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第1章 凪音ちゃんと能登先生
第2話 女子校生「能登先生って、いいよね……」
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アルバイトを終えてやってきた友達の家。
今夜は親友の春日ひまわりのお家でお泊まり会だ。
四月を迎えた私は晴れて高校二年生に進級した。その際クラス替えも行われたが、昨年に引き続き、ひまわりともう一人の親友、早坂要とクラスメイトになれた。
学校でいつも一緒な二人とクラスがバラバラにならなくてほっと安堵。
それから二週間が経過して迎えた週末の夜。
今夜は改めて親睦を深めるのと、ゴールデンウィークの予定を立てるため集まったのだ。
集まった……のだが、
「凪音~。そろそろご機嫌な理由を聞かせてくれないかな~」
湯船を借りてアルバイトの汗を流し、お気に入りのピケのルームウェアに包まれてようやく気持ちにひと段落。
しかし勘の鋭い要がここぞとばかりに探りを入れてきた。
「あ、それ私も聞きたい! 凪音、うちに来た時からずっとニコニコしてるもん。何かあったの?」
アンバーの瞳を爛々と輝かせるているのは春日ひまわり。ショートボブと丸っこい顔がチャーミングな、名前通りひまわりの花のような元気いっぱいの親友。
ひまわりは気持ちのふわふわした私の様子に興味津々で、もう隠し通せる雰囲気じゃない。もっとも、最初から隠す気などないのだが。
「えへへ、実はね、ここに来る途中でちょっと怖い目に遭ったんだぁ」
「怖い目?」
「うん、ここに来る前にしつこくナンパされて。金髪だし、目釣り上がってたし、髭生えてたし、ちょー怖かった!」
「うわーん、凪音かわいそかわいそ! よしよし~」
ひまわりが我が事のように悲鳴を上げて抱きついてきた。髪を撫でる優しい手つきと温かな抱擁が心をポカポカにする。
「それでそれで?」
「でねー、やめて下さいって言っても中々放してくれなくて、すっごく怖かった。でもそこにサッと現れた人が助けてくれたの!」
「うそ!? すごい! マンガみたい!」
「へー。そんな人いるもんなのね。でもどうせその人も凪音にいい格好したかっただけなんじゃないの?」
冷めた見解を示すのはもう一人の親友、早坂要。
ロングの髪とシャープな輪郭はモデル顔負けの美人さん。クールな印象があるけどすごく話しやすいし、恋バナは大好物だ。
「ノンノン。その人は下心無しに私を助けてくれたんだぁ~」
「どうしてそう言い切れるの?」
「ふっふっふ。それは、私達が普段からよく分かってることなんですよ~?」
「? 凪音の言ってることが全然分かんないよ~。助けてくれたのは誰なの!? 連絡先は!?」
「落ち着いて、ひまわり。凪音の口ぶりからすると実は私達も知ってる人なんじゃない?」
「あ、そういうことか! え、誰? 能登っち?」
「ギクゥ!」
「……当たりね。というか『ギク』なんて言う人初めてみたわ」
もう少し引っ張るつもりだったのになんで分かったんだろう。
「『なんで分かったの?』って顔してるわね、凪音。それは、私達が共通で知ってる男の人って能登っちくらいだからよ」
「論理的帰結!?」
言われてみればその通りだ。
ひまわりは私と同じ中等部からの内部進学組で男友達は皆無だ。
要は高校入学組で同じ中学の男の子の友達は多少いるようだが、私達と接点はない。
となると候補は愛宕女学院の男性教師に絞られる。そして真っ先に選択肢に上がるのは私達の担任の能登っちだ。
「へぇ、能登っちか。ならスマートに助けてくれそうね」
「能登っちやるぅ! でも昔の能登っちじゃ考えられなかったかもねぇ」
