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第二怪
拝み屋業はつらいよ5
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「まぁ、何はともあれきちんと教えていなかった私に責任はあるからね。こうやってはるばるジャパンまであの子を迎えに来たのサ」
「迎えに来てくれないとむしろ困るわアホ。流石にアンタの時のように何ヶ月も面倒は見てやれん。こっちもあっちゃこっちゃで色々起きてて手一杯でね」
「おや?それは私が貸しを作るチャンスかな?」
「馬鹿言え。それ以前にアンタにはどデカい貸しが沢山あるぜ?」
「それもそうだねぇ、冗談さ。冗談」
冗談だよ、とウィンクをキメるとケイジさんはテーブルの上にあった枝豆に手を伸ばした。一旦話し合いが終わったと言うか、礼儀と言うべきか、私にはよくわからないが一通りの話が終わったあと、彼らはまっちゃんお手製のツマミを肴に晩酌を始めたのだ。私はというと、お酒は飲めないのでおつまみだけご相伴に預かっている。
「そう言えば、あれって夕方の事案だから……ん?あれ?」
「どうかしたかね?お嬢さん」
「いや、ケイジさんってイギリスから来たんですよね?」
私がそう質問するとさも当たり前であるというようにケイジさんは「そうだよ?」と肯定した。
「それならいくらなんでも早すぎません?イギリスから日本まで何時間かかるかよく知らないけど……かなり遠くないですか?飛行機で来るにしてもチケット取って云々ってしてたら、その」
「今頃まだ飛行機か、はたまた、まだロンドン空港に居るか、という事かな?」
「そうです」
頷く私に彼は「ふむ」と少し何かを考えるような素振りを見せたあと彼方の方を見た。
「まだこの子にはゲートの事は教えてないのかね?」
「ゲート?ああ、そっちじゃそう呼ぶんだったか?あれは今調節中でな、不慣れなやつが触るとホノルルまで飛ばされる可能性しかない」
「ああ……君またそういう事をしていたんだねぇ……いや待てホノルル?ついに国外に無理やり繋いだのかい?」
「違ぇよ、ちょちょっといじってたら繋がっちまったのさ。しかも片道切符ときたもんだ」
「そんなまた手荒な事を……そんなに荒い術式に引っかかるものなんて居ないだろうに」
「それが居たんだなぁ。数回既に引っかかったやつがよ」
「えっマジ?」
スルメを噛みながらそう言う彼方と何とも言い難い複雑さが顔ににじみ出ているケイジさん、そして私は置いてけぼりだ。ケイジさんは「ホノルル送りかぁ……」と何とも複雑な気持ちのようだが、私の方を振り返ると
「我々は、というより昔から続く系統のエクソシストやら彼らはゲート、こちらでは扉、って呼ばれてたかな?そういったものを使って行き来することが出来るんだよ。まぁ、そのうち彼女が教えてくれるそうだから、それを待っててね」
と苦笑を浮かべていた。
「代わりと言ってはなんだが、我々悪魔祓いの話でもしようじゃないか。悪い話ではないと思うんだが、どうかな?」
「いいんですか?」
「勿論だとも。若い芽にはきちんと水を注ぐのが私のポリシーだからね」
ケイジさんはウィンクをするとどこからともなく年季の入ったトランクケースを取り出してきた。
エクソシスト、悪魔祓いなどと呼ばれる、いわば西洋の拝み屋。彼らは名前の通り悪魔を祓うこと、魔祓いを主な仕事としているのだそうだ。
「我々悪魔祓いはこの様にトランクケースに道具を入れて持ち運んでいるんだ。まぁ、魔術師の輩達も似たような方法で物を持ち運ぶ節があるから、これはお国柄かもしれないね」
トランクケースを開けるとそこには良く手入れされた短剣、何かの、おそらくは薬草と思われる草を乾燥させたもの、液体の入ったガラス瓶などが丁寧に仕舞われていた。
「私はどちらかというと、物は丁寧に片付けたいタイプでね。人によってやはり持ち物も様々なんだよ。この鞄はうちの伝統的なやり方に則ったものを入れているから、まぁ、基礎に近いのかな」
そう言うとケイジさんはひとつひとつ、中に入っていたものの説明をしてくれる。やはり悪魔祓いと言うだけあって聖水やロザリオと言ったものは欠かせないのだと言う。
「悪魔祓い、と言うように、私達の仕事は主に人に悪い事をしたり、取り憑いた悪魔を祓うことだ。ジャパンに来て最初に驚いたのは彼らが人知れず共存していたことだったなぁ。ああ、そうだ、あの頃はダイゴロウ、君のお爺さんになるんだっけ?彼も居たし、驚く事ばかりだったよ。何せ、僕らの国では彼らは相容れない退治するものという認識でしかないからね」
「えっ、ケイジさんってじいちゃんと一緒に修行してたんですか?」
そう聞くと彼は少しだけ笑って「A little」とジェスチャーしながら言った。
「私達エクソシストもそうだが、君達陰陽師は、彼らと共に生きている様なものだ。だけど、彼らはヒトじゃない。同じように感情もあれば、言葉だって通じる。でもね、だからといって彼らと同じように生きる事はできないし、考え方の違いはある。それは人間も変わらないかもしれないけれど……今は分からずとも、いつかわかる日が来るさ。だから、忘れちゃいけないよ。彼らと私達は別種の生き物だと言うことを、ね」
