BLACK DiVA

宵衣子

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21.残酷な笑み

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静は武術の達人だった。
自国で武術で静に勝てるものはいないと言われるくらい強かった。
それとアンノウンジャマーを駆使して戦うので例えアンノウンが相手でも引けを取らない。
そんな男と玲音は武術で真っ向から勝負しようというのだ。
先に駆け出したのは玲音だった。静に向かって拳を突き出す。静はその拳を避けると、拳でフェイントをかけ蹴りを繰り出す。玲音も蹴りで応戦した。2人の足がクロスに重なる。

「俺の蹴りを受けて立っていられたのはお前が初めてだよ」

静はやはり楽しそうにしている。

「(1発1発が重い…)」

玲音は表情を変えずに静を見据えている。
それからまた2人の攻防戦が始まった。
目にも止まらぬ速さで戦っている。

「俺のスピードについてこれるなんて、流石だな!!」

「………」

しかし更に静の動きが速くなり、やや玲音が苦戦を強いられる。

「っつ!」

静のトングが玲音の左横腹にあたる。
玲音も負けじと静のお腹に拳をヒットさせた。

「うっつ!!」

2人は間合いをとる。

「(避けるどころか踏み込んでくるとは)」

静は久しぶりに出会った強者に楽しげに笑った。

「いってー」

玲音は横腹をおさえる。
流石、達人級の武術の使い手、威力が半端ない。

「(肋骨いってそう…)」

と玲音は思うのだった。
そんな時、戦いを終えていた伊咲凪なが電磁フィールの解除に成功した。これを機に聖女を乗せた車が動き出そうとする。

「お!ナイス、伊咲凪!!」

にっと玲音が笑いながら声を上げる。
静が悔しそうに舌打ちをした。

「思ったより早く解かれちまったな…」

しかし、車が動き出そうとした瞬間、頭上から大輝が炎を纏った拳で車に突っ込んできた。
車は殴られた所がへこんでいる。

「真っ二つとはいかないか」

すたっと瞳術使いの男、誠司セイジの近くに着地する。
それから誠司の拘束を解いた。誠司は大輝に拘束され、口を塞がれて抱き抱えられてる銀髪三つ編みの少女を怪訝そうな顔で見る。

「それは?」

「うーん、まだ確証はないんですけど、言霊を操ってるっぽいんで、とりあえず連れてきました」

「なるほど…いい仕事をする。もし当たりだったら、報酬を上げてもらえるかもな」

誠司は口元に笑みを浮かべたと同時に2人は物凄い殺気に息を呑む。
身体が強ばる。自分に向けられた殺気ではないと分かっている琴子ですら震えるほどに…。
その殺気の先には玲音がいた。

「俺の大事な部下だ。汚い手で触れるな」

玲音が普段からは想像もできないような低い声で言い放つ。そのスカイブルーとゴールドの綺麗なオッドアイの瞳は怒りに揺れていた。

「はっ!!こりゃいい!!誠司さん、その女よろしく頼みます」

大輝はその殺気に一瞬怯んだものの、すぐにいつもの調子で不敵に笑うと琴子を誠司の方に放り投げた。

「なぁ!黒の人!!」

大輝は静の事を『黒の人』と呼ぶ。

「白金の停滞者は俺に相手させてくれ」

そう言うやいなや大輝は静の返事も聞かずに玲音に向かっていった。

「やれやれ…」

静は溜息をつくと聖女の乗る車に目を向ける。

「聖女を引っ張り出すか」

静は聖女の乗る車に向かう。

「させるか」

そこに伊咲凪が立ちはだかるが1歩踏み出そうとする彼の足元に銃弾が飛んでくる。

「??」

「遅かったな、ミスカ」

静の前にはミスカと呼ばれた茶髪にブルーの瞳の少年が伊咲凪を睨んでいた。そう少年だ。歳はまだ10代半ば~後半くらいだろう。身体付きもまだ成長仕切ってない。

「静さん、こいつは俺達に任せて。」

「頼んだ」

静は伊咲凪がミスカに足止めされているうちに車へと向かうのだった。
一方、琴子は拘束されたまま床に倒れ込み誠司に顎を上げられ、目線を合わせられている。

「(何なのっ?)」

「これから幾つか質問するから、よろしくな。」

「(口塞がれていたら答えられないけどねっ!!)」

と思いながらも琴子は誠司を睨みつける。
誠司の瞳が白目が黒に黄色の瞳は鋭く光る。

「(何っ?!気味の悪い瞳っ!!)」

不気味なその瞳に琴子は心の中で震えた。

「お前はBLACKDiVAか?」

「(違います!何回言わせんのかな!?)」

「お前の能力は何だ?」

「(教えるわけないじゃん)」

「言霊を使うんだよな?」

「(いいえ。)」

「ほう…具現化するのが得意なのか」

琴子は能力をあてられて動揺する。心の中で質問に答えているが、能力を聞かれた時点で自分の能力の事が連想させられてしまう。

「(心を読まれてる?)」

「確かに能力はBLACKDiVAによく見られる力のようだが…」

容姿がBLACKDiVAと合わない。
漆黒の髪に透き通るような白い肌…それがBLACKDiVAの容姿だ。
誠司はカマをかけてみることにした。

「お前のその姿は仮染めの姿だな?」

「っつ!!!(ダメだ!この人の話を聞いては…っダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメ)」

考えないようにしてもやはり心の奥底では答えを想像してしまう。そんな琴子を見て誠司はニヤリと笑った。

「ハッ、これは当たりだな」

そういうや否や、誠司は琴子の頭に結んでいる赤いリボンに手をかけようとする。その瞬間、聖女の乗る車から漆黒の長い髪に透き通るような白い肌をした女の人が降りてきて真っ直ぐに琴子に向かって歩いてきた。その深紅の瞳は愉しげに揺れている。

「《止まって》」

彼女の透き通るような綺麗な声が耳に入る。
リボンを外されると思っていた琴子だったが誠司の動きが止まったため外されずに済んだ。
そうして漆黒の長い髪の女の人は深紅の瞳を細め、琴子を見下ろす。助かったと安堵したのも束の間、なぜか琴子はゾクリと悪寒を感じた。

「あぁ…私の…同族よ……」

女の人は琴子の事を抱き締める。

「っつ!!」

それから離れると琴子を見つめ、悲しそうに笑う。

「でも可哀想に…苦しい事しかないこんな世界では辛いでしょう?だから…私が貴女を殺してあげる」

それはそれは残酷な笑みだった…。
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