? 久しぶりだな。元気か?」

 出迎えの中にビルバがいた。幾分痩せたようにも見え、グレーの髭が伸び頬の部分まで覆っていた。

「後ろの方にモーラとルッカ、ロッカもいる。ビルバこそ大丈夫か?」
「ああ、何とかな。何度か戦場に出たが、何とか耐えて生きてる」
「そうか」
「本当は『ようこそイーリアへ』と言って、活気ある市場とか見せてやりたかったんだが、ここ1週間ぐらいで、みんな他の街へ出て行ったり、閉じこもったり…… まあ、こんな感じさ」

 とビルバが周りを見渡す。

「いよいよ敵が近くまで迫ってきたからな…… それでも皆の顔が見れると嬉しいもんだ」

 そう言いながらビルバは荷馬車から荷物を降ろそうと馬車の後ろに回り幌馬車の後ろの布を開けた。
 
「キャッ!」
「失礼」

 ビルバが慌てて閉める。
 
「少女が乗ってるぞ?」
「ああ、ええ、アルマーマ班長です」とレイが答える。
「?」
「自分とノアとトーブ、そしてアルマーマ班長」
「班長?」とビルバが驚く。
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