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序章(単なるフラグ立て)

第六話(能力値1012?)

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「ん?どしたの?」

 火村が小首を傾け、頭上にはてなを浮かべている。

「い、いや....」

 俺は額に冷や汗を浮かべながらそっぽを向く。
 おい違うじゃねえか。
 なんで、なんで俺に堕ちてねえんだよおおおお!!このアプリの噓つきいい!!
 そして心の中で叫ぶ。

「はあ、はあ..」

 やっぱ夢は夢か。
 そう思いながら肩を落とした。

「まったくどうしたの?」

「だ、大丈夫..うん、もう大丈夫だ」

「ほんとにー?」

「ああ、ほんとに」

 やたらこういったことはしつこいな。まあ心配してくれているんだろうが。

「ふーん」

 そう言ってジト目を向けてくる。お、なんかこれはこれでいいな。
 つか、可愛い。
 火村という名前の通り、髪の色は明るい赤色でショートにしていて、健康そうな、活発そうな顔つきをしている。
 そしてすらーっと真っ白い足がうちのミニスカートの制服から伸びていて、どこに目を向ければいいのかわからない。こうしてみると間違いなく美少女だろう。
 あ、やべこう考えていると無駄に意識してしまった。落ち着け、結構前に流行った目以外は高スペックなあの方も言ってただろ。勘違いはよくないと。
 おとすで堕とせていない以上、自力で堕とさなければいけない。頑張れ俺。

「まっ気分が悪かったら言ってねー。私頑張るから!」

 そう言ってこぶしをぐっと握り、にっこり笑った。
 そんな光景を見ながら俺は、何を頑張るんだよとまたまた心の中で考えながら薄く微笑んだ。



 あれ?なんかいいムードじゃね?

「んで?その解説ってどういった能力なんだ?」

「ああこれね」

 歩道を歩きながらワープを探しているのだが、今だ見つからない。
 まあ、先程どっかの誰かさんが雪玉を降らしたせいなのだと思うのだが人通りが少ないのだ。
 そんな中火村が「あれは違う」とかつぶやいて仕分けていたので、どうやって見えているのか知りたくなり聞いてみたのだ。

「うーんとね、人を見て知りたい!って思ったらその人の能力がわかるんだ。なんか頭に入ってくる感じで」

「ん?じゃあさっき言ってた能力値っていうやつも解析の能力で分かる一つなのか?」

「うん、大正解!」

 そうニコッと笑いながら顔をこちらに向けてくる。
 ちょっとはおとすの効果があるんかな?さっきまでの緊張がほぐれたように見えるんだが。
 まあ、いいか。

「私が驚いたのは今まで見た全員の能力の名前が漢字だったのに全部ひらがなでおとすって書いてあったのと、大体能力値が100ぐらいが普通だったのに1012もあることかな。ほんとびっくりしたよー」

「....は?」

 えと?名前が全部ひらがななのはともかく、平均100なのに1012?それってやばくね?
 しかし俺は表情を壊さずいかにも興味なさげに聞いてみる。

「おお、俺って意外とすごかったりするのか。ちなみにその100ぐらいの能力の名前は?」

「うーん厚壁とか強盾とかその辺りかな」

「へえ..」

 厚壁とか強壁とかって名前からして守りしかできなさそうだな乙、乙。

「ふう、でも結構調べたのに見つからないなー。ワープとか瞬間移動とか」

「まあ、そんな能力とか異能力の代名詞だからな」

 と、そうこう話していた時

「んあーってナニコレ!交通止まってる!これって会社行かなくてもいい感じかなあー!」

 ちょっと先のビルの入り口に女の人が立っていたのだ。どうやら会社に行くところらしい。

 なわけねえだろ。
 俺はそう心の中で突っ込みを入れ、

「あ、あれは?能力開花してるかわからないけど」

 もうだめもとだ。

「あーうん」

 火村もあきれてんのか棒読みに似た口調でいう。

「ええ!」

 そして驚いた。

「ん?どうした?」

「あ、あの人の能力..転送だよ」




 ま、じか、よ。
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