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第1章 監獄の住人
4 動き出す歯車
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その日風は凪いでいたが、開けた空にさんさんと太陽が照っていた。
それほど遠くないところにかもめだろうか、詳しくないためわからないが
数十羽が飛び回っていた。
周囲360度 大海原だ。
海岸線を見ながら進むのではなく、360度海が見える状態で
今自分がいる場所を知るには、緯度と経度が必要だ。
緯度は北極星などを見ることによって簡単に分かったが
経度は正確な時計が無くては測ることができなかった。
そのため、時計の発明には7つの海を支配する大英帝国の
国王の身代金と同額の懸賞金が掛けられていた。
オスマン帝国領から出る時、母は泣きじゃくっていた。
ユダヤ人やイスラム教徒にとって、キリスト教徒はいまだに恐怖の対象だ。
そもそも、イスラムが人間に対して、聖戦(ジハード)と言う言葉を
使うようになった原因は、キリスト教徒が悪魔のような所業、
旧約聖書トーラーで言うところの聖絶へーレムを行ったからだ。
この記憶は永遠に近いときがながれても、人の記憶でなく
集合的記憶、文明として残っていくだろう。
いわゆる十字軍だ。
オスマン帝国からギリシャのアテネ沖あたりまでは、部屋の中で
船酔いに苦しんで、バケツに胃の内容物を戻す毎日だった。
長靴 長靴 長靴 と表現されるのは イタリアだ。
かつて、遠い祖先と英国の騎士が捕らえた船の所属が
イタリアのヴェネチアだ。
やがて、オスマン海賊、オスマン海軍の拠点チュニスを通り過ぎると
船旅にも慣れ、元気が出てきて、甲板を散歩できるまでになった。
遠い祖先、ドナ・グラツィア・ナスィのたどった航路を逆に行くように
アルジェ、セウタとアフリカ大陸北岸を沿っての長旅だ。
どこかの港によって、観光でも出来ればいいのだが、
この船の使命は重いらしい、ロンドンまで無寄港の予定だ。
つまり私の使命も重いと言うことだ。
なぜならこの船の唯一の目的は、私を無事ロンドンまで
運ぶことだからだ。
「お食事の用意が整いました。」
召使の一人が呼びに来る。さすがに毎回、あの英国紳士が来るわけではないようだ。
彼も彼なりに、私の接待以外の副業があるらしい。
船の中で食べたコーシェルでない食事はおいしかった。
かの英国紳士はイスラム教徒とユダヤ教徒は絶対に豚肉を
食べないと思っていたらしい。
その彼に、歴代のスルタンに大酒飲みが多かったと聞かせると。
「それは嘘でしょう。」とまったく信じていなかった。
そもそも高濃度のアルコールは思考能力を低下させ、
人間が嘘をつくために必要な、論理的思考能力を奪ってしまい
泥酔した人は、感情を強く発露させるため便利なものなのだ。
いわゆる、「自白剤」と呼ばれるものはアルコール度の高い
お酒のことだ。
もっとも、私の家族で戒律を平気で破るのは私くらいだろう。
家族は宗教熱心で、適切な処理がなされていないと理由で
肉類を一切食べなかった。
いわゆる菜食主義だ。
私は小遣いで、ケバブなどを食べていた。
オスマン帝国領内にいたときは、さすがに豚肉は食べたことはない。
ちなみに、ヨーロッパを訪ねたイスラム教徒に豚肉を出した
レストランがあったらしいが、客は皿をテーブルにたたきつけると
代金だけ払って、即座に店から出たらしい。憤怒の形相で。
もっとも、お酒はある程度飲んでいた。
なぜなら、ユダヤ教徒にお酒を飲んではいけないと言う決まりは無い。
17歳は立派な成人女性だ。オスマンはミレット制という高度な
各民族の自治を認めており、自由だ。
