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ヒーローショーのこと
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約束当日、いつも通りにダイニングに向かうと、既に兄がコーヒーを飲んでいた。
「おはよう、もうすぐハムトーストが焼けるから、顔を洗っておいで。」
兄に言われた通り、顔を洗って、そのあと二人でハムトーストを食べる。そして身支度を整えてから、仏壇に「行ってきます」と二人で声をかけて、家を出た。外ははなまるをつけても良いのではと思うほどの晴天で、兄の運転する車の中のラジオでは、あの事件の話題が流れてきた。
「犯人、捕まらないね。」
「うん、にいちゃん達も頑張ってはいるんだけどね。」
苦笑する兄、どうやら世間が思っている以上に今回の事件は大変なようだ。
「今回はにいちゃんも織機さん……上司の人と一緒に目星を付けて張り込んでてさ。読みは当たったんだけど、織機さんとにいちゃんの二人掛かりだったのに振り切られて……女の子は無事だったから、良かったような……。」
二日前の夜の事で、またもや学校帰りの女子生徒が狙われた。警察がすぐに犯人に掴みかかったため、犯人はすぐに逃げ、その子は無事だった。と言うのはニュースで見たので知っていた。しかしその警察が兄とその上司だったと言うのは初耳だ。
「怪我とかなかった?」
「うん。織機さんもにいちゃんも怪我はないよ。今日は織々さんはもう一度現場検証に行くって言ってたし、今日は休んどけーだって。父さんや母さんも来れたら良かったけど、父さん、今回の事件でかなり忙しいし、母さんは母さんで今日どうしても外せない仕事があるって言ってたからね。」
「お母さんとお父さんは仕方ないよ。」
二人とも、忙しいから、と言うと兄からは「そうだね」と返ってきた。
遊園地に着いたのはお昼少し前で、ヒーローショーは午前の部と午後の部に分かれており、午後の部が一時間後だそうだ。兄と私は、遊園地の中にある、レストランで昼食を食べ、それからショー会場に向かった。吹き抜けのテント状になっている会場にはベンチが並んでおり、小さい子から大人までたくさんの人が既に座ってショーを心待ちにしていた。
「ここって……。」
「懐かしいでしょ?じいちゃんと三人で来たとき、まだ藤華小さかったけど覚えてる?」
「うん、はっきりと全部ではないけど、お兄ちゃんとおじいちゃんと三人でここに来たのは覚えてるよ。」
あの時は前の方の席に早くから座って三人で観たのだ。大興奮で応援する兄と私。内容はいまいち思い出せないが、すごく楽しかった。
「実はね、今回のショー、あの時のヒーローが来るんだよ。この前、話してた時にその話になって、今日やるって教えてもらってね。藤華と見に来たいなって思ってたんだ。」
あの時コソコソと話していたのはできるだけ私を驚かせたかったからだったそうだ。
「藤華、にいちゃんが高校入るくらいからずっと遠慮してたでしょ?確かにあの時忙しかったし、その後警察学校の寮に入っちゃったから、仕方なかったのかなぁとか思ったりはしたんだけど、やっぱり、寂しいからさ。すぐにとは言わないけど、もっとにいちゃんにわがまま言ったりしてくれたら嬉しいなぁ。」
無理にとは言わないから、少しずつね。と柔らかく笑う兄に頷く。ずっと前から兄は気がついていたらしい。だが、学校や仕事でタイミングが合わず、帰ってきても私が気を使ってそこまで話さなかったため、共通の話題も見当たらず、言おう、言おうと思うだけでズルズルと後回しになっていたそうだ。
「ボス達に感謝しなくちゃね。」
「ボス達の方が藤華と仲良いのなんか納得いかないなぁ。」
「そんなこと言ってる間に始まるよ。お兄ちゃん。」
開始時間にマイクを持ってステージ上に現われたのはテレビさんだった。最初こそいつも我が家で見かけるお茶目なテレビさんの声で注意事項を説明していたが、説明が終わるなり、豹変、と言う言葉が似合いそうな勢いで声が変わった。結論から言うと、確かに彼らは悪役だった。いつもの姿を知っているからこそなのかも知れないが、そう、実感させられたのだ。相手役のヒーローは稲妻の騎士、ボルト。名前通りの電光石火でヒラ社員もとい戦闘員たちを倒し、ボスとの一騎討ちに持ち込む。
『これで終わりだ!サンダーストラァーイク!!』
本当に稲妻がボルトの手のひらから発射されるような演出に最近の演出ってすごいなあ、などと感心する。ボスが退場して、正義は必ず勝つ、と言うスタイルで終わる。
「結構面白かったね。」
「うん。」
兄も思っていたところは一緒だったようで、演出の話から、彼らは本当に悪の秘密結社してたんだね、と言う話になった。普段の我が家での彼らからは考えられなかったが、本物だった。
「グッズ販売もしてたね……。」
「リリィさん、凄いコア?なファンが居たね……。」
下敷きや鉛筆のほか、Tシャツなども客席の後ろ側で売られていた。ヒーローグッズに負けず劣らずの人気がありそうだ。リリィさんの。
「そういえば、ボルト、耳の辺りの飾りが少し欠けてたけど、どうしたんだろう。」
「んー、前のショーとかでアクションした時にぶつけちゃったんじゃないかな?」
「そうかなぁ。あ、でも数日前にも別の所で他のヒーローと共同でヒーローショーしてたし、修理が間に合わなかったのかもね」
「そうかもね」
結構壊れやすいものなのかなぁ、形も複雑だし。ともらってきていたチラシを眺めながら兄は首を傾げていた。
