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第5章 メテオストライク

メテオストライク 42

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 シエンナ騎士団の宿舎をでたレイは、その日の晩から宿屋に泊まることとなった。宵闇迫る街のなか、寝るだけの狭い部屋の中に一人。暗闇にたたずみ、はじめて自分が一人になったことを強く実感した。

 ……昔に戻っただけだ。

 胸で輝く輝星石を手に取り見つめる。

 ……いや違う。

 黄蘗の光の中、そこにはシエンナ騎士団で過ごした日々が、そして皆との思い出があった。レイはゆっくりと立ち上がると部屋を出た。


 
 その日の晩は、特別にシエンナ騎士団の食堂でご馳走になることになっていた。トーブの呼びかけに「いや、シエンナ騎士団を辞めた身で行くことはできない」とレイは断りを入れたが、「なにバカなこと言ってんだよ。ノアがシエンナの長官バレンに許可とってもらったんだぞ。来ないと殺すぞ!」とトーブに思いっきり叩かれたのを思い出した。

 食堂に入るとノア、トーブ、アルマーマが待っていた。
 レイが禁術の魔法を使うことは公にされないこととなった。またシエンナ騎士団を離れたことも、まだ知らされてなかったので、今まで通りの食事を今まで通りすることとなる。最後の食事は、キャベツ、ビーツ、玉ねぎ、にんにくなど野菜がふんだんに使われたスープと、ニシンの塩漬け、黒パン、オレンジだった。

「レイ、明日も食べにこない?」

 ノアがニシンの塩漬けを口に運びながら言った。

「明日だったらカツレツだ。いや、ニシンもうまいけどさ……」

 レイは黙って静かに微笑んだ。ノアらしい。

「どのに行くか当てはあるの?」

 アルマーマが尋ねた。

「一度故郷のノースレオウィルに戻ろうと思う。祖母の墓に報告したいし」
「そう」

 アルマーマは少し身を乗り出し小声で囁いた。

「で、魔法の方はどうするの?」
「どうもこうも、自分ですこしずつやっていくしか……」
「そんな甘くないわよ」
「……」

 レイは返す言葉がなく頭をかいた。

「これ」

 とアルマーマが丸まった羊皮紙を取り出しレイに渡した。

「セイセルー様から」
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