そもそも、民族や国家といった概念を持ち込んだのは
ヨーロッパ列強が大航海時代以降、植民地支配をしやすくするため
分断統治や間接統治を行い、直接自分たちに矛が向かないようにするためだ。
おかげで各地で戦争や虐殺、紛争が大発生し、世界中が不幸のどん底になった。
植民地支配は、現在進行形で、私のいるこの時代も存在している問題だ。
船は順調に進み、リスボン沖を遠回りしながら進み、ビスケー湾で
ちょっとした嵐に見舞われた。暴れ馬に乗っているようだったが、
英国紳士は平然としていた。彼は若い頃、船乗りだったことがあるらしい。
私は久しぶりに胃の内容物を戻していた。
プリマス沖を進み、ドーバーまでもう少しと言うところだ。
「もう一杯いただけるかしら。」
空になったグラスを見せると、すぐに並々と赤ワインが注がれた。
上下に見事な衣装をまとった英国紳士はヘブライ語で話しながら
食事中に楽しませてくれる。
彼はこの船の給仕などではなく、れっきとした英国の貴族だ。
英国国教を守護するホイッグ党の盟主であるラッセル家の血縁、
ギャンブル好きな先代には相当手を焼かされたらしい。
「ワインやブランデーではなく、イングランドでしょう。
スコッチウイスキーとかありませんか。」
オードブルの次に 海老のサラダ、フォアグラの乗ったレアステーキ
ヒラメのムニエル それとキャビアだ。そしてデザートと
紅茶。オスマンはひたすらコーヒーだった。
でも、ここに水タバコが無いのはさびしい。
英国紳士は海老やキャビアには苦笑いをしながら奉仕していた。
向こうに着いたら、本場の「ハギス」と「キドニーパイ」を食べようと思っている。
ハギスにはウイスキーらしい。
もしかすると、戒律にうるさい他の家族だと、向こうの食事の席で
侮辱行為をするかもしれないから、私が選ばれたの?と思ってしまう。
スルタンがお酒を飲んでいたのは栄えていた時期で、
イスラムが落ち目になり、欧州列強から脅威と見做されなくなって
久しい。落ち目になるほど、宮廷はイスラムの教えに厳格になっていった。
シオンはオスマン帝国内では見せない無邪気な笑顔を見せながら、
心の底から可笑しそうに笑った。自由だ。とても自由だ。
このまま、ずっと旅をしていたかった。
オスマン帝国には息苦しさと焦りがあった。
大航海時代を大英帝国が征し、地中海はそれほど重要ではなくなった。
金銀や香辛料、奴隷が海路で直接運ばれ、衰退の一途をたどる。
イスラムの盟主は、ヨーロッパ列強のどの国よりも弱いだろう。
領土も失った。シオンもその空気に呑まれ、日々家と空気に
束縛された生活を送っていた。家から重要視されないとはいえ
自由などない、家の外にでられるのもまれ、出ても監視付だ。
この時代に、遠く離れた地に一人旅できるなど、至上の喜びだ。
ミルク入りのパンはおいしい、ポークソテーもだ。
そして、極めつけはこの特注船だ。大型のガレオン船を改装したもので
調度品もとても立派なものだ。
オスマンの公爵家といえど
このような船を独占など贅沢にもほどがある。
絵画等は潮風で痛むため、まったく飾られていないが
厚い高価なガラスの張られた客室から見る大海原は壮大だ。
大英帝国ではガラスでさえ信じられない量を作るらしい。
シオン・ナスィは公爵家の生まれとはいえ、次女、家督を継ぐ
可能性はほぼない。
1つ上の姉がいて彼女が跡継ぎだ。
弟もいるのだが、あとを継ぐのは姉だろう。
変に思うかもしれないが、ユダヤ人の父親であっても母親が不倫していたら
その子供は異教徒だ。だけど、ユダヤ人の母親から生まれれば、
少なくとも半分はユダヤ人だ。
なのでユダヤ人は母親を重視する。
そもそも、大英帝国まで無寄港での1ヶ月の船旅だ。
