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第4章 禁術の魔法

禁術の魔法 18

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 一気に時が動き出す。シエンナ騎士団の皆の目に光が差した。

 アルマーマがレイ、ノア、トーブにぼそりと言う。

「モンペリ軍務長が言うんじゃ仕方ないわ。私も私の任された役目をこなしてここを守る」
「よっしゃ。4人でひとつ。やりましょうアルマーマ班長!」

 トーブが明るく答えた。

「ハイハイ4人でひとつね」

 レイはトーブが勇気を出して言った言葉が無下にされて、実は気落ちしているんじゃないかと思った。何か声をかけてやろうと思った時、アルマーマがパイクの束を抱えて「トーブ ……ちゃんと守りなさいよ。……お願いね」と呟いた。

「もちろんです! 命に変えても!!」

 トーブは勢いよく両腕いっぱいのパイクを抱えよろめいた。

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 天幕の中には、またフェンバッハの怒号が響き渡っていた。

「援軍が~、援軍が~、シエンナの100騎だけだと!!!」

 円卓に叩きつけられた拳が震えている。

「ええ」

 フェンバッハの対面に座っているモンペリが冷静に答えた。ダークブロンドの長髪がハラリと顔にかかる。

「終わりではないか! ムムムム…… 引くぞ、すぐにかかれ」
「お待ちください」
「なんだ」
「ここで引いて イーリアの街に行ったとしても結果は同じ。さらにイーリアに甚大な被害が出るだけです」
「わかっておるわそんなこと! 青二才が!!」
「では……」
「ここで討死せよと申すか? ハッ、馬鹿馬鹿しい引くぞ」
「では、トラヴィスの方々は傭兵を引き連れ、お引きください。ここはシエンナ騎士団で死守します」
「なんだと、そんなことできる訳なかろうが!」
「……」
「……何か策でもあるのか? 小僧」
「日の出と共に戦いが始まります。開戦後2時間、お時間をいただければ」

 フェンバッハは腕を組んでモンペリの話に耳を傾けた。

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