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女子高生、異世界へ行く。
魔術師と一般人4
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結果から言えば、線香花火っていうか火花までは漕ぎ着けた。本当ならパチパチパチ……とたくさんの繊細な火花が舞う姿が見たかったのだが、私の場合、なんと言うか……こう……バチバチッ!ボトッ!という擬音が良く似合う火花だった。
ダレンさんとの生活も一週間もすれば、勝手がわかってくる。大魔術師、等と呼ばれているというこの爺さんだが、とにかく健脚で、フィールドワーク大好き爺なのだ。魔術の研究はその副産物であると本人すらぶっちゃけた。
「そいつのしたい事と、才能と、行動の結果と言うのはいつも連動しておるとは限らん。儂の場合ちょいとばかし、魔術の才があっただけだな」
とは本人談である。ついでに「お前さんの場合、魔術の才は突出しておらんが別に落第点というわけでも無さそうだ。中の中だな」とご丁寧に付け足した。知ってるやい。
話は全然変わるが、今日はとても天気が良い。そう、天気が良いのだ。
朝、だいたい六時に起きて朝ごはんの支度をしていると、今日も元気な爺が肩掛けカバンを手にこう言った。
「フィールドワークに行くぞ」
と。
おかげさまで私は今、迷宮の中を歩いている。数歩前には元気な爺がフィールドワーク用のマントを着て歩いているし、熱帯雨林気候のぬかるんだ地面と所々突き出た大きな岩が私の足腰の筋肉をダイレクトに攻撃してくる。
「どこまで行くん、ですか!ダレンさん!」
「とりあえず、地下二階だな!この前の蜥蜴は覚えとるだろう!あの原因の対処が終わったそうだからお前さんと儂の二人でも何とかなるぞ!」
既に息が上がり気味の私と対照的に元気もりもりの爺さんは「お前さんは戦力にならんから儂一人だな!」と豪快に笑った。
「なーに、ちょっとしたハイキングみたいなもんだ。それ以上下の階には行かないしな」
そういう問題では無いのだが、歳に見合わない機敏さで老人は進んでいく。そろそろ足の限界を超えるのではないかと懸念し始めた頃、老人の歩みが止まった。
「おーや、雷のご老人お久しぶりですねぇ~」
朗らかな(それでいて胡散臭い)笑みを湛えた青年が木にぶら下がっていた。
「あ、よかったら助けていただけません?降りれなくなっちゃって」
さもちょっと困ってるんです~と言うような声色のその人の足元には少し前に見かけたあの蜥蜴がスタンバイしていた。
私もダレンさんも絶句である。
蝙蝠の様にぶら下がっている青年はと言うと、「早く助けてください~」とどこか抜けた声音で助けを求めている。
暫くそんな様子を眺めていたダレンさんだったが、ため息を吐くと、簡易式の呪文を唱え、雷槍を創り出す。そしてそのまま発射すれば、反応する暇さえ与えられなかった蜥蜴は易々と地に伏せた。
「いや~ありがとうございます。グッドタイミングでしたねぇ!はい!」
木から降りてきたその人は笑みを浮かべたままである。
「……お前さんなら儂を頼るまでもなかったろうに」
「いえいえ。こう見えてもワタクシ、今戦えませんので、食べられるのは困るしどうするかとなやんでたんですよ?ああ、助けて頂けたので何かしら差し上げますが、何がよろしいですか?」
どこか芝居がかった動きだなぁ、と思っている間にもその人はどこからか取りだした敷物の上に、木の下に置いてあった荷物から取り出した物を並べ始める。笑みを絶やさないため、胡散臭さはあるものの、シュッとした目鼻立ちに白と黒の髪を束ねたゆったりとした三つ編み、長いローブから出た細い腕や脚。紛れもない美形である。
「こちらのブローチとかどうです?」
「どさくさ紛れて呪物を売ろうとするな。このトンチキめ」
「いいじゃないですか、北の迷宮で見つかった代物ですよ?」
「だとしてもいらん」
「そこで何してんだこの人達って顔したお孫さんだかお弟子さんどうです?」
「あ、いや……いいです……」
これは紛れもなく(様子のおかしなタイプの)美形である。
ダレンさんとの生活も一週間もすれば、勝手がわかってくる。大魔術師、等と呼ばれているというこの爺さんだが、とにかく健脚で、フィールドワーク大好き爺なのだ。魔術の研究はその副産物であると本人すらぶっちゃけた。
「そいつのしたい事と、才能と、行動の結果と言うのはいつも連動しておるとは限らん。儂の場合ちょいとばかし、魔術の才があっただけだな」
とは本人談である。ついでに「お前さんの場合、魔術の才は突出しておらんが別に落第点というわけでも無さそうだ。中の中だな」とご丁寧に付け足した。知ってるやい。
話は全然変わるが、今日はとても天気が良い。そう、天気が良いのだ。
朝、だいたい六時に起きて朝ごはんの支度をしていると、今日も元気な爺が肩掛けカバンを手にこう言った。
「フィールドワークに行くぞ」
と。
おかげさまで私は今、迷宮の中を歩いている。数歩前には元気な爺がフィールドワーク用のマントを着て歩いているし、熱帯雨林気候のぬかるんだ地面と所々突き出た大きな岩が私の足腰の筋肉をダイレクトに攻撃してくる。
「どこまで行くん、ですか!ダレンさん!」
「とりあえず、地下二階だな!この前の蜥蜴は覚えとるだろう!あの原因の対処が終わったそうだからお前さんと儂の二人でも何とかなるぞ!」
既に息が上がり気味の私と対照的に元気もりもりの爺さんは「お前さんは戦力にならんから儂一人だな!」と豪快に笑った。
「なーに、ちょっとしたハイキングみたいなもんだ。それ以上下の階には行かないしな」
そういう問題では無いのだが、歳に見合わない機敏さで老人は進んでいく。そろそろ足の限界を超えるのではないかと懸念し始めた頃、老人の歩みが止まった。
「おーや、雷のご老人お久しぶりですねぇ~」
朗らかな(それでいて胡散臭い)笑みを湛えた青年が木にぶら下がっていた。
「あ、よかったら助けていただけません?降りれなくなっちゃって」
さもちょっと困ってるんです~と言うような声色のその人の足元には少し前に見かけたあの蜥蜴がスタンバイしていた。
私もダレンさんも絶句である。
蝙蝠の様にぶら下がっている青年はと言うと、「早く助けてください~」とどこか抜けた声音で助けを求めている。
暫くそんな様子を眺めていたダレンさんだったが、ため息を吐くと、簡易式の呪文を唱え、雷槍を創り出す。そしてそのまま発射すれば、反応する暇さえ与えられなかった蜥蜴は易々と地に伏せた。
「いや~ありがとうございます。グッドタイミングでしたねぇ!はい!」
木から降りてきたその人は笑みを浮かべたままである。
「……お前さんなら儂を頼るまでもなかったろうに」
「いえいえ。こう見えてもワタクシ、今戦えませんので、食べられるのは困るしどうするかとなやんでたんですよ?ああ、助けて頂けたので何かしら差し上げますが、何がよろしいですか?」
どこか芝居がかった動きだなぁ、と思っている間にもその人はどこからか取りだした敷物の上に、木の下に置いてあった荷物から取り出した物を並べ始める。笑みを絶やさないため、胡散臭さはあるものの、シュッとした目鼻立ちに白と黒の髪を束ねたゆったりとした三つ編み、長いローブから出た細い腕や脚。紛れもない美形である。
「こちらのブローチとかどうです?」
「どさくさ紛れて呪物を売ろうとするな。このトンチキめ」
「いいじゃないですか、北の迷宮で見つかった代物ですよ?」
「だとしてもいらん」
「そこで何してんだこの人達って顔したお孫さんだかお弟子さんどうです?」
「あ、いや……いいです……」
これは紛れもなく(様子のおかしなタイプの)美形である。
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