ある意味、死んだとしてもそれほど困らないからこそ選ばれたのだろう。
オスマン帝国も人材がいないわけではない。しかしオスマン帝国の
スルタンの名代として大英帝国の新国王に親書を届ける使節の
代表を任せられるような存在はそうはいない。
大英帝国のハッペンハイム家が「ユダヤ人貴族」と指名してきたのだ。
相手が国王となると、大公か公の血族でなくては釣り合いが取れない。
大航海時代のテューダー朝の時代ならともかく、いまや7つの海を支配する
世界一の巨大帝国だ。
しかも、英国国教会の聖地ウエストミンスターに入るのだ。
それならばと、かつては大公位についた事もあるナスィ家が
選ばれるのは当然だ。
表向きは、宮廷ユダヤ人ハッペンハイム家の当主からの招聘だが、
影で実権を握っているのは、かつて英国にわたり確固たる地位と財産を築いた
ギテオン家である。
先代のサンプソン・ギデオンはイスラム圏から大英帝国に
移住し、スティアート王家の正統を主張する、
僭王ボニープリンスチャーリーが
首都ロンドンに迫る中、逃げるために投売りされる財産を
ただ同然で買取り、南海バブルで英国有数の大富豪になった。
ナスィ家とギテオン家は2千年以上の付き合いのある家で、
失われた約束のイスラエル王国建国以前にさかのぼる。
「ゆだやびと」 その起源はすごく古い。カビが生えるくらいだ。
シオンも子供のころから幾度となく聞かされた。そういう話だ。
かつて、エルサレム近郊は、バビロニアそしてニネベという2大帝国があり、
ナイルの流域も広大でチグリスとユーフラテスのペルシア文明との間で
働く人で活気に満ちていた。
そのころ、砂漠をさまよう遊牧民がおり、現在は2支族しか残っていないが
かつては選ばれし12支族と呼ばれ、ナスィは酋長、ギテオンは族長であった。
シオン・ナスィのはるかなる祖先である。元々は、12支族で順番に酋長を決め
ナスィと呼んでいたが、盗賊に襲われたり、奴隷にされたり
災厄が降りかかる中、12支族を結束させ権力を集中させ、統率するために
ある一族は、ナスィと呼ばれるようになり。本来の家名を失った。
そして、力を得た彼らは、ヘルモン山からモアブの死海へ流れ下るせせらぎを求め
荒地を開墾し、その地を、それなりに豊かな肥沃な大地とした。
ナスィは、ヤハウェであり、ツロより至りて、サマリア、ヘブロン
エルサレムを統治する唯一神と定められていました。
商業交易ルートの要衝を走る彼らの領土は、たびたびエジプトやバビロニアによって
侵略される事も多く、その独立は困難を極めました。
古代の大帝国ペルシャ帝国の後ろ盾を得る事ができ、その庇護の下
その土地をナスィが与えられ、ようやく平和が訪れた。
無論、ペルシャ帝国も、外交上地理上、バビロニアやエジプトに対する
緩衝地域、防壁の捨て駒としての効果を期待していたのかもしれません。
しかし、ペルシャ帝国が衰退し、マケドニアの憎きアレクサンドロス大王に
滅亡させられると、ギリシャ・ローマ帝国はイスラエルの存在を消し去り
ゆだやびとはローマ帝国の属州となり、
彼らのギリシャローマ文明に取り込まれつつありました。
サンヘドリンというローマの施政者の生み出した偽の王族の一派と
ペルシャ帝国に亡命した王族の一派に分かれていきました。
そして、ユダヤ人を苦しめる最大の要因ともなった、イエオーシュアです。
ローマを支配する偽の王サンヘドリンも安泰ではありませんでした。
ローマの施政者と癒着し、腐敗し、民衆は苦しみました。
しかし、その支配者は、一人の若者に脅かされます。
彼は、サンヘドリンの悪政に声をあげ、12人の仲間とともに人々を救い
励まし、諦めないことを教えました。今は、神の御言葉を伝え、真の世界の
