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エピローグ1
エピローグ1 1
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雲の切間から日が射したのか、書物に囲まれたセイセルー部屋の中に光の筋が差し込んだ。書庫のような独特な匂いが、温められた部屋の中で一層きわだって薫る。
トーブとアルマーマは、そんな微睡ただようセイセルーの部屋の中で片隅の椅子に腰掛けすわっていた。セイセルーは定位置といった窓際で外を眺めている。やがて、トーブとアルマーマの方に向き直ると口を開いた。
「君たち二人にはしばらく修行に出てもらおうかな。ノースレオウィルの北の孤島ルーザデールに行ってきてよ。はいコレ推薦状」
そう言って、二つの丸まった羊皮紙を差し出した。
「ノースレオウィル、ルーザデールっていうと……」トーブが羊皮紙を受け取り聞く。
「そうだよ。レイ君が向かったところ。ちゃんと向かってればね」
「いいんですか?」
「いいも何も。シエンナの魔法使いはあそこで鍛えてもらってるんだよ。アルマーマちゃんのお姉ちゃん、パルマーマちゃんも、もっと言えば、カディフのじっちゃんさえ」
「お姉ちゃんが修行して帰ってきたところって」
アルマーマが身を乗し勢いよく聞いた。
「そうだよ。ルーザデールさ」
「そうですか」と言ってアルマーマは羊皮紙を開いた。そして、「行きたいです!」とはっきり強い口調で言った。
セイセルーはニコリとしたあと、少し目を逸らすように天井を向いた。
「あー、だが、ちょっと、ただでは行かしてあげられなくてね」
そう言うと、スッとセイセルーの隣に長い黒髪のアヌシビが現れた。サラリとした髪の縁を窓からの光が滑り落ちていく。今の今まで全く気配を感じさせなかったアヌシビが、今度は圧倒的な存在感をもって周りの雰囲気を支配した。
「二人に特別任務を言い渡します」
温かな部屋にアヌシビの冷静な声が染み渡る。
トーブとアルマーマは、そんな微睡ただようセイセルーの部屋の中で片隅の椅子に腰掛けすわっていた。セイセルーは定位置といった窓際で外を眺めている。やがて、トーブとアルマーマの方に向き直ると口を開いた。
「君たち二人にはしばらく修行に出てもらおうかな。ノースレオウィルの北の孤島ルーザデールに行ってきてよ。はいコレ推薦状」
そう言って、二つの丸まった羊皮紙を差し出した。
「ノースレオウィル、ルーザデールっていうと……」トーブが羊皮紙を受け取り聞く。
「そうだよ。レイ君が向かったところ。ちゃんと向かってればね」
「いいんですか?」
「いいも何も。シエンナの魔法使いはあそこで鍛えてもらってるんだよ。アルマーマちゃんのお姉ちゃん、パルマーマちゃんも、もっと言えば、カディフのじっちゃんさえ」
「お姉ちゃんが修行して帰ってきたところって」
アルマーマが身を乗し勢いよく聞いた。
「そうだよ。ルーザデールさ」
「そうですか」と言ってアルマーマは羊皮紙を開いた。そして、「行きたいです!」とはっきり強い口調で言った。
セイセルーはニコリとしたあと、少し目を逸らすように天井を向いた。
「あー、だが、ちょっと、ただでは行かしてあげられなくてね」
そう言うと、スッとセイセルーの隣に長い黒髪のアヌシビが現れた。サラリとした髪の縁を窓からの光が滑り落ちていく。今の今まで全く気配を感じさせなかったアヌシビが、今度は圧倒的な存在感をもって周りの雰囲気を支配した。
「二人に特別任務を言い渡します」
温かな部屋にアヌシビの冷静な声が染み渡る。
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