神堕ちのランドスケープ  ~魔王の第2王女は澱みなく~

ゆんさん@

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第10話 「星導の約束」

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星々が瞬く夜空のもと、エスデス、レオン、そして神堕ちし少年・ソリスは石造りの古い観測台に立っていた。
古代の天文学者たちが使用していたとされるこの場所は、星の位置と地上の出来事を繋ぐ鍵となると伝えられていた。

「ここから見る星々が、神々の意志を映し出しているんだ」
とソリスが語り始めた。
彼の目は、夜空を見上げながらもどこか遠い過去を見つめるかのようだった。

レオンが天文図を広げ、星々と照らし合わせながら言った。
「この図にある星座…『監視者の眼』が今夜、最も輝いている。それが示すのは…」

「変革の時が近いということね…」とエスデスが言葉を拾った。
彼女の眼差しには、決意の光が宿っていた。

ソリスは観測台の中央にある奇妙な装置に手を伸ばした。
それは古代の天文時計で、星の動きを精密に追跡することができる道具だった。
彼の手が触れると、装置が軋むような音を立ててゆっくりと動き始めた。

「時間が合わせられた。今こそ、星に願いを込めるときだ」
とソリスは述べた。
彼らは一斉に、『監視者の眼』が位置する天空に向けて手を差し伸べた。

その瞬間、星座が一斉に輝きを増し、その光は地上に降り注ぐ川のように流れた。
光の川は観測台の周囲を取り囲み、彼らを中心に円を描くように展開した。
そして、観測台の中央に一点の光が集約され、それはやがて形を変え、ひとつのクリスタルになった。

レオンが言葉を失いながらクリスタルを手に取った。
「これが…星々の導きか。」

エスデスはクリスタルに触れると、ひとつの予見が心に浮かんだ。
「このクリスタルは、我々を正しい未来へと導く…それが『星導の約束』だわ。」

クリスタルの輝きが薄れると、観測台の光は星空に溶け込んでいった。
静寂が戻り、三人はその場に立ち尽くしていた。
ソリスは、まるで何世紀もの重さを担うかのように、深いため息をついた。

「僕たちの旅は、これで終わりではない。始まりに過ぎないんだ」
とソリスは重く言葉を落とした。

エスデスはソリスの言葉を受けて、クリスタルを高く掲げた。
「私たちはこの光を導きとする。星々が私たちに示した道を進まなければならないわ。」

レオンは天文図に再び目を落とし、星座とクリスタルの輝きを比較しながら考えを巡らせていた。
「星導の約束」という言葉は、彼らに何を意味するのか、そしてその力をどう使うべきか。
それらを解き明かす手がかりが、この古い天文図に隠されているのかもしれない。

「星々は常に変わる。だがその変化が示すのは、一つの真実だけだ。
僕たちは常に進化を続けるべきだということをね」
とソリスが語りかけると、エスデスとレオンは頷いた。
このクリスタルは彼ら三人に与えられた使命であり、その光は彼らの決意を映し出していた。

「しかし、この力があれば、我々はラグリア王国に迫りくる暗黒を防ぐことができるかもしれない。
さらには、神々の世界との調和をもたらすことができるかもしれないんだ」とレオンが付け加えた。

夜が明けると、観測台の影が地に落ち、新たな日の光が三人の周りを包み込んだ。
彼らはその光に向かって歩みを進め、それぞれの心に秘めた思いを胸に、
ラグリア王国の運命を変える旅を続けていく決意を新たにした。
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