あり方を述べた、クムラン教団の盟主であり、ペルシャに逃れた真の王家
ナスィを取り戻そうとしました。しかし彼は、12使徒ではなく
ある裏切り者の手により、過酷な拷問の末、その命を散らせます。
彼の信奉者の中核12人と信徒は、卑劣なローマ帝国と悪魔のようなサンヘドリン
と言う偽のヤハウェ、偽の王に痛めつけられ、犯され、殺され、そして逃げました。
それは屈したためではありません。
彼らの役目は、救済者であり革命家の
イエオーシュアの言葉を残し、彼の遺志を継ぐためだからです。
ペルシャ帝国の庇護を得た彼らは、役目を終えると、自然に消えていきました。
このことは、後に死海文書、ナグハマディ文書として残っています。
敵であるローマ帝国を、血や暴力でなく 「愛」によって屈服させ
完全に作り変えました。それ以降、彼は、神の子と呼ばれました。
しかし彼の死は、小さな石の投げかけか、とも思われました。しかし、その小波は
大きなうねりとなり、全ヨーロッパ、大航海時代においては全世界に広がり、
ヘブライ文明、ローマ文明、そして世界全体を飲み込んだのです。
彼を密告し、架刑にかけた、裏切りのパウロは、彼の死後、真実を知り
信仰に目覚め、人生を慈愛に満ちたそのイエオーシュアとその隣人に
人生をその生命を賭け、その人生を逆賊として過酷に閉じました。
しかし彼の遺志はパウロの使徒に引き継がれ、
ユダヤ人で無いものをも引き込み、ついに成就したのです。
現在、大英国で貴族になったギテオンは、彼の信者であり、
表向きはキリスト教徒だと認識されています。
「シオン公女、ギデオン卿からのお手紙を預かっております。
ロンドン到着の直前に渡すようにとのことです。」
(ギテオンが手紙? なぜ、オスマン領内で渡さなかったのかしら)
シオンはペーパーナイフを取り上げるとヘブライ語の手紙を開けた。
(はじめまして王女殿下、いえお久しぶりと言うべきでしょうか。
大英帝国では我々ユダヤ人の扱いはよろしいほうでしたが
ここ最近は暗雲が立ち込めております。
ユダヤ人区画ゲットーに、賊が入り込み手に負えないのです。
国王を動かそうにも、先代の王と違いモーセスハッペンハイムを使い
自由にできると言うわけではありません。わたくしも国王への謁見を
望んでも相手にされない始末。王女殿下は戴冠式にてオスマン帝国の
大帝の名代、直接話せる機会が必ずあるはずでございます。
出自はよろしくないのですが、モーセスの推薦する優秀な若者、
ハイヤーハムシェルバウアーと言う青年を接待役としております。
年頃は殿下の2つ下、15歳でございます。類稀なる才覚を持つもの
我々の運命を殿下に託します。ご無礼を承知でお願い申し上げます。
言い忘れましたが御寝所は、7階でございます。お楽しみください)
「真なる王か・・・。重いわね。」
(シオンは大英帝国のユダヤ人がヨーロッパの虐げられたものたちが
自分をどう見るかは理解していた。
私はもう、公爵家の箱入り娘ではない、自己の宿命を果たさないと。)
コンコン、部屋のドアがノックされる。
手紙を読むためかの英国紳士は部屋から出ていたのだ。
「どうぞ、はいりなさい。」
ふと外を見ると、巨大な船がたくさん並んでいる。
鉄でできた建物からはもうもうと煙が上がっていた。
濃い霧が辺りを包んでいた。そしてそれをしのぐように灯りがあった。
「ここが、大英帝国、世界最大の大帝国。」
シオンは思わず言葉を漏らしていた。
「殿下、これくらいで驚かれては大変ですよ。まもなく到着いたします。」
英国紳士は自身の国家がかつての大帝国オスマンから見ても、
驚愕に値するものだと知り満足げにうなづいていた。
(さあ、気を引き締めて、臆病にならず、そして驕らず。)