ショーの後は遊園地を二人で満喫し、夕飯はファミレスで食べた。夜の間、兄が職場に呼び出されることもなく、彼は次の日、私が家を出るのと同じ時間に職場へ向かった。
「おはよう、もうすぐハムトーストが焼けるから、顔を洗っておいで。」
兄に言われた通り、顔を洗って、そのあと二人でハムトーストを食べる。そして身支度を整えてから、仏壇に「行ってきます」と二人で声をかけて、家を出た。外ははなまるをつけても良いのではと思うほどの晴天で、兄の運転する車の中のラジオでは、あの事件の話題が流れてきた。
「犯人、捕まらないね。」
「うん、にいちゃん達も頑張ってはいるんだけどね。」
苦笑する兄、どうやら世間が思っている以上に今回の事件は大変なようだ。
「今回はにいちゃんも織機さん……上司の人と一緒に目星を付けて張り込んでてさ。読みは当たったんだけど、織機さんとにいちゃんの二人掛かりだったのに振り切られて……女の子は無事だったから、良かったような……。」
二日前の夜の事で、またもや学校帰りの女子生徒が狙われた。警察がすぐに犯人に掴みかかったため、犯人はすぐに逃げ、その子は無事だった。と言うのはニュースで見たので知っていた。しかしその警察が兄とその上司だったと言うのは初耳だ。
「怪我とかなかった?」
「うん。織機さんもにいちゃんも怪我はないよ。今日は織々さんはもう一度現場検証に行くって言ってたし、今日は休んどけーだって。父さんや母さんも来れたら良かったけど、父さん、今回の事件でかなり忙しいし、母さんは母さんで今日どうしても外せない仕事があるって言ってたからね。」
「お母さんとお父さんは仕方ないよ。」
二人とも、忙しいから、と言うと兄からは「そうだね」と返ってきた。
遊園地に着いたのはお昼少し前で、ヒーローショーは午前の部と午後の部に分かれており、午後の部が一時間後だそうだ。兄と私は、遊園地の中にある、レストランで昼食を食べ、それからショー会場に向かった。吹き抜けのテント状になっている会場にはベンチが並んでおり、小さい子から大人までたくさんの人が既に座ってショーを心待ちにしていた。
「ここって……。」
「懐かしいでしょ?じいちゃんと三人で来たとき、まだ藤華小さかったけど覚えてる?」
「うん、はっきりと全部ではないけど、お兄ちゃんとおじいちゃんと三人でここに来たのは覚えてるよ。」
あの時は前の方の席に早くから座って三人で観たのだ。大興奮で応援する兄と私。内容はいまいち思い出せないが、すごく楽しかった。
「実はね、今回のショー、あの時のヒーローが来るんだよ。この前、話してた時にその話になって、今日やるって教えてもらってね。藤華と見に来たいなって思ってたんだ。」
あの時コソコソと話していたのはできるだけ私を驚かせたかったからだったそうだ。
「藤華、にいちゃんが高校入るくらいからずっと遠慮してたでしょ?確かにあの時忙しかったし、その後警察学校の寮に入っちゃったから、仕方なかったのかなぁとか思ったりはしたんだけど、やっぱり、寂しいからさ。すぐにとは言わないけど、もっとにいちゃんにわがまま言ったりしてくれたら嬉しいなぁ。」
無理にとは言わないから、少しずつね。と柔らかく笑う兄に頷く。ずっと前から兄は気がついていたらしい。だが、学校や仕事でタイミングが合わず、帰ってきても私が気を使ってそこまで話さなかったため、共通の話題も見当たらず、言おう、言おうと思うだけでズルズルと後回しになっていたそうだ。
「ボス達に感謝しなくちゃね。」
「ボス達の方が藤華と仲良いのなんか納得いかないなぁ。」
「そんなこと言ってる間に始まるよ。お兄ちゃん。」
開始時間にマイクを持ってステージ上に現われたのはテレビさんだった。最初こそいつも我が家で見かけるお茶目なテレビさんの声で注意事項を説明していたが、説明が終わるなり、豹変、と言う言葉が似合いそうな勢いで声が変わった。結論から言うと、確かに彼らは悪役だった。いつもの姿を知っているからこそなのかも知れないが、そう、実感させられたのだ。相手役のヒーローは稲妻の騎士、ボルト。名前通りの電光石火でヒラ社員もとい戦闘員たちを倒し、ボスとの一騎討ちに持ち込む。
『これで終わりだ!サンダーストラァーイク!!』
本当に稲妻がボルトの手のひらから発射されるような演出に最近の演出ってすごいなあ、などと感心する。ボスが退場して、正義は必ず勝つ、と言うスタイルで終わる。
「結構面白かったね。」
「うん。」
兄も思っていたところは一緒だったようで、演出の話から、彼らは本当に悪の秘密結社してたんだね、と言う話になった。普段の我が家での彼らからは考えられなかったが、本物だった。
「グッズ販売もしてたね……。」
「リリィさん、凄いコア?なファンが居たね……。」
下敷きや鉛筆のほか、Tシャツなども客席の後ろ側で売られていた。ヒーローグッズに負けず劣らずの人気がありそうだ。リリィさんの。
「そういえば、ボルト、耳の辺りの飾りが少し欠けてたけど、どうしたんだろう。」
「んー、前のショーとかでアクションした時にぶつけちゃったんじゃないかな?」
「そうかなぁ。あ、でも数日前にも別の所で他のヒーローと共同でヒーローショーしてたし、修理が間に合わなかったのかもね」
「そうかもね」
結構壊れやすいものなのかなぁ、形も複雑だし。ともらってきていたチラシを眺めながら兄は首を傾げていた。
ショーの後は遊園地を二人で満喫し、夕飯はファミレスで食べた。夜の間、兄が職場に呼び出されることもなく、彼は次の日、私が家を出るのと同じ時間に職場へ向かった。
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