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女子高生、異世界へ行く。

帝国にて

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帝国、宮廷内とある回廊。
男が歩いていた。
青丹色の髪には簪をさし纏め、顔は奇怪な面によって隠されている。服はこの国の伝統服をアレンジしたデザインになっており、長い袖や裾はあまり好みではなかったが、寒さを凌ぐにはちょうど良かった。下に向かって広がるズボンの裾は足首でとめられ、提灯の様になっている。歩くと揺れるが、このズボンは割と気に入っている。
調度品の置かれていない、壁にも天井にも何も装飾の無い殺風景な回廊をずんずんと進んでいく。手に持っているのは“例の実験”の報告書である。
暫く進むと、とある部屋の前に辿り着く。彼はなんの躊躇いもなく、扉を開け、そして一歩部屋に入ると、その場に居た人物に跪く。
「我らが太陽に申し上げます」
「いい、いい。そういうのは。この場にはキミと僕しか居ないんだから」
その人はそう言うと、堅苦しい間柄じゃないだろう。キミと僕だぜ?と困ったように笑った。
「じゃあさっそく例の実験の話でもしよう。端的に言えば成功だ」
書類を手渡し、そのまま近くの椅子に座る。
「コアを動力源に使えば、元の素材の特性を得ることが出来ることがわかった。一般兵にはそのまま犠牲になってもらったが……まぁ、うん。すぐに王国からこちらに話が来るんじゃないか?王国が気がつくまでにかかった日数と警備体制、その他諸々はうちの部下達に」
「そうか。それならコアの特性を最も活かせる形にすればもっと使えるね」
「ああ、その為にも今研究と改良を進めてるところだ。あと一月もあれば今改良してる分が使えるはずだ。楽しみにしていてくれ」
「そのつもりだ。頼んだよ、李順」
「君の頼みとあらば幾らでも。我らが皇帝様」
仄暗い部屋の中、二人笑い合う。
暫し笑いあった後、李順は椅子から立ち上がり、服装を正す。
「じゃあ、また。次はもっといい報告を持ってくるよ」
「ああ、楽しみにしているよ」
夜闇に消える、側近を見送った後、彼は窓から静かに空を見上げた。
「さて、あとは時間稼ぎ、か」
そんな彼の呟きは暗い闇の中へ消えていく。
月の無い、暗い夜の事だった。
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