「いくわよ」シオンはひとり自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
それほど遠くないところにかもめだろうか、詳しくないためわからないが
数十羽が飛び回っていた。
周囲360度 大海原だ。
海岸線を見ながら進むのではなく、360度海が見える状態で
今自分がいる場所を知るには、緯度と経度が必要だ。
緯度は北極星などを見ることによって簡単に分かったが
経度は正確な時計が無くては測ることができなかった。
そのため、時計の発明には7つの海を支配する大英帝国の
国王の身代金と同額の懸賞金が掛けられていた。
オスマン帝国領から出る時、母は泣きじゃくっていた。
ユダヤ人やイスラム教徒にとって、キリスト教徒はいまだに恐怖の対象だ。
そもそも、イスラムが人間に対して、聖戦(ジハード)と言う言葉を
使うようになった原因は、キリスト教徒が悪魔のような所業、
旧約聖書トーラーで言うところの聖絶へーレムを行ったからだ。
この記憶は永遠に近いときがながれても、人の記憶でなく
集合的記憶、文明として残っていくだろう。
いわゆる十字軍だ。
オスマン帝国からギリシャのアテネ沖あたりまでは、部屋の中で
船酔いに苦しんで、バケツに胃の内容物を戻す毎日だった。
長靴 長靴 長靴 と表現されるのは イタリアだ。
かつて、遠い祖先と英国の騎士が捕らえた船の所属が
イタリアのヴェネチアだ。
やがて、オスマン海賊、オスマン海軍の拠点チュニスを通り過ぎると
船旅にも慣れ、元気が出てきて、甲板を散歩できるまでになった。
遠い祖先、ドナ・グラツィア・ナスィのたどった航路を逆に行くように
アルジェ、セウタとアフリカ大陸北岸を沿っての長旅だ。
どこかの港によって、観光でも出来ればいいのだが、
この船の使命は重いらしい、ロンドンまで無寄港の予定だ。
つまり私の使命も重いと言うことだ。
なぜならこの船の唯一の目的は、私を無事ロンドンまで
運ぶことだからだ。
「お食事の用意が整いました。」
召使の一人が呼びに来る。さすがに毎回、あの英国紳士が来るわけではないようだ。
彼も彼なりに、私の接待以外の副業があるらしい。
船の中で食べたコーシェルでない食事はおいしかった。
かの英国紳士はイスラム教徒とユダヤ教徒は絶対に豚肉を
食べないと思っていたらしい。
その彼に、歴代のスルタンに大酒飲みが多かったと聞かせると。
「それは嘘でしょう。」とまったく信じていなかった。
そもそも高濃度のアルコールは思考能力を低下させ、
人間が嘘をつくために必要な、論理的思考能力を奪ってしまい
泥酔した人は、感情を強く発露させるため便利なものなのだ。
いわゆる、「自白剤」と呼ばれるものはアルコール度の高い
お酒のことだ。
もっとも、私の家族で戒律を平気で破るのは私くらいだろう。
家族は宗教熱心で、適切な処理がなされていないと理由で
肉類を一切食べなかった。
いわゆる菜食主義だ。
私は小遣いで、ケバブなどを食べていた。
オスマン帝国領内にいたときは、さすがに豚肉は食べたことはない。
ちなみに、ヨーロッパを訪ねたイスラム教徒に豚肉を出した
レストランがあったらしいが、客は皿をテーブルにたたきつけると
代金だけ払って、即座に店から出たらしい。憤怒の形相で。
もっとも、お酒はある程度飲んでいた。
なぜなら、ユダヤ教徒にお酒を飲んではいけないと言う決まりは無い。
17歳は立派な成人女性だ。オスマンはミレット制という高度な
各民族の自治を認めており、自由だ。
そもそも、民族や国家といった概念を持ち込んだのは
ヨーロッパ列強が大航海時代以降、植民地支配をしやすくするため
分断統治や間接統治を行い、直接自分たちに矛が向かないようにするためだ。
