木積さんと奇怪な日常

浅木宗太

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第四怪

逢魔ヶ刻に逢いまして候3

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彼方はよく笑う。河井荘に住んでる彼らは表情が皆々豊かであると思っているがその中でも彼方はよく笑うのだ。ケラケラと笑うその姿はいつだって彼女以外の何物でもない。そういう笑顔なのだ。
例外としてまっちゃんの様に真面目に全く表情が読めない(彼はいつだって微笑を称えている)人も居るが、妖怪というのはわりかし表情が豊かな生き物のようだ。
よく笑うし、怒る時は怒るし、かと思えば私のような小童には分からない感情を乗せた表情をうかべる。
彼らの事は私にはまだまだ分からないが、きっと彼らが妖怪だから、と言うだけが理由ではないのだろう。と、そう思っている。
「そのはなしかさん?は妖怪になったの?」
「いいや、あいつはヒトのままさ。要は幽霊ってやつだな。あの世に行かず、化野で居を構え、怪談噺をつくってる。ただ、それだけだ」
ただ、それだけだと告げる彼女の「それだけ」はきっと私とは違う意味を持つのだろう。しかし、だからこそあえて聞くのだ。
「それは、ずっと同じ存在であり続ける、って事?」
そう聞けば彼女はほんの少しだけ笑みを浮かべる。こういう時の彼女の笑みはいつだって、ほんの少しだけ寂しい。
「いいや、感性がある以上、ずっと同じであり続ける事は無理だ」
まぁその辺は戻って話すとして、そろそろ河井荘に戻ろうぜ。そう言うと彼女はほんの少し、伸びをしていまだに突き刺さったままの大鋏に腰をかけていた怪人に簡単な挨拶を済ませると先に歩き始めてしまう。
「あ、待ってよ彼方」
急いで彼方を追いかける私を霧崎さんが眺めていたのなど全く知る由もなかった。



「まったく、何度目だろうと人間の相手は慣れねぇ」
彼はそう言うとガリガリと頭をかいた。包帯から覗く世辞にも人のいいとは言えない、鋭い瞳は月明かりをうけて怪しく輝いている。
「まぁまぁ、霧崎ちゃん。そんな事言わないでもう少しだけ、あの子達のことを見守ってあげようよ。ね?」
彼にそう穏やかな笑みとともに告げれば少しは嫌そうな顔をするけれど何も言わない。彼が何も言わない時は大体、好きにしろと言う時だと言うのを知っている彼にとってはいつもの事だ。
この妖は心配しているのだ。しかしそれを口に出したり、表情に出せるほど器用な輩ではない。
「人間なんざ、すぐ居なくなっちまう。それを何度繰り返しゃあ良いんだ」
「彼らが居なくなったとしても、私は君のそばに居るけれどな」
「てめえの場合は勝手にだろうがよ。群青」
群青、と呼ばれ楽しげに目を細める彼に霧崎はため息をひとつ吐く。
「そう言いながら払い除けすらしないじゃないか。霧崎ちゃんは優しいね」
「お前がそう思ってるからだろうが。あとちゃん付けすんな」
いつものお決まりの文句に、彼はまた楽しげに笑った。
「そうでなくたって、君は優しいさ。それが君なのだから」
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