彼はほんの少し、何かを思い出すような表情を見せたあと、グラスに残っていた少しばかりの日本酒を飲み干し、「私の場合はそれを君のお爺さん、ダイゴロウに教わったんだけどねぇ」と付け足した。
「迎えに来てくれないとむしろ困るわアホ。流石にアンタの時のように何ヶ月も面倒は見てやれん。こっちもあっちゃこっちゃで色々起きてて手一杯でね」
「おや?それは私が貸しを作るチャンスかな?」
「馬鹿言え。それ以前にアンタにはどデカい貸しが沢山あるぜ?」
「それもそうだねぇ、冗談さ。冗談」
冗談だよ、とウィンクをキメるとケイジさんはテーブルの上にあった枝豆に手を伸ばした。一旦話し合いが終わったと言うか、礼儀と言うべきか、私にはよくわからないが一通りの話が終わったあと、彼らはまっちゃんお手製のツマミを肴に晩酌を始めたのだ。私はというと、お酒は飲めないのでおつまみだけご相伴に預かっている。
「そう言えば、あれって夕方の事案だから……ん?あれ?」
「どうかしたかね?お嬢さん」
「いや、ケイジさんってイギリスから来たんですよね?」
私がそう質問するとさも当たり前であるというようにケイジさんは「そうだよ?」と肯定した。
「それならいくらなんでも早すぎません?イギリスから日本まで何時間かかるかよく知らないけど……かなり遠くないですか?飛行機で来るにしてもチケット取って云々ってしてたら、その」
「今頃まだ飛行機か、はたまた、まだロンドン空港に居るか、という事かな?」
「そうです」
頷く私に彼は「ふむ」と少し何かを考えるような素振りを見せたあと彼方の方を見た。
「まだこの子にはゲートの事は教えてないのかね?」
「ゲート?ああ、そっちじゃそう呼ぶんだったか?あれは今調節中でな、不慣れなやつが触るとホノルルまで飛ばされる可能性しかない」
「ああ……君またそういう事をしていたんだねぇ……いや待てホノルル?ついに国外に無理やり繋いだのかい?」
「違ぇよ、ちょちょっといじってたら繋がっちまったのさ。しかも片道切符ときたもんだ」
「そんなまた手荒な事を……そんなに荒い術式に引っかかるものなんて居ないだろうに」
「それが居たんだなぁ。数回既に引っかかったやつがよ」
「えっマジ?」
スルメを噛みながらそう言う彼方と何とも言い難い複雑さが顔ににじみ出ているケイジさん、そして私は置いてけぼりだ。ケイジさんは「ホノルル送りかぁ……」と何とも複雑な気持ちのようだが、私の方を振り返ると
「我々は、というより昔から続く系統のエクソシストやら彼らはゲート、こちらでは扉、って呼ばれてたかな?そういったものを使って行き来することが出来るんだよ。まぁ、そのうち彼女が教えてくれるそうだから、それを待っててね」
と苦笑を浮かべていた。
「代わりと言ってはなんだが、我々悪魔祓いの話でもしようじゃないか。悪い話ではないと思うんだが、どうかな?」
「いいんですか?」
「勿論だとも。若い芽にはきちんと水を注ぐのが私のポリシーだからね」
ケイジさんはウィンクをするとどこからともなく年季の入ったトランクケースを取り出してきた。
エクソシスト、悪魔祓いなどと呼ばれる、いわば西洋の拝み屋。彼らは名前の通り悪魔を祓うこと、魔祓いを主な仕事としているのだそうだ。
「我々悪魔祓いはこの様にトランクケースに道具を入れて持ち運んでいるんだ。まぁ、魔術師の輩達も似たような方法で物を持ち運ぶ節があるから、これはお国柄かもしれないね」
トランクケースを開けるとそこには良く手入れされた短剣、何かの、おそらくは薬草と思われる草を乾燥させたもの、液体の入ったガラス瓶などが丁寧に仕舞われていた。
「私はどちらかというと、物は丁寧に片付けたいタイプでね。人によってやはり持ち物も様々なんだよ。この鞄はうちの伝統的なやり方に則ったものを入れているから、まぁ、基礎に近いのかな」
そう言うとケイジさんはひとつひとつ、中に入っていたものの説明をしてくれる。やはり悪魔祓いと言うだけあって聖水やロザリオと言ったものは欠かせないのだと言う。
「悪魔祓い、と言うように、私達の仕事は主に人に悪い事をしたり、取り憑いた悪魔を祓うことだ。ジャパンに来て最初に驚いたのは彼らが人知れず共存していたことだったなぁ。ああ、そうだ、あの頃はダイゴロウ、君のお爺さんになるんだっけ?彼も居たし、驚く事ばかりだったよ。何せ、僕らの国では彼らは相容れない退治するものという認識でしかないからね」
「えっ、ケイジさんってじいちゃんと一緒に修行してたんですか?」
そう聞くと彼は少しだけ笑って「A little」とジェスチャーしながら言った。
「私達エクソシストもそうだが、君達陰陽師は、彼らと共に生きている様なものだ。だけど、彼らはヒトじゃない。同じように感情もあれば、言葉だって通じる。でもね、だからといって彼らと同じように生きる事はできないし、考え方の違いはある。それは人間も変わらないかもしれないけれど……今は分からずとも、いつかわかる日が来るさ。だから、忘れちゃいけないよ。彼らと私達は別種の生き物だと言うことを、ね」
彼はほんの少し、何かを思い出すような表情を見せたあと、グラスに残っていた少しばかりの日本酒を飲み干し、「私の場合はそれを君のお爺さん、ダイゴロウに教わったんだけどねぇ」と付け足した。
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