おかげで各地で戦争や虐殺、紛争が大発生し、世界中が不幸のどん底になった。
植民地支配は、現在進行形で、私のいるこの時代も存在している問題だ。
船は順調に進み、リスボン沖を遠回りしながら進み、ビスケー湾で
ちょっとした嵐に見舞われた。暴れ馬に乗っているようだったが、
英国紳士は平然としていた。彼は若い頃、船乗りだったことがあるらしい。
私は久しぶりに胃の内容物を戻していた。
プリマス沖を進み、ドーバーまでもう少しと言うところだ。
「もう一杯いただけるかしら。」
空になったグラスを見せると、すぐに並々と赤ワインが注がれた。
上下に見事な衣装をまとった英国紳士はヘブライ語で話しながら
食事中に楽しませてくれる。
彼はこの船の給仕などではなく、れっきとした英国の貴族だ。
英国国教を守護するホイッグ党の盟主であるラッセル家の血縁、
ギャンブル好きな先代には相当手を焼かされたらしい。
「ワインやブランデーではなく、イングランドでしょう。
スコッチウイスキーとかありませんか。」
オードブルの次に 海老のサラダ、フォアグラの乗ったレアステーキ
ヒラメのムニエル それとキャビアだ。そしてデザートと
紅茶。オスマンはひたすらコーヒーだった。
でも、ここに水タバコが無いのはさびしい。
英国紳士は海老やキャビアには苦笑いをしながら奉仕していた。
向こうに着いたら、本場の「ハギス」と「キドニーパイ」を食べようと思っている。
ハギスにはウイスキーらしい。
もしかすると、戒律にうるさい他の家族だと、向こうの食事の席で
侮辱行為をするかもしれないから、私が選ばれたの?と思ってしまう。
スルタンがお酒を飲んでいたのは栄えていた時期で、
イスラムが落ち目になり、欧州列強から脅威と見做されなくなって
久しい。落ち目になるほど、宮廷はイスラムの教えに厳格になっていった。
シオンはオスマン帝国内では見せない無邪気な笑顔を見せながら、
心の底から可笑しそうに笑った。自由だ。とても自由だ。
このまま、ずっと旅をしていたかった。
オスマン帝国には息苦しさと焦りがあった。
大航海時代を大英帝国が征し、地中海はそれほど重要ではなくなった。
金銀や香辛料、奴隷が海路で直接運ばれ、衰退の一途をたどる。
イスラムの盟主は、ヨーロッパ列強のどの国よりも弱いだろう。
領土も失った。シオンもその空気に呑まれ、日々家と空気に
束縛された生活を送っていた。家から重要視されないとはいえ
自由などない、家の外にでられるのもまれ、出ても監視付だ。
この時代に、遠く離れた地に一人旅できるなど、至上の喜びだ。
ミルク入りのパンはおいしい、ポークソテーもだ。
そして、極めつけはこの特注船だ。大型のガレオン船を改装したもので
調度品もとても立派なものだ。
オスマンの公爵家といえど
このような船を独占など贅沢にもほどがある。
絵画等は潮風で痛むため、まったく飾られていないが
厚い高価なガラスの張られた客室から見る大海原は壮大だ。
大英帝国ではガラスでさえ信じられない量を作るらしい。
シオン・ナスィは公爵家の生まれとはいえ、次女、家督を継ぐ
可能性はほぼない。
1つ上の姉がいて彼女が跡継ぎだ。
弟もいるのだが、あとを継ぐのは姉だろう。
変に思うかもしれないが、ユダヤ人の父親であっても母親が不倫していたら
その子供は異教徒だ。だけど、ユダヤ人の母親から生まれれば、
少なくとも半分はユダヤ人だ。
なのでユダヤ人は母親を重視する。
そもそも、大英帝国まで無寄港での1ヶ月の船旅だ。
ある意味、死んだとしてもそれほど困らないからこそ選ばれたのだろう。
オスマン帝国も人材がいないわけではない。しかしオスマン帝国の
スルタンの名代として大英帝国の新国王に親書を届ける使節の
代表を任せられるような存在はそうはいない。
