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第1章 監獄の住人1-16
14ーA
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それから、約5年後、
ネーデルランドから早馬が到着した。
「ネーデルランドのグラツィアから手紙だ。
責任者にそういえばわかる。」
鬱陶しそうに異端審問官は鼻を鳴らした。
収容され、死体と生きている者との区別さえ付かない中、
改宗拒否者はうずくまっている。
ラビにいたっては鼻と耳、両目をえぐられていた。
扉を開けると
「ううぅっ。」
悲痛なうめき声が聞こえ
耐え難い悪臭もする。
血と糞尿、腐った死体に沸く蛆。
だが、異端審問官はうれしそうに手紙の中身を読んだ。
「今しがた、手紙が届いた。
差出人は、豚のグラツィア・メンデス。
今はベアトリーチェ・ルナ という名だ。」
「グラツィアはユダヤ教を棄て、キリスト教徒となった。」
ハハハ、そう笑いながら続きを読む、異端審問官。
「自殺が禁じられているので、改宗しなければ殺せとさ。」
ラビは抉られた目をそっと閉じると、聞いた。
「私は目が見えません、その手紙何色で書かれているでしょうか。」
どす黒い赤、異端審問官は言った。
「これは、血、血か?」
ラビは最後の命を燃やすように叫んだ。
「おお、かたはらよ。神は、神は、我らを見捨て給うた。」
改宗の手紙、無条件降伏命令書であった。
「たとえ豚といわれようと、生きよ。」
王家の娘、グラツィアからの告解であった。
ジョン・ラッセル 後世に記録が残るかわからないほどの小さな可能性、
ヘンリー8世は、彼にイングランドの命運を賭けていた。
一介の貿易商である、彼の船出など誰も注目していなかった。
かろうじて手に入れたキャラックに、まぬけ という名を冠し、
まともな資金も無く、航海に出る羽目になった彼は絶望していた。
船員はある程度の経験者だが、資金が無い。
この船で、海賊行為など論外だ。
国王がカトリック派の貴族ハワードのせいで無為無策。
私掠海賊としての権利は無い。
単なる無法者だ。
ハワードのせいでプリマスの港に長くとどまることも危険だ。
下手をすれば イングランド国内で人生が終わりかねない。
だが、生きていられるのは、あまりにも無力でちっぽけだからだ。
イングランド貴族の誰も、彼が何か出来るとは思っていなかった。
彼自身も意志は強かったが、コネも金もなしで海の藻屑となることは
覚悟の上だ。
故に考えた、イングランドの敵は誰か?、確実に教皇である。
では教皇を、キリスト教徒を殺したいのは誰か。
その答えは簡単だ。最も殺意を抱いているのはユダヤ人だ。
2番目がオスマンとイスラムだ。
ある日、アントワープの酒場で酔いつぶれていると、
ルナという女貴族が使いをよこしてきた。
おれはイスラム教徒と連絡を取るために、ヴェネチア経由で
オスマンに連絡したはずなのに、
なぜ、イスパニア領に連絡が入ってくるんだ。
「ちっ、しかたねえ。これが罠なら死ぬしかないな。」
酔っ払っているところを狙っての一報だ。
逃げることは出来まい。
ネーデルランドから早馬が到着した。
「ネーデルランドのグラツィアから手紙だ。
責任者にそういえばわかる。」
鬱陶しそうに異端審問官は鼻を鳴らした。
収容され、死体と生きている者との区別さえ付かない中、
改宗拒否者はうずくまっている。
ラビにいたっては鼻と耳、両目をえぐられていた。
扉を開けると
「ううぅっ。」
悲痛なうめき声が聞こえ
耐え難い悪臭もする。
血と糞尿、腐った死体に沸く蛆。
だが、異端審問官はうれしそうに手紙の中身を読んだ。
「今しがた、手紙が届いた。
差出人は、豚のグラツィア・メンデス。
今はベアトリーチェ・ルナ という名だ。」
「グラツィアはユダヤ教を棄て、キリスト教徒となった。」
ハハハ、そう笑いながら続きを読む、異端審問官。
「自殺が禁じられているので、改宗しなければ殺せとさ。」
ラビは抉られた目をそっと閉じると、聞いた。
「私は目が見えません、その手紙何色で書かれているでしょうか。」
どす黒い赤、異端審問官は言った。
「これは、血、血か?」
ラビは最後の命を燃やすように叫んだ。
「おお、かたはらよ。神は、神は、我らを見捨て給うた。」
改宗の手紙、無条件降伏命令書であった。
「たとえ豚といわれようと、生きよ。」
王家の娘、グラツィアからの告解であった。
ジョン・ラッセル 後世に記録が残るかわからないほどの小さな可能性、
ヘンリー8世は、彼にイングランドの命運を賭けていた。
一介の貿易商である、彼の船出など誰も注目していなかった。
かろうじて手に入れたキャラックに、まぬけ という名を冠し、
まともな資金も無く、航海に出る羽目になった彼は絶望していた。
船員はある程度の経験者だが、資金が無い。
この船で、海賊行為など論外だ。
国王がカトリック派の貴族ハワードのせいで無為無策。
私掠海賊としての権利は無い。
単なる無法者だ。
ハワードのせいでプリマスの港に長くとどまることも危険だ。
下手をすれば イングランド国内で人生が終わりかねない。
だが、生きていられるのは、あまりにも無力でちっぽけだからだ。
イングランド貴族の誰も、彼が何か出来るとは思っていなかった。
彼自身も意志は強かったが、コネも金もなしで海の藻屑となることは
覚悟の上だ。
故に考えた、イングランドの敵は誰か?、確実に教皇である。
では教皇を、キリスト教徒を殺したいのは誰か。
その答えは簡単だ。最も殺意を抱いているのはユダヤ人だ。
2番目がオスマンとイスラムだ。
ある日、アントワープの酒場で酔いつぶれていると、
ルナという女貴族が使いをよこしてきた。
おれはイスラム教徒と連絡を取るために、ヴェネチア経由で
オスマンに連絡したはずなのに、
なぜ、イスパニア領に連絡が入ってくるんだ。
「ちっ、しかたねえ。これが罠なら死ぬしかないな。」
酔っ払っているところを狙っての一報だ。
逃げることは出来まい。
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