上 下
243 / 245
エピローグ2

エピローグ2 10

しおりを挟む
 手紙を書こうとして、ノアはなんとなくレイの気持ちが分かった。なんと書けば良いのかわからないのだ。言葉にするとどの言葉も嘘になる。うまく言葉にできない。何を書いても、うまく伝えられる気がしなかった。
 
 それに時間がなかった。なんとか手紙、ペン、封筒は用意したものの、レンシア嬢始め、みんなの服装を用意し、お忍びで出かける支度をしていたら、何も書かぬうちに時間になってしまった。ノアは気落ちしながら、酒場に向かい席に着いた。一番奥にレンシア嬢に座ってもらい、両端を兵士長ルヴィエ、シャルル、ノアで固めた。

 軽い食事を頼むと、すぐにサンタンの演奏が始まった。
 トラヴィスの伝統音楽をギターで鮮やかに奏でていく。弾けるような音がなり、みな魅了されていたが、ノアだけは頭を悩ませ続けていた。ペンを持ち静かに手紙を書く。

「レイ。 サンタンから手紙もらったよ。良かった無事で、私はトラヴィスで元気にやっています。何かレイに書こうと思うけど、何を書けばいいのか分かんないや。この気持ちはとても手紙に収まりそうにないし、時間もないんだ。サンタンはすぐにいってしまう」

 当たり障りのないことを書いて、フーとため息をついた。もっと書きたいことはいろいろあるのに、あり過ぎてまとめることができなかった。
しおりを挟む

処理中です...