大英帝国のハッペンハイム家が「ユダヤ人貴族」と指名してきたのだ。
相手が国王となると、大公か公の血族でなくては釣り合いが取れない。
大航海時代のテューダー朝の時代ならともかく、いまや7つの海を支配する
世界一の巨大帝国だ。
しかも、英国国教会の聖地ウエストミンスターに入るのだ。
それならばと、かつては大公位についた事もあるナスィ家が
選ばれるのは当然だ。
表向きは、宮廷ユダヤ人ハッペンハイム家の当主からの招聘だが、
影で実権を握っているのは、かつて英国にわたり確固たる地位と財産を築いた
ギテオン家である。
先代のサンプソン・ギデオンはイスラム圏から大英帝国に
移住し、スティアート王家の正統を主張する、
僭王ボニープリンスチャーリーが
首都ロンドンに迫る中、逃げるために投売りされる財産を
ただ同然で買取り、南海バブルで英国有数の大富豪になった。
ナスィ家とギテオン家は2千年以上の付き合いのある家で、
失われた約束のイスラエル王国建国以前にさかのぼる。
「ゆだやびと」 その起源はすごく古い。カビが生えるくらいだ。
シオンも子供のころから幾度となく聞かされた。そういう話だ。
かつて、エルサレム近郊は、バビロニアそしてニネベという2大帝国があり、
ナイルの流域も広大でチグリスとユーフラテスのペルシア文明との間で
働く人で活気に満ちていた。
そのころ、砂漠をさまよう遊牧民がおり、現在は2支族しか残っていないが
かつては選ばれし12支族と呼ばれ、ナスィは酋長、ギテオンは族長であった。
シオン・ナスィのはるかなる祖先である。元々は、12支族で順番に酋長を決め
ナスィと呼んでいたが、盗賊に襲われたり、奴隷にされたり
災厄が降りかかる中、12支族を結束させ権力を集中させ、統率するために
ある一族は、ナスィと呼ばれるようになり。本来の家名を失った。
そして、力を得た彼らは、ヘルモン山からモアブの死海へ流れ下るせせらぎを求め
荒地を開墾し、その地を、それなりに豊かな肥沃な大地とした。
ナスィは、ヤハウェであり、ツロより至りて、サマリア、ヘブロン
エルサレムを統治する唯一神と定められていました。
商業交易ルートの要衝を走る彼らの領土は、たびたびエジプトやバビロニアによって
侵略される事も多く、その独立は困難を極めました。
古代の大帝国ペルシャ帝国の後ろ盾を得る事ができ、その庇護の下
その土地をナスィが与えられ、ようやく平和が訪れた。
無論、ペルシャ帝国も、外交上地理上、バビロニアやエジプトに対する
緩衝地域、防壁の捨て駒としての効果を期待していたのかもしれません。
しかし、ペルシャ帝国が衰退し、マケドニアの憎きアレクサンドロス大王に
滅亡させられると、ギリシャ・ローマ帝国はイスラエルの存在を消し去り
ゆだやびとはローマ帝国の属州となり、
彼らのギリシャローマ文明に取り込まれつつありました。
サンヘドリンというローマの施政者の生み出した偽の王族の一派と
ペルシャ帝国に亡命した王族の一派に分かれていきました。
そして、ユダヤ人を苦しめる最大の要因ともなった、イエオーシュアです。
ローマを支配する偽の王サンヘドリンも安泰ではありませんでした。
ローマの施政者と癒着し、腐敗し、民衆は苦しみました。
しかし、その支配者は、一人の若者に脅かされます。
彼は、サンヘドリンの悪政に声をあげ、12人の仲間とともに人々を救い
励まし、諦めないことを教えました。今は、神の御言葉を伝え、真の世界の
あり方を述べた、クムラン教団の盟主であり、ペルシャに逃れた真の王家
ナスィを取り戻そうとしました。しかし彼は、12使徒ではなく
ある裏切り者の手により、過酷な拷問の末、その命を散らせます。
彼の信奉者の中核12人と信徒は、卑劣なローマ帝国と悪魔のようなサンヘドリン
