上 下
27 / 245
第1章 シエンナ騎士団

シエンナ騎士団 27

しおりを挟む
 レイの眼前からランスが消えたと共に背中に激痛が走った。回転したランスのブロードソードがその勢いのままレイの背中に打ち付けられたのだった。

 全ては一瞬だった。
 風が後からつきて来た。
 そしてレイは弾かれる様に前に倒れた。

「勝者、ランス!」

 試験官グレーンの一際大きな声が響く。

 レイは圧縮された時間から急に解き放たれ現実に、感覚が麻痺しすぐに実感できなかったが、腕に残る痺れ、背中の焼ける様な痛み、倒れた位置から見える違和感のある風景、周りの喧騒から、試合が終わりそして負けた事を痛感した。立ちあがろうとして声が漏れる。

「負けたのか。 ……戦場ではこれで死んでたんだな」
「死なないさ。戦場では一人で戦うわけじゃないだろ」

 レイが見上げるとノアが脇に立っていた。

「私もいる」

 レイはしばらく黙った後、ノアの言葉を噛み締めて「……ああ」とだけ返事をした。そして立ちあがろうとしたが、全ての力を出し切ったのか足に力が入らずよろめき座り込んだ。
 グレーンが近づいてきて声をかける。

「大丈夫か?」 
「ええまあ」
「そうか。なら、これからすぐ合格者の発表をする。発表が終わったらすぐに医務室に行き背中を見てもらうといい」
「はい」

 合格発表の言葉にノアがピクンと反応した。
 試験官グレーンは踵を返すと、広間中央に移動しランスにも声を掛けた。
 そして、「これから合格発表を行う。皆、その場で聞く様に!」と声を轟かせた。
しおりを挟む

処理中です...