「どういうこと?」
要が首を傾げる。
なるほど、要は高入組で能登っちとは日が浅いから今の彼しか知らないのか。
「昔の能登っちはね、なんていうんだろう……すっごく頼りなかった!」
「そうそう。授業の時、緊張して声小さかったし、目見て話すのとかも苦手な感じだったからね」
「えー、全然信じらんない!」
「ほんとなの! オドオドというかキョドってたというか。でもある頃から雰囲気変わったんだよ。ね、凪音?」
「そうそう。なんていうか、落ち着いた感じになったんだー」
「なんでなんで? 能登っちに何があったの?」
要がぐいっと身を乗り出して食いついてくる。
私とひまわりは顔を見合わせてニコリと笑う。
「「結婚したの!」」
息の合った答え。
要は得心して膝を打った。
「結婚してから能登っち、幸せいっぱいって感じ! 授業もはきはきしてるし、生徒と話す時も目を見てくれるようになって、なんだか頼もしくなったの」
「凪音の言う通り! なんていうのかな……こう……大人のヨユーが滲み出てる感じ」
「なるほどー、結婚して一皮剥けたのね! そんな風に旦那さんを成長させる奥さんってどんな人なんだろー?」
「めっさ綺麗だよ!」
ひまわりが興奮気味に答えた。
どうして知ってるんだろう?
「披露宴にクラスの何人かで押しかけたんだ! 凪音、その時体調悪くて来られなかったんじゃなかったっけ?」
「そういえば……。私も見たかったなぁ。写真とかないの?」
「それがスマホお風呂に落としてデータ消えちゃったのー!」
それは残念。
あのポンコツだった能登っちを、あんなにかっこよくしてしまった奥さんに興味が湧いたのに。
授業中に公式を忘れちゃったり、生徒の目を見るのが苦手だったり、「彼女いるの?」って聞かれて取り乱したりしてた能登っち。
それが今や頼れる先生になって、しかもナンパされて困ってる私を助けてくれた。
そんな優しい旦那様と暮らす奥さんが羨ましい。
私もいつか、そういう人と結ばれれば良いのになぁ……。
今夜は親友の春日ひまわりのお家でお泊まり会だ。
四月を迎えた私は晴れて高校二年生に進級した。その際クラス替えも行われたが、昨年に引き続き、ひまわりともう一人の親友、早坂要とクラスメイトになれた。
学校でいつも一緒な二人とクラスがバラバラにならなくてほっと安堵。
それから二週間が経過して迎えた週末の夜。
今夜は改めて親睦を深めるのと、ゴールデンウィークの予定を立てるため集まったのだ。
集まった……のだが、
「凪音~。そろそろご機嫌な理由を聞かせてくれないかな~」
湯船を借りてアルバイトの汗を流し、お気に入りのピケのルームウェアに包まれてようやく気持ちにひと段落。
しかし勘の鋭い要がここぞとばかりに探りを入れてきた。
「あ、それ私も聞きたい! 凪音、うちに来た時からずっとニコニコしてるもん。何かあったの?」
アンバーの瞳を爛々と輝かせるているのは春日ひまわり。ショートボブと丸っこい顔がチャーミングな、名前通りひまわりの花のような元気いっぱいの親友。
ひまわりは気持ちのふわふわした私の様子に興味津々で、もう隠し通せる雰囲気じゃない。もっとも、最初から隠す気などないのだが。
「えへへ、実はね、ここに来る途中でちょっと怖い目に遭ったんだぁ」
「怖い目?」
「うん、ここに来る前にしつこくナンパされて。金髪だし、目釣り上がってたし、髭生えてたし、ちょー怖かった!」
「うわーん、凪音かわいそかわいそ! よしよし~」
ひまわりが我が事のように悲鳴を上げて抱きついてきた。髪を撫でる優しい手つきと温かな抱擁が心をポカポカにする。
「それでそれで?」
「でねー、やめて下さいって言っても中々放してくれなくて、すっごく怖かった。でもそこにサッと現れた人が助けてくれたの!」