と言う偽のヤハウェ、偽の王に痛めつけられ、犯され、殺され、そして逃げました。
それは屈したためではありません。
彼らの役目は、救済者であり革命家の
イエオーシュアの言葉を残し、彼の遺志を継ぐためだからです。
ペルシャ帝国の庇護を得た彼らは、役目を終えると、自然に消えていきました。
このことは、後に死海文書、ナグハマディ文書として残っています。
敵であるローマ帝国を、血や暴力でなく 「愛」によって屈服させ
完全に作り変えました。それ以降、彼は、神の子と呼ばれました。
しかし彼の死は、小さな石の投げかけか、とも思われました。しかし、その小波は
大きなうねりとなり、全ヨーロッパ、大航海時代においては全世界に広がり、
ヘブライ文明、ローマ文明、そして世界全体を飲み込んだのです。
彼を密告し、架刑にかけた、裏切りのパウロは、彼の死後、真実を知り
信仰に目覚め、人生を慈愛に満ちたそのイエオーシュアとその隣人に
人生をその生命を賭け、その人生を逆賊として過酷に閉じました。
しかし彼の遺志はパウロの使徒に引き継がれ、
ユダヤ人で無いものをも引き込み、ついに成就したのです。
現在、大英国で貴族になったギテオンは、彼の信者であり、
表向きはキリスト教徒だと認識されています。
「シオン公女、ギデオン卿からのお手紙を預かっております。
ロンドン到着の直前に渡すようにとのことです。」
(ギテオンが手紙? なぜ、オスマン領内で渡さなかったのかしら)
シオンはペーパーナイフを取り上げるとヘブライ語の手紙を開けた。
(はじめまして王女殿下、いえお久しぶりと言うべきでしょうか。
大英帝国では我々ユダヤ人の扱いはよろしいほうでしたが
ここ最近は暗雲が立ち込めております。
ユダヤ人区画ゲットーに、賊が入り込み手に負えないのです。
国王を動かそうにも、先代の王と違いモーセスハッペンハイムを使い
自由にできると言うわけではありません。わたくしも国王への謁見を
望んでも相手にされない始末。王女殿下は戴冠式にてオスマン帝国の
大帝の名代、直接話せる機会が必ずあるはずでございます。
出自はよろしくないのですが、モーセスの推薦する優秀な若者、
ハイヤーハムシェルバウアーと言う青年を接待役としております。
年頃は殿下の2つ下、15歳でございます。類稀なる才覚を持つもの
我々の運命を殿下に託します。ご無礼を承知でお願い申し上げます。
言い忘れましたが御寝所は、7階でございます。お楽しみください)
「真なる王か・・・。重いわね。」
(シオンは大英帝国のユダヤ人がヨーロッパの虐げられたものたちが
自分をどう見るかは理解していた。
私はもう、公爵家の箱入り娘ではない、自己の宿命を果たさないと。)
コンコン、部屋のドアがノックされる。
手紙を読むためかの英国紳士は部屋から出ていたのだ。
「どうぞ、はいりなさい。」
ふと外を見ると、巨大な船がたくさん並んでいる。
鉄でできた建物からはもうもうと煙が上がっていた。
濃い霧が辺りを包んでいた。そしてそれをしのぐように灯りがあった。
「ここが、大英帝国、世界最大の大帝国。」
シオンは思わず言葉を漏らしていた。
「殿下、これくらいで驚かれては大変ですよ。まもなく到着いたします。」
英国紳士は自身の国家がかつての大帝国オスマンから見ても、
驚愕に値するものだと知り満足げにうなづいていた。
(さあ、気を引き締めて、臆病にならず、そして驕らず。)
「いくわよ」シオンはひとり自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
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