神堕ちのランドスケープ ～魔王の第２王女は澱みなく～

第8話 「運命の転輪」

宝石からの試練を乗り越え、エスデスとレオンは再び深淵を覗くような静寂の中に立っていた。
ふと、神殿の奥から温かな光が差し込むようになり、二人の前に広がる闇が徐々に晴れていった。
その光の中には、未来を予見する能力を持つとされる古の神託の石版が現れた。

「これが伝説の神託の石版か…」エスデスが驚嘆の声を上げる。

レオンは慎重に石版に触れ、「神託よ、我々に未来を示せ」と祈りを捧げた。
すると、石版は輝き始め、浮かび上がる文字が二人に未来のビジョンを見せる。

エスデス「これは…ラグリア王国が破滅する未来？」

レオン「だが、ここには別の道も示されている。王国を救う鍵が…」

石版には、王国を救うためには「神堕ちし者」と共に、三つの試練を乗り越える必要があると記されていた。

エスデス「神堕ちし者って、一体誰のこと？」

レオン「伝説によれば、神々の力を授かりながらも人間として生きる者のことをそう呼ぶ。その者は…」

その時、突如として神殿が揺れ始め、暗い影が二人に迫ってきた。
それは、神殿を守る最後の番人、巨大な翼を持つ竜だった。

エスデスは魔杖を構えた「レオン、これがまた一つの試練ね！」

レオンも魔法の剣を手に取り「そうだ。この竜を倒さなければ、未来は変えられない！」

竜は咆哮しながらエスデスとレオンに襲いかかるが、二人は身軽に避けながら反撃を試みる。
エスデスは魔法で、レオンは剣で竜に立ち向かう。

エスデスは魔法を放つが「この竜、普通の攻撃では効かないわ！」

レオン「分かった、神殿の力を借りるんだ。この石版に封じられた力を解放するぞ！」

そしてレオンが石版に触れると、神殿全体が光に包まれ、二人は神々の加護を受ける。
温かくそれでいてとても力強い、なにか絶対的な力があたりに広がっていく。

そしてその光が竜を包み込み、一瞬動きを止めた竜の断末魔の咆哮。

いかにも禍々しい叫びなのだが、光はそれすら許さず、
やがて竜は静かに消えていった。

二人は石板に視線を落とし、しばらくの沈黙のあと竜が消え去った辺りをおぼろげに見つめた。

エスデス「すごい…これが神託の石版の力なのね。」

レオンは深く息を吸い込んで「ああ、だが本当の試練はこれからだ。神堕ちし者を見つけ、王国を救わなければ…」


神堕ちし者…。エスデスの瞳にはまた不安の色が滲んでいた。


二人は揺れる光の中を歩き始めた。未知の冒険への一歩が、ここから始まる。
エスデスとレオンの運命は、再び大きく動き出そうとしていた。