「うそ!? すごい! マンガみたい!」
「へー。そんな人いるもんなのね。でもどうせその人も凪音にいい格好したかっただけなんじゃないの?」
冷めた見解を示すのはもう一人の親友、早坂要。
ロングの髪とシャープな輪郭はモデル顔負けの美人さん。クールな印象があるけどすごく話しやすいし、恋バナは大好物だ。
「ノンノン。その人は下心無しに私を助けてくれたんだぁ~」
「どうしてそう言い切れるの?」
「ふっふっふ。それは、私達が普段からよく分かってることなんですよ~?」
「? 凪音の言ってることが全然分かんないよ~。助けてくれたのは誰なの!? 連絡先は!?」
「落ち着いて、ひまわり。凪音の口ぶりからすると実は私達も知ってる人なんじゃない?」
「あ、そういうことか! え、誰? 能登っち?」
「ギクゥ!」
「……当たりね。というか『ギク』なんて言う人初めてみたわ」
もう少し引っ張るつもりだったのになんで分かったんだろう。
「『なんで分かったの?』って顔してるわね、凪音。それは、私達が共通で知ってる男の人って能登っちくらいだからよ」
「論理的帰結!?」
言われてみればその通りだ。
ひまわりは私と同じ中等部からの内部進学組で男友達は皆無だ。
要は高校入学組で同じ中学の男の子の友達は多少いるようだが、私達と接点はない。
となると候補は愛宕女学院の男性教師に絞られる。そして真っ先に選択肢に上がるのは私達の担任の能登っちだ。
「へぇ、能登っちか。ならスマートに助けてくれそうね」
「能登っちやるぅ! でも昔の能登っちじゃ考えられなかったかもねぇ」
「どういうこと?」
要が首を傾げる。
なるほど、要は高入組で能登っちとは日が浅いから今の彼しか知らないのか。
「昔の能登っちはね、なんていうんだろう……すっごく頼りなかった!」
「そうそう。授業の時、緊張して声小さかったし、目見て話すのとかも苦手な感じだったからね」
「えー、全然信じらんない!」
「ほんとなの! オドオドというかキョドってたというか。でもある頃から雰囲気変わったんだよ。ね、凪音?」
「そうそう。なんていうか、落ち着いた感じになったんだー」
「なんでなんで? 能登っちに何があったの?」
要がぐいっと身を乗り出して食いついてくる。
私とひまわりは顔を見合わせてニコリと笑う。
「「結婚したの!」」
息の合った答え。
要は得心して膝を打った。
「結婚してから能登っち、幸せいっぱいって感じ! 授業もはきはきしてるし、生徒と話す時も目を見てくれるようになって、なんだか頼もしくなったの」
「凪音の言う通り! なんていうのかな……こう……大人のヨユーが滲み出てる感じ」
「なるほどー、結婚して一皮剥けたのね! そんな風に旦那さんを成長させる奥さんってどんな人なんだろー?」
「めっさ綺麗だよ!」
ひまわりが興奮気味に答えた。
どうして知ってるんだろう?
「披露宴にクラスの何人かで押しかけたんだ! 凪音、その時体調悪くて来られなかったんじゃなかったっけ?」
「そういえば……。私も見たかったなぁ。写真とかないの?」
「それがスマホお風呂に落としてデータ消えちゃったのー!」
それは残念。
あのポンコツだった能登っちを、あんなにかっこよくしてしまった奥さんに興味が湧いたのに。
授業中に公式を忘れちゃったり、生徒の目を見るのが苦手だったり、「彼女いるの?」って聞かれて取り乱したりしてた能登っち。
それが今や頼れる先生になって、しかもナンパされて困ってる私を助けてくれた。
そんな優しい旦那様と暮らす奥さんが羨ましい。
私もいつか、そういう人と結ばれれば良いのになぁ……。
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