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第5章 メテオストライク

メテオストライク 51

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 ノアは静かにつぶやくと、もう一度オレンジ色の光を放つ輝星石を見つめた。しばらく見つめたあと「うん」と納得すると、レイを強く引き寄せた。寝転んだノアにレイが覆いかぶさる。

 草原の上をサラサラと風が吹く。星が何度も瞬く間、黄蘗きはだの光を放つレイのペンダントと、オレンジの光を放つ輝星石が混じり合うように強い光を放っていた。

「理屈はいいや。どこに導かれるかも分からないけど。私は、この輝星石を持ってトラヴィスへ行くよ。この輝星石はいつかレイのところへ導いてくれる。勝手にそう思うことにする」

 レイが微笑むと、ノアはもう一度レイを引き寄せた。

「私はトラヴィスに行く、そこで生きる。だからレイも生きて。必ず」
「必ず! 互いに」
「うん。……だけど、レイの背中は預かっとくよ」
「?」
「シエンナの中庭で言ったろ。何かあったら、背中を預けてくれるんでしょ」
「……」
「離れていても預かるよ。どうしようもない時は駆けてく。まかせて」
「そして、ノアはいつだったか、『私もいる』って言ってくれたな」
「レイは『それは、俺もいるってことだ』って言ってくれたよ」
「ああ、俺もいる。俺も駆けていく。何があっても助ける。助けるための力を欲したんだ。……そのための力だ。先の見えぬ道だが、俺はこの力を習得し皆を助ける。もちろんノアのことも」

 レイは自分の手を見つめ握りしめた。

「行こう。互いの道へ」

 レイの言葉に、ノアは静かに頷いた。
 レイがそっとノアの手を取りにぎると、ノアが強くにぎりかえす。
 二人はそのまま手を繋ぎ、夜空に輝く星々を黙って見上げ寝転んでいた。
 草原の上には二つ、まるで輝く星のように、レイとノアの輝星石が静かに煌めいていた。
 



第5章「メテオストライク」Fin
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(少し長いエピローグ(エピローグ1、エピローグ2)に続きます。)
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