神堕ちのランドスケープ ～魔王の第２王女は澱みなく～

第9話 「神堕ちし者の導き」

夜明け前の薄明かりの中、エスデスとレオンは神殿の残骸の前に立っていた。
草に覆われた古い彫像に、レオンが手を滑らせながら暗号めいたヒントを読み解こうとしていた。

「"天に墜ちたものは、林の守りし子を見つけん"…これは一体？」
レオンが眉をひそめた。

「多分、神堕ちし者に関するヒントね。"林の守りし子"？」
エスデスがレオンの隣で囁いた。

彫像の謎を解く手がかりを探す二人。レオンの知識とエスデスの直感が導くはずだった。


緑に包まれた静かな村にたどり着いた二人は、古びた小屋で予言者と出会う。
彼女は目に見えないものを見る者、過去と未来を知る者だった。

顔中に刻まれた深い皺が異常なほどの説得力を生み出していた。

「神堕ちし者は、この森の深くにいる。しかし彼はただの少年…悲劇の生き残りよ。」
予言者の声は重く、エスデスの心を揺さぶった。

彼女は二人に護符を授け、
「これがあれば、彼に近づけるわ。ただし、心の準備をしておくのですよ」
と言い残した。　
エスデスは彼女にもっとたくさんの事を聞きたかったが、
彼女の表情や雰囲気がそうはさせてくれないと理解し、しぶしぶ引き下がる事にした。

エスデスたちは預言者に深々と頭を下げ、村を後にした。


予言者の言葉を胸に、エスデスとレオンは古の森へと足を踏み入れた。
森は不思議なほど静まり返っており、彼らの一歩一歩が鮮明に響く。

道中、彼らは自然の障害と魔獣の襲撃に遭遇するが、予言者から授かった護符が不思議なほど彼らを守ってくれた。

夜になると、森の中で不思議な光を目撃する。
それはまるで何かを示しているかのように、二人をある方向へと導いた。


深い霧の中で、エスデスとレオンは謎の少年と遭遇する。
彼は不思議な静けさを持ち、言葉を発することなく二人をじっと見つめる。

レオンが護符を差し出すと、少年の目がほんの一瞬輝いた。
彼は確かに神堕ちし者だった。それはすぐにわかった。

記憶の断片を通じて、少年は彼らに未知の世界の断片を示したのだ。


少年が示す光に導かれるまま、エスデスとレオンは森を抜け、新たなる旅へと足を踏み出す。
少年は彼らに自らの不思議な力をわずかに見せ、未来への手がかりを与える。



夜が更けると三人は暖かな火を囲んだ。
エスデスは薄暗がりの中で、温かな火の光を背にして少年を見つめた。

「君は本当に、神々の力を持つの？」彼女の声には好奇心と僅かな警戒が混じっていた。

少年はゆっくりと頷くと、静かに口を開いた。
「私はただの運び手。神々の意志をこの世に伝えるためだけに存在する者…それが神堕ちし者の宿命だ。」

レオンが間を取り持ちながら問いかけた。
「では、我々が探している力は、どうやって見つければいいのだ？」

少年は深いため息をつきながら、星空を指差した。
「空には答えがある。星々が道しるべとなる。だが、その旅は容易なものではないだろう。」

エスデスは確信に満ちた声で答えた。「私たちはどんな困難も乗り越えるわ。」

そして、三人の間に新たな絆の火が、囁き合う声と共に静かに揺らぎ始めた