異世界に行ったら「現実見ろ」って言われました。

浅木宗太

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女子高生、異世界へ行く。

魔術師と一般人とそれから錬金術師2

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「そう言えば、あの大きな蜥蜴の原因って対処終わったって言ってませんでしたっけ?」
眉間に皺を寄せたまま、考えるような格好で(実際考えているのだが)椅子に腰かける老人を見る。
「あの蜥蜴はな。あやつはやはり縄張り争いで若い個体にどうやら負けた様だ。黒玄が調査しに行った時いつもより数が多かったらしいしな。数年に一度はそういう年があるんだが……しかしそのトンチキの話が本当だとすると、引っ掛かるものがある」
「と、言うと?」
「ワタクシはトンチキではありませんが、前に大量発生したのは2年ほど前なのですよ。はい。しかしあれらの大量発生は当たり前ではありますが、餌となる生き物の大量発生の翌年です。しかしですねぇ、去年は通年通りでして、大量発生するはずがないんです。えぇ。不思議でしょう?ワタクシはトンチキではありませんが!」
「充分トンチキだろうが。この迷宮は広い。儂や冒険者達でもひとつの階を隅々まで探索しようと思えば徒歩で抜け道を使うことなくとなると、三日は軽くかかる。それでも魔物や罠、天候などの外的要因による遅れを考えなければ、の話だ」
つまるところ、この大きな迷宮内で何かが起こっている可能性は十二分にあるという事だろう。
「迷宮って事は、地図とかあるんじゃないんですか?」
「儂が住んどるくらいだぞ?あるに決まっとる。お前さん、どうせ端から一斉に追い立て漁法みたいな事をしたら良いとか思っとるだろ」
「よく分かりましたね?」
「伊達に半世紀以上生きてないとも。しかしそれをやるには問題点があるだろう?」
この迷宮の入口は一つだ。次の階へ進む階段はあるが、それも一つ。ダレンさんが私と一緒にこの迷宮内にある家に帰ってきたあとに忍び込んできたのであればその時点で入口近くであり、結界術を幾重にも張り巡らせているダレンさん本人にはバレるのだという。
「儂がこの家にいる間、入口の門番としての役割も担っとる」
「要は人が迷宮内に入ろうとするとこの御仁には丸分かりなんですよ。人感センサーみたいですよねぇ」
魔術の研究中に出来上がった副産物的な魔術で、外から入ってくるもののみを感知するのだという。感知を無効にするにはダレンさん以上の魔術師によるステルスか、かなりの熟練度のスキルを持つナイトウォーカーという職種である必要があるそうだ。
「だがな、ナイトウォーカーのハイドは自分自身しか隠せん。隠密に長けた職ではあるが、一小隊全ては無理だ」
「ステルス自体覚えようとする魔術師なんて冒険者やってる方くらいですし、そもそもこの方魔術研究の第一人者ですから欺くのは無理でしょうね」
という訳で消去法にはなるが、この家に戻ってくる前という事になるらしい。
「後は、まぁ、この迷宮に入れる入口が無いことは無いが……」
「あるにはあるんですね?」
「うむ、あるにはある。だが、第三階層を通るルートになる。そうなった場合は王国の一般兵を配置したところで蹴散らされるのがオチってやつだな」
「クラブさんとか、彼方さんみたいな冒険者を数人……」
「バカを言うんじゃない。あれらはギルドマスター共とそう変わらん」
前々から強さがおかしいなと思っていたが普通におかしかったようだ。
「どうせ、儂が帰ってきた事も、あの蜥蜴を倒すために冒険者が駆り出されとるのも連中は知っておるだろうよ。だからこそ、それを逆手にとる」
そう言うダレンさんの顔はだいぶ悪い顔をしていたのは